「英国人は歯が悪い」「オーストラリアは危険生物だらけ」は本当? 各国のステレオタイプを調べてみた

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(最終更新日:2026年9月22日)

「イギリス人は歯が悪い」「オーストラリアは危険な生き物だらけ」「ドイツ人は時間に正確」。

国や国民についての固定的なイメージ、いわゆる「ステレオタイプ」には、あまりに定番になりすぎて、本当なのか考える機会さえ少なくなったものがあります。

2026年4月、世界各国の人に質問するRedditコミュニティ「r/AskTheWorld」で、「Redditで自分の国について言われているステレオタイプで、実際には間違っているものは?」という質問が投稿されました。

What are some stereotypes about your country on Reddit that are actually wrong?
by u/ryoryo333333 in AskTheWorld

コメント欄を追ってみると、完全な作り話というより、実際にある特徴の一部分が大きく広がったような例がいくつも出てきます。

では、現地の人が「違う」と感じている国のイメージは、資料と照らしてみるとどこまで本当なのでしょうか。

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「イギリス人は歯が悪い」――健康と見た目は同じではない

最初のスレッドでは、イギリスから参加した人が「食事がまずい」「歯が悪い」といった自国への定番イメージを挙げていました。

そこで、英国での生活について質問するRedditコミュニティ「r/AskUK」で、「私たちの歯は本当に他国と比べてひどいの?」という、そのものずばりのスレッドも見てみました。

コメントを読んでいると、「歯が健康か」と「歯がきれいに見えるか」を分けて考える人が目立ちます。

コメントの一部を抜粋すると、

「健康」なのか「見た目が魅力的」なのかによると思う。

— u/mdzmdz

別の参加者も、アメリカでは矯正やホワイトニングなどで外見を整えた歯が多く、「白く、きれいに並んでいない歯=悪い歯」と受け取られているのではないか、とコメントしていました。

では、比較相手としてよく挙がる米国との研究ではどうでしょうか。

2015年に医学誌「BMJ」に掲載された研究では、イングランド(英国を構成する地域の一つ)の2009年成人歯科保健調査と、米国の2005~2008年の国民健康栄養調査を使い、25歳以上の成人の歯や口の健康状態を比較しています。

年齢構成の違いを調整した値では、歯が残っている成人の「失った歯」の平均本数は、イングランドが6.97本、米国が7.31本で、米国のほうが多いという結果でした。

一方、歯や口の問題が日常生活に影響していると答えた割合はイングランドのほうが高く、自分の歯や口の健康状態を「良くない」と評価した割合には、統計的に明確な差がありませんでした。

研究者も、「米国人の口腔状態がイングランド人より良いとはいえない」と結論づけています。これは2015年に発表された、当時のイングランドと米国の成人を比較した研究であり、現在の英国全体について順位を付けたものではありません。

また、この研究で比較しているのは失った歯や自己評価、日常生活への影響などです。歯の白さや歯並びの美しさを比べた調査ではありません。

少なくともこの話では、「歯が健康か」と「見た目が整っているか」を分けて考える必要がありそうです。

オーストラリアは、本当に危険な動物だらけ?

オーストラリアについては、最初のスレッドでこんな回答がありました。

「何もかもがあなたを殺そうとしている」というお決まりのネタ。オーストラリア人が日常生活で出会いそうな野生動物の中で、一番攻撃的なのは繁殖期のマグパイくらいだよ。

— u/AnonymousEngineer_

ここでいうマグパイは、オーストラリアの住宅地などでも見られる白黒の鳥「カササギフエガラス」です。

毒ヘビ、クモ、ワニ、サメ。

危険な生き物が多い国としてオーストラリアが語られるのは珍しくありません。

そこで追加で確認したのが、2026年3月にオーストラリア人向けコミュニティ「r/AskAnAustralian」へ投稿された「危険な動物はオーストラリア中にいるの? それとも田舎や国立公園だけ?」という質問です。

ブラジルから留学予定の投稿者は、友人から「クモだらけ」「カンガルーがそこら中にいる」などと言われたそうです。

ところが、コメントを読むと体験談にはかなり差があります。

西オーストラリア州の田舎で育った人は、夏には通学途中で毎日のようにヘビを見ていた一方、都市へ引っ越してからは大人になって一度も見なくなったと書いています。反対に、都市近郊でもヘビを見かけるという返信もありました。

都市暮らしの別の参加者のコメントから一部を抜粋すると、

都市に住んでいて、基本的に家で過ごしているけど、野生の危険なクモやヘビを見たことはないよ。

— u/Jazstar

もちろん、「見ない人もいる」から危険な動物がいない、ということにはなりません。

オーストラリア政府の保健福祉研究所(AIHW)がまとめた2021~22年のデータでは、海洋動物を除く野生動物との接触による負傷で4,980件の入院がありました。そのうち2,394件が爬虫類に関係し、539件が毒ヘビまたは毒トカゲ、昆虫・節足動物によるものが1,504件で、そのうち474件がクモでした。

また、野生動物による負傷の入院率は、都市部から離れた地域ほど高く、特に非常に遠隔の地域で高くなっています。

つまり、危険な動物そのものは確かにいます。

ただし、「危険な生き物が存在する」と「オーストラリアで暮らしていれば日常的に危険な動物と遭遇する」は別の話です。

今回のスレッドでも、住んでいる地域や生活環境によって体験は大きく違っていました。オーストラリア全土を、誰もが毎日のように危険な動物と出くわす場所だと考えると、実際とはかなり違ってくるようです。

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「時間に正確なドイツ人」と遅れるドイツ鉄道

ドイツから参加した人のコメント冒頭を抜粋すると、

時間厳守。

— u/Beautiful_Yellow_682(ドイツ)

この後には、ドイツの公共交通、とりわけ鉄道の遅れへの不満が続きます。

この点については、ドイツの国有鉄道会社ドイツ鉄道(DB)の最新データを見ると事情がよく分かります。

2026年上半期、DBの長距離列車の「運行上の定時率」は58.7%でした。前年同期の63.4%から低下しています。

この指標は、途中駅や終着駅への実際の到着時刻と予定時刻を比べ、各到着を基に集計したものです。なおDBでは、旅客列車は予定時刻からの遅れが6分未満なら「定時」として扱います。

DBは2026年上半期の遅延について、老朽化して過密になった設備、大規模な工事、高い列車密度などを主な要因として挙げています。年初の厳しい寒波と6月の熱波も運行に影響しました。

もちろん、鉄道会社の数字を見て「ドイツ人は時間に正確ではない」と結論づけることはできません。

人々の時間感覚と、鉄道インフラの運行状況は別の話だからです。

むしろ今回のコメントは、「ドイツ=時間厳守」というイメージに対して、ドイツで暮らす参加者が鉄道の実情を持ち出した例として見るのがよさそうです。

サウジアラビアは「どこまでも砂漠」ではない

サウジアラビアから参加した人は、「平らで何もない砂漠ばかり」という自国へのイメージを挙げています。

自然の写真を見せると、「サウジアラビアは全部砂漠だと思っていた」と驚かれることがあるそうです。

砂漠のイメージそのものが間違いというわけではありません。

サウジアラビアには、南東部にルブアルハリ砂漠があります。「エンプティ・クォーター」とも呼ばれる、砂に覆われた広大な砂砂漠です。

ただ、国土全体を見ると景色はもっと複雑です。

サウジアラビアの地理や歴史などを扱うオンライン百科事典「Saudipedia」によると、西部には紅海沿岸の平野があり、その東側にはヒジャーズ山脈やアシール山脈が延びています。3,000メートルを超える峰もあり、そのほか高原、谷、東部の海岸平野など、さまざまな地形があります。

気候にも地域差があります。

サウジアラビアの国立気象センターによると、国土の大部分は乾燥した砂漠性の気候ですが、南西部のアシール地方では年間平均降水量が約300ミリあり、夏にも降雨があります。沿岸部と内陸部でも気候には違いがあります。

つまり「サウジアラビアには広大な砂漠がある」は正しい。

しかし、その有名な風景を国土全体へ広げて「どこへ行っても平らな砂漠」と考えると、実際の地理とはずれてきます。

ここでは、存在しない特徴が作られたというより、実在する印象的な風景が国全体のイメージへ広がった例と見ることができそうです。

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カナダ人はみんな「eh」と言う?

最後は、カナダ人の話し方についての定番イメージです。

カナダ英語の「eh(エイ)」は、相手に確認や同意を求めるときに使われ、日本語の「〜だよね?」に近い働きをすることがある表現です。ただし、実際の意味や使い方は文脈によって変わります。

「カナダ人は会話の最後にehを付ける」というイメージは、英語圏の映画やテレビでもおなじみです。

ところが元スレッドでは、カナダ人同士でいきなり意見が割れました。

カナダ人が「eh」って言うのを聞いたことがない。

— u/Imaginary-Ladder-465(カナダ)

すると別のカナダ人は、

カナダ人が「eh」って言うのはいつも聞くよ。私もいつも言う。

— u/girlrespecter(カナダ)

と返しています。

どちらかが間違っているのでしょうか。

言語学の研究を見ると、少なくとも「カナダならどこでも同じように使われてきた」とは言えません。

2020年にカナダ言語学会の学術誌に掲載された研究では、トロントを含むオンタリオ州南部と、カナダ西岸にあるバンクーバー島南部の英語資料を比較しています。

現代のトロント英語では、「eh」は同じように相手へ確認を求めるほかの表現と比べて使用頻度が低いことが、先行研究で報告されていました。

一方、この研究では、過去のオンタリオ州南部では「eh」の割合が現在より高かったことが分かりました。また、過去の資料ではオンタリオ州南部のほうがバンクーバー島南部より使用頻度が高く、地域差も確認されています。

つまり、「eh」はカナダと無関係な作り話ではありません。

実際に長くカナダ英語を象徴する表現として認識されてきました。ただし、「カナダ人なら誰でも、いつでもehと言う」となると話は別です。

今回引用した二人がなぜ違う体験をしているのかを、この研究から直接説明することはできません。ただ、時代や地域によって使用頻度が異なるという研究結果を見ると、一口に「カナダ人はehと言う」とまとめきれないことは分かります。

ステレオタイプは「完全な嘘」とは限らない

今回確認した5つを見ていると、国のステレオタイプは「本当か、嘘か」の二択では説明しにくいものが多くありました。

サウジアラビアには本当に巨大な砂漠があり、オーストラリアには本当に危険な動物がいます。カナダ英語で「eh」が使われることも事実です。

ただ、その一部分を「その国ではどこでもそう」「その国の人はみんなそう」と広げると、実際の姿とのずれが大きくなります。

ネットで何度も目にする国のイメージほど、現地の声や資料を少し掘り下げてみると、一言では収まらない部分が見えてくるようです。

参考情報と翻訳元

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