海外「安全な家なのに、なぜ箱の中に?」猫はなぜ段ボール箱が好きなのか調べてみた🐱

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宅配便の段ボール箱を床に置いておくと、気づけば猫が入っている。

せっかく猫用ベッドを用意したのに、なぜか選ばれるのは、その隣に置いてあった空き箱。しかも、体がはみ出しそうな小さな箱ほど気に入っていることまであります。

どうやら、海外でも同じことが気になっていた方がいたようです。

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海外掲示板Redditの猫コミュニティで、初めて猫を飼い始めたという投稿者が、

猫を飼う前から、箱に入っている猫の写真を何百万枚も見てきました。

そして今、うちにも猫がいます。やっぱり箱に入っています。

なぜ?
ーu/schnuck

と質問していました。

コメント欄では、「安心するから」「暖かいから」「段ボールの感触が好き」「段ボールの匂いが好き」など、さまざまな説が登場します。

なかには、

「入れそうなら、とりあえず座る」。それが猫のモットーだよ。
ーu/alaskayonge

という身もふたもない答えも。

ただ、猫と箱の関係は実際には『真面目に研究対象』にもなっているのです。

調べてみると、「猫だから」で終わらせるには、少しもったいない話でした。

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まず分かっているのは、隠れ場所としての効果

最初に多かったのが、こんな回答です。

猫は狭くて囲まれた場所が好きなんだ。体温も調節しやすいし、安全で守られているように感じる。

どう見ても、あなたの猫はその箱をかなり気に入ってるね。
ーu/IGotADodoBrain

すると投稿者は、

でもこの子は健康上の理由で室内飼いなんです。

安全だし、高いご飯も食べています。なぜ箱なんでしょう? 不安になるようなものなんて何もないのに。
ーu/schnuck

と返しています。

人間から見ると、もっともな疑問です。

家の中に天敵はいませんし、ご飯も毎日出てくる。それでも、猫にとって「危険ではない場所」と「身を隠して落ち着ける場所」は、どうやら同じではないようです。

猫専門の獣医師らがまとめたAAFP(米国猫獣医師協会)とISFM(国際猫医学会)の飼育環境ガイドラインでは、猫に必要な環境の一つとして「安全な場所」が挙げられています。

そこでは、猫が身を隠しながら外の様子を確認できる箱も、安全な場所の具体例として紹介されています。

「家が安全なのだから、隠れる必要はない」と猫が考えているわけではなく、隠れられる選択肢そのものが安心につながっているようです。

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本当に、箱があるだけで猫は落ち着くの?

ここは実際に実験されています。

2014年、オランダ・ユトレヒト大学などの研究者が、動物保護施設へ新しく入ってきた猫19匹を、「隠れ箱があるグループ」と「ないグループ」に分けました。

研究者たちは14日間、猫の姿勢や行動からストレス状態を評価する「Cat-Stress-Score」という指標を使って変化を調べています。

すると、箱がある猫たちは3日目と4日目のストレススコアが低く、箱のない猫よりも新しい環境へ早く適応していました。

箱のあるグループは3日ほどで低いストレス状態へ到達しましたが、箱のないグループが同程度まで落ち着いたのは14日目ごろでした。

もちろん、これは自宅でのんびり暮らしている猫ではなく、見知らぬ保護施設へ来たばかりの猫を対象にした研究です。

少なくとも、新しく保護施設へ入った猫では、「箱に隠れられることがストレスの軽減につながる」という考えには、実験による裏付けがあります。

その後、23匹の保護猫を対象にした別の無作為化比較試験でも、隠れ箱を与えられた猫のほうがストレススコアが早く低下しました。

さらに72匹を調べた研究では、隠れ箱を置いた猫は、追加設備のない対照群よりストレスに関連する糞便中のグルココルチコイド代謝物が低く、食べる量も多かったと報告されています。

この研究では性格による違いもあり、「大胆」と分類された猫より「臆病」と分類された猫のほうが、箱の中で過ごす時間が長くなっていました。

箱を置けばすべての猫が同じように喜ぶ、というわけでもなさそうです。

壁がなくても「四角」があれば座る?

箱について調べていくと、さらに妙な話が出てきます。

「床にテープで四角を描くだけでも猫が座る」というものです。

冗談のようですが、これも研究されています。

2021年、動物行動学の学術誌『Applied Animal Behaviour Science』に、市民参加型の研究が掲載されました。

論文の題名を日本語にすると、「入れそうなら、とりあえず座る――飼い猫は『存在しない輪郭』を認識するのか?」といった意味です。

研究者が調べたのは「カニッツァの四角形」と呼ばれる錯視です。

カニッツァの四角形/JimmyToad, Wikimedia Commons, CC BY-SA 4.0

四隅に欠けた円のような図形を置くと、実際には線が引かれていないのに、私たちの目にはその間に四角形の輪郭があるように見えます。

研究にはまず561組の猫と飼い主が登録しました。

ただ、最初の試行まで進んだのは121組で、6日間すべての実験を完了したのは30組でした。

その30匹のうち9匹が、少なくとも一度、図形の中へ四肢を入れて3秒以上座るか立つ行動を見せました。

その9匹による選択は全部で16回。本物の四角が8回、カニッツァ錯視による四角が7回、四角として成立しない対照図形が1回でした。

研究者たちは、猫も人間と同じように、実際には線がない場所に主観的な輪郭を感じ取っている可能性があると考えています。

ただし、大部分の猫はすべての実験を完了していません。

これだけで「猫は四角を見ると必ず座る」とは言えませんし、この研究の目的も「なぜ猫が箱を好きなのか」を直接解明することではありません。

箱のような場所へ入りたがる猫の行動を利用して、猫が図形をどう認識しているのかを調べた実験です。

それでも、「壁さえなくても、境界らしきものへ入る猫がいる」という結果はなかなか不思議です。

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では、「段ボール」であることにも意味はある?

ここまで見てきた研究が主に扱っていたのは、「猫にとって身を隠せる場所がどんな意味を持つのか」という問題です。

これで、猫が箱のような囲まれた場所へ入る理由の一端は見えてきました。

では、もう一つ気になります。

私たちが実際によく目にするのは、猫が宅配便などの段ボール箱に収まっている姿です。

箱であれば何でも同じなのでしょうか。それとも、「段ボール」という素材そのものにも何か理由があるのでしょうか。

この点については、隠れ箱の研究ほど直接的な答えは出ていません。

Redditでは、

段ボール箱には猫が好きなものがいくつもある。

狭くて安全な小さな洞窟みたいで、昼寝にもいい。匂いもつきやすいし、噛んだり引っかいたりもできる。
ーu/fluffofthewild

という説明がありました。

段ボールが猫にとって利用しやすい素材なのかを考える手がかりはあります。

家庭で暮らす成猫を対象にした研究では、段ボール製を含む複数の爪とぎを比較し、素材や形によって利用のされ方に違いがあることが確認されています。

また、40匹の子猫を対象にした別の実験では、S字型の段ボール製爪とぎが、複数の比較条件でほかの爪とぎより好まれました。

ただし、これらは「猫が段ボール箱に入りたがる理由」を調べた研究ではありません。

分かるのは、段ボールが少なくとも爪をとぐ素材として猫に利用されやすい、ということです。

Redditには「段ボールの匂いそのものが猫のストレスを減らす」というコメントもありました。

しかし今回確認した研究では、「段ボールの匂いがストレスを減らす」という直接的な証拠までは確認できませんでした。

2014年の保護猫の研究で調べられているのも、「隠れ箱があるかどうか」であって、段ボールの香りそのものではありません。

そのため、「猫は段ボールの匂いが好きだから箱へ入る」とまでは、今のところ言えなさそうです。

「段ボール箱は暖かいから」という説は?

段ボールについてもう一つ、コメント欄で何度も出てきたのが「暖かいから」という説です。

一般的な段ボールには、波形の中芯を表裏の紙で挟んだ構造があり、その内部には空気を含む空間があります。

包装用に使われる段ボールパネルの熱伝導率を実際に測定した研究もあり、こうした構造が持つ断熱性能について調べられています。

ただし、これはあくまで段ボールという材料の物理的な性質についての研究で、猫の行動を調べたものではありません。

一方、猫の飼育環境についてまとめたStellaらのレビューでは、猫の温熱中性域は30〜38℃とされ、一般的な家庭や飼育施設の室温より高いことが指摘されています。

ここでいう「温熱中性域」とは、猫が体温を保つために余分なエネルギーをあまり使わずに済む温度帯のことで、「猫がもっとも快適だと感じる温度」とまったく同じ意味ではありません。

そのため、段ボール箱の中で体を丸め、周囲を囲まれることが熱を逃がしにくくするという説明には、それなりの理屈があります。

ただし、これも「だから猫は段ボール箱を選んでいる」と実験で確かめられたわけではありません。

今回確認した資料の中には、「猫が暖かさを求めて段ボール箱を選ぶ」ことを直接調べた研究はありませんでした。

しかもスレッドでは、

うちの猫たちは箱にまったく興味を示したことがない。カナダに住んでいて、北部の寒い地域にも住んできたのに。
ーu/ramalady

という飼い主もいました。

段ボール箱に断熱性があることと、それを理由に猫が箱を選んでいることは、分けて考えたほうがよさそうです。

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すべての猫が箱好きとは限らない

ここまで読むと、猫には「箱に入る本能」が備わっているようにも思えてきます。

ところが、Redditのコメント欄を最後まで追うと、何度も現れるのが「うちの猫は箱に興味を示さない」という飼い主です。

うちの猫は箱にまったく興味がない。入れそうな箱が届くたびに置いてみるけど、せいぜい匂いを嗅ぐだけ。
ーu/eastbayted

また別の方は、

うちの保護猫は箱を怖がります……。
ーu/Kaija16

と書いています。

研究でも、すべての猫が同じように箱を利用するわけではありません。

先ほどの72匹の研究では、臆病な猫ほど隠れ箱を長く使う傾向がありました。

AAFPとISFMのガイドラインでも、猫に安全な場所を提供することは重要とされていますが、高い場所を好む猫もいれば、身を隠せる場所を好む猫もいます。

「猫=箱」というイメージが強いと、箱に入らない猫のほうが少し珍しく見えてしまいますが、どうやら猫にもかなり個人差ならぬ「個猫差」があるようです。

結局、猫はなぜ段ボール箱に入るの?

今回調べてみて、いちばんはっきりしていたのは「段ボール」という素材の秘密ではありませんでした。

今回確認した研究で比較的しっかり分かっているのは、猫にとって身を隠せる安全な場所が重要であり、箱のような隠れ場所が、少なくとも保護施設などの環境ではストレスの軽減につながることです。

一方、なぜ段ボール箱がよく選ばれるのかについては、まだ同じようにはっきりした答えは見つかりません。

段ボールが爪とぎに利用されやすいことを示す研究はあります。また、包装用段ボールの断熱性能について調べた研究もあります。

ただ、それらを理由に猫が段ボール箱へ入っていると直接証明されたわけではありません。素材の匂いについても、今回確認した範囲では十分な裏付けを見つけられませんでした。

そして猫によっては、箱ではなく高い棚を選んだり、紙の上に座ったり、そもそも箱を完全に無視したりします。

高価な猫用ベッドの横で、配送に使われた段ボール箱へぎゅうぎゅうに収まっている猫を見ると、人間としては少し複雑です。

それでも少なくとも、私たちが「ただの空き箱」と思っているものが、猫にとっては身を隠せる場所として意外に優秀らしいことは分かってきています。

「入れそうなら、とりあえず座る」。

今回のスレッドでも繰り返し登場した冗談ですが、どうしてそこへ入りたくなるのかは、まだ全部が分かったわけではないようです。

(最終更新日:2026年9月12日)

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