「またなろう系か」と言われるのに、なぜ見られ続ける? 海外の声を追ってみた

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(最終更新日:2026年9月17日)

「また異世界か」「またなろう系か」。

異世界転生、チート能力、追放、悪役令嬢、スローライフなど、アニメやWeb小説の話題を追っていると、こうした設定をひとまとめにして「また同じような作品」と見る声は珍しくありません。

ところが不思議なのは、これほど「飽きた」と言われながら、作品がなくなる気配もあまりないことです。

実際には、どんな人が不満を感じ、どんな人がそれでも見続けているのでしょうか。

広告下に海外の反応が続いています
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「なろう系」という言葉自体に、少し複雑なイメージがある

「なろう系」は厳密な公式ジャンル名ではありません。

「小説家になろう」の運営会社も2019年のインタビューで、誰かが命名したのではなく、自然発生的につけられた呼称だと説明しています。

現在では、「小説家になろう」出身ではない作品まで、異世界転生、追放、チート能力などの特徴から、ざっくり「なろう系」と呼ばれることがあります。

そのため、この言葉には作品の出自だけでなく、「あのタイプの作品」というイメージまで含まれているようです。

日本語圏でも「もう飽きた」という声は実際に見つかる

ネット全体を代表する世論調査があるわけではないため、「日本人の多くが嫌っている」とまでは言えません。

ただ、2025~2026年の創作コミュニティでも、テンプレへの食傷感を表明する企画や投稿は実際に見つかります。

2025年にはカクヨムで「なろう系にはもう飽きた!アンチテンプレ作品来たれ!」というユーザー主催の自主企画が開催され、138作品が参加しました。

2026年9月にも別のユーザー主催企画で、「最強」「ハーレム」「成り上がり」「ざまぁ」「悪役令嬢」などについて、主催者自身が「ぶっちゃけ飽きています」と書いています。

「小説家になろう」でも2026年8月に、「また、なろう系か」という感覚そのものを題材にしたユーザーのエッセイが投稿されました。

いずれも個人による投稿ですが、「また同じような作品か」という食傷感が、現在の創作コミュニティでも表明されている例として見ることはできます。

英語圏のRedditでは「isekai slop」という言い方も

英語圏のReddit、特に異世界作品を扱うコミュニティでは、「isekai slop」という言葉が繰り返し出てきます。

ここでの「slop」は、質が低い、粗製濫造だといったニュアンスで作品をけなす言い方です。

2026年1月のr/Isekaiでは、新作のタイトルとイラストを見ただけで「Generic Slop #1,336,448」だと分かる、というジョーク投稿がありました。

上位コメントでも、「どうせ見るのだが、数週間後には主人公の名前も、どの作品の何話だったかも思い出せなくなる」と、自虐的に語る人がいました。

量産型だと分かっていて、それでも見るという人までいるわけです。

MyAnimeListの海外ユーザー調査では、異世界は「好きなテーマ」1位だった

ネット上の批判だけを見ていると、「海外では異世界もの自体に飽きているのでは」とも思えます。

ところが、実際の海外ユーザー向けアンケートを見ると少し違います。

2025年3月に開催されたAnimeJapanのビジネスセミナーでは、世界最大級のアニメ・マンガコミュニティ「MyAnimeList」の代表が、海外ユーザーの異世界作品に関するデータを公表しました。

当時のMyAnimeListには約1950万人の登録ユーザーがおり、その99%が海外ユーザーでした。利用者は男性が約7割で、34歳未満が約9割と、若いアニメファンが多いサービスです。

MyAnimeListが海外ユーザーを対象に行った独自アンケートでは、「異世界アニメを知っている」と回答した人がおよそ90%に達しました。

さらに「好きなテーマ」を尋ねた結果、アニメでは「異世界」が1位でした。

そして、ここからが今回の記事では特に興味深いところです。

「今後、異世界を見続けたい/読み続けたいと思いますか?」という質問に対して、半数以上が「はい」と回答しています。

つまり、少なくともMyAnimeListの調査対象者では、異世界というテーマそのものへの需要がなくなっているわけではありません。

でも「同じ異世界をもっと見たい」という結果でもなかった

さらに面白いのは、同じアンケートで「今後の異世界コンテンツに何を期待するか」も尋ねていることです。

そこで挙げられたのが、

「よくある異世界設定からの脱却」

でした。

現実社会にもある問題や心理描写を取り入れた「現実的な社会要素」のほか、政治・経済・軍事などの要素を求める声も多かったと報告されています。

これは、Redditで見てきた反応ともよく似ています。

「異世界だから嫌だ」というより、「また同じ設定なのか」「異世界なのだから、もっと違うこともできるのでは」という不満です。

そして同時に、「それでも異世界は見たい」という人もいる。

少なくともMyAnimeListの調査では、この二つは矛盾していませんでした。

ただし、このアンケートについて、公開されているセミナーレポートでは回答者数や抽出方法などの詳しい調査設計までは確認できません。

そのため、「海外のアニメファン全体の半数以上が異世界を見続けたい」と一般化することはできません。

あくまで、海外ユーザーの多いMyAnimeListが実施した独自調査で、そのような結果が報告されたという位置づけです。

「slopなのは分かってる。でも楽しい」

Redditを見ると、さらに一歩進んだ反応もあります。

2026年9月にはr/Isekaiで、

「基本的な異世界アニメを教えてほしい。slopなのは分かってるけど、見るのは楽しい」

という推薦依頼が投稿されました。

つまり、「量産型と言われるような作品が見たい」と、最初から分かったうえで探している人もいます。

これは「異世界作品への批判が実は存在しない」という話ではありません。

批判されている特徴を理解したうえで、「そういうものとして楽しむ」人もいるということです。

一方、2026年3月には「Isekaiへのヘイトにもうウンザリしている人いる?」というスレッドも立ち、何でも“isekai slop”と呼ぶ風潮そのものに疲れたという声も出ています。

では、なぜ「同じような作品」を見るのか

今回提示されたRedditスレッドでは、かなり率直な答えがありました。

驚かされるために見ているんじゃない。リラックスするために見ているんだ。お決まりの展開を楽しんでいる。

— u/DStalebagel

別のスレッドでは、

新しいテレビ番組を見るより、好きな番組の新シーズンを見るのと同じだと思う。

馴染みのあるものは落ち着く。

— u/NeonFraction

という説明もあります。

これは、「似ている」という批判を否定しているわけではありません。むしろ「似ているからこそ見る」という人がいることを示しています。

冒険者ギルドやレベル、スキル、魔王、転生といった約束事をすでに知っていれば、新しい作品でも一から世界の仕組みを覚えなくて済みます。

ただし、これはあくまでRedditユーザーの説明です。

では、実際に「小説家になろう」で読まれている作品には、何か共通する特徴があるのでしょうか。

人気600作品を調べると、「驚き」より「期待」が強く表れていた

2025年に『人工知能学会論文誌』へ掲載された研究では、「小説家になろう」の人気作品と一般作品、計600作品が比較されています。

対象となったのは、グローバルポイント上位300作品と、10万字を超える作品から無作為に抽出した300作品です。

研究では各作品の冒頭10万字を対象に、「喜び」「悲しみ」「期待」「驚き」「怒り」「恐れ」「嫌悪」「信頼」という8種類の感情が、物語の中でどのように変化するのかを分析しました。

すると、人気作品では序盤の「期待」が人気作品側を特徴づける一方、「驚き」と「恐れ」は逆方向に働く傾向が確認されました。

研究者らは考察の中で、ストーリーを理解しやすくするために意外性を避けたり、過度に難解で読者に負荷をかける展開を避けたりすることの重要性についても触れています。

ただし、ここは慎重に見る必要があります。

この研究は異世界作品だけを調べたものではありません。また、読者に「なぜこの作品が好きなのか」と質問した研究でもありません。

したがって、「なろう系は予想通りに進むから人気」「読者は驚きを嫌っている」とまでは言えません。

Redditの「驚かされたいわけではない」「馴染みのあるものは落ち着く」という感覚と、同じことを証明した研究ではない点も重要です。

そのうえで見ると、少なくとも「小説家になろう」の人気作品では、「驚き」よりも「期待」が人気作品を特徴づける感情として強く表れていました。

「テンプレがある」と「テンプレしかない」は違う

一方、異世界ものが好きな人からも批判は出ています。

自分はこういう定番自体は好きだよ。

問題なのは、定番以外のところにほとんど力が入っておらず、物語がその定番だけで始まって終わってしまうことだと思う。

— u/Kaljinx

この違いは大きそうです。

「転生」「チート」「冒険者ギルド」が出てきたこと自体ではなく、それ以外に作品ごとの違いが感じられないとき、「また同じ」という不満が強くなる。

逆に、定番を使っていても、キャラクターや物語に違いがあれば楽しめるという人もいます。

そしてMyAnimeListの調査でも、異世界を今後も見たいという回答がある一方で、「よくある異世界設定からの脱却」が求められていました。

異世界という枠組みそのものと、その中で同じ展開が繰り返されることは、分けて考えた方がよさそうです。

それでも、「なろう」発作品は今もアニメ化され続けている

「小説家になろう」は2026年5月、同サイトに掲載された作品から生まれるアニメが累計200作品を突破すると発表しました。

この数字には過去に投稿されていた作品や、2026年度に放送予定の作品も含まれます。

2026年春だけを見ても、公式ブログでは「小説家になろう発」のアニメとして11作品が紹介されており、『転生したらスライムだった件』『本好きの下剋上』『異世界のんびり農家』『Re:ゼロから始める異世界生活』なども含まれています。

つまり、「ネット上で批判されている」ことと、「作品のアニメ化が続いている」ことは同時に起きています。

「また異世界」と「もっと異世界」は同時に存在する

今回、ネット上の反応だけでなく、実際のユーザー調査やWeb小説研究まで追ってみても、「なろう系は実は嫌われていない」という単純な話にはなりませんでした。

一部のネットコミュニティでは「また同じ」「量産型」「isekai slop」と強く批判されています。

その一方、MyAnimeListの海外ユーザー調査では、異世界は好きなアニメテーマの1位となり、半数以上が今後も異世界を見続けたい、読み続けたいと回答しています。

しかも、同じ調査では「よくある異世界設定からの脱却」も求められていました。

つまり、「異世界をもっと見たい」と「同じ異世界ばかりは見たくない」は、必ずしも矛盾しないようです。

Redditでも、「お決まりだから落ち着く」という人がいれば、「定番は好きだが、それ以外に何もない作品は嫌だ」という人もいます。

「またなろう系か」と感じながら見る人もいれば、それを理由に見ない人もいて、逆に「そこがいい」と探している人もいる。

異世界そのものへの需要と、テンプレへの食傷感が同時に存在していることが、このジャンルが今も作られ、批判され、そして見られ続けている理由を考える一つの手掛かりになりそうです。

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今回の記事でも、現在までアニメ化が続いている「小説家になろう」発作品の一つとして登場した作品です。

本がほとんど存在しない世界で、「本が読みたい」という主人公の目的から物語が広がっていきます。

「なろう系」「異世界もの」と同じ言葉でまとめられる作品でも、何を物語の中心に置くかでかなり違った読み味になることが分かりやすい一作です。

「テンプレがあること」と「テンプレしかないこと」は違う、という今回の記事のテーマから、実際の作品へ進んでみたい人にも合っています。

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