『聖闘士星矢』はなぜ海外で大人気に? ブラジルやフランスでの熱狂とアメリカでの苦戦

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(最終更新日:2026年10月8日)

2025年9月、海外掲示板Redditの『聖闘士星矢』ファンコミュニティ「r/SaintSeiya」に、「みんなはどこの出身?」という質問が投稿されました。

Where is everybody from?
by in SaintSeiya

コメント欄には、ブラジル、メキシコ、フランス、イタリア、ベネズエラなど、さまざまな国からファンが集まり、子どもの頃に『聖闘士星矢』がどれほど人気だったかを語っています。

アルゼンチン出身の投稿主は、特にアメリカ版で行われた大幅な改変を残念がっていました。同じ日本のアニメなのに、なぜ地域によってこれほど受け止められ方が違ったのでしょうか。

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日本でも大ヒットしていた『聖闘士星矢』

『聖闘士星矢』は、車田正美による漫画を原作とする作品です。ギリシャ神話を題材に、星座を守護星とする戦士「聖闘士(セイント)」たちが、聖衣(クロス)と呼ばれる鎧をまとい、女神アテナを守るために戦います。

日本では1986年10月から1989年4月まで、テレビ朝日系列で全114話が放送されました。

東映アニメーションの公式サイトでも、1980年代後半を代表する人気アニメとして紹介されており、キャラクターを再現した玩具「聖闘士聖衣大系」も大ヒットしたと記されています。

さらに、2003年の米国のコミック・玩具などの業界情報サイト「ICv2」には、バンダイがそれまでに『聖闘士星矢』のアクションフィギュアを日本国内で約500万体、世界全体で2500万体以上販売したとの記述があります。

つまり、日本でも大きな成功を収めた作品だったのです。ただ、国や世代によって、その存在感には違いがあるようです。

2024年3月、ブラジルのRedditコミュニティ「r/animebrasil」では、『聖闘士星矢』や『カードキャプターさくら』は日本では一部のファンしか知らない作品なのか、という話題が盛り上がりました。

これに対し、こんな意見が寄せられています。

「ニッチ」というのは、さすがに言いすぎ。

どちらも昔からの定番作品だよ。日本ではブラジルほどの人気がないのは、ずっと早く登場した作品だからだし、ブラジルの『星矢』や『さくら』のファンと同世代の日本人は、子どもの頃からほかにもたくさんのアニメに触れられたからだ。

ブラジルで見られるアニメは、ずっと少なかったんだ。

— u/lordnagaraja

日本で人気がなかったというより、ブラジルでは放送された時期や当時のテレビ事情が、作品への思い入れを特別なものにしたという見方です。

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ブラジルでは玩具の販売数が予想の5倍に

ブラジルで『聖闘士星矢』がテレビ放送を開始したのは、1994年9月1日。現地では「Os Cavaleiros do Zodíaco(十二星座の騎士たち)」というタイトルで、テレビ局Rede Manchete(ヘジ・マンシェッチ)から放送されました。

その反響は、当時の新聞からも確認できます。

ブラジルの大手紙「フォーリャ・ジ・サンパウロ」は、1994年12月30日付の記事で、『聖闘士星矢』が子どもたちの間で大流行し、日曜日には専用の番組まで設けられたと報じています。

とりわけ目を引くのが、玩具の販売実績です。

販売会社は当初、約8万体の販売を見込んでいましたが、実際には40万体を販売。予想の5倍に達したというのです。

クリスマスには、多くの親が子どもたちのために聖闘士の人形を買い求めていたと伝えられています。

当時の記憶は、2025年のRedditでも語られていました。

ここブラジルでは、1994年に『聖闘士星矢』がやって来たとき、本当に大ヒットしたんだ。今でも多くのファンの懐かしい思い出になっている。

それから10年後の2004年には再放送されて、最初のバージョンの間違いを修正した新しい吹き替えも作られたよ。

— u/Psychological_Task71(ブラジル)

ほかにも、1990年代には学校で誰もが話題にしていた、おもちゃ屋に人形が並んでいた、といった思い出が複数のスレッドで語られています。

人気は玩具だけにとどまりません。1995年4月の同紙によると、『聖闘士星矢』の流行をきっかけにアニメなどを扱う雑誌「Herói(エロイ)」が創刊され、週2回発行される各号は約10万部を売り上げていたといいます。

日本のアニメが今ほど豊富に放送されていなかった時代に、地上波テレビを通じて大勢の子どもたちに届いた『聖闘士星矢』。

当時のブラジルでは、単に人気アニメの一つというだけでなく、玩具や関連雑誌にまで広がる大きなブームを巻き起こしていたのです。

フランスでも1980年代から大ヒット

ヨーロッパでの人気を語るうえで欠かせないのが、フランスです。

フランスでは「Les Chevaliers du Zodiaque」という名前で放送され、子どもたちの間に広まりました。

フランス国立視聴覚研究所(INA)が保存している1988年6月1日の番組記録には、民放テレビ局TF1の子ども向け番組「クラブ・ドロテ」の放送作品として、『聖闘士星矢』が掲載されています。

当時は同じ番組で『UFOロボ グレンダイザー』などの日本作品も放送されていました。

東映アニメーションも公式資料で、『聖闘士星矢』が1980年代にヨーロッパの主要な地上波テレビ局で大成功を収めたと説明しています。

その人気は、国境を越えて届いていたようです。

ベルギー出身だけど、フランスのテレビ(TF1の『クラブ・ドロテ』)も見られたんだ。

『聖闘士星矢』は子どもの頃、大人気だったよ。あの作品が自分の子ども時代と、ファンタジーやアニメへの愛情を形作ったんだ。

— u/1rule(ベルギー)

フランスのファンからは、吹き替えへの強い愛着を語る声も寄せられています。

フランス出身。

90年代には大人気だったよ。

『聖闘士星矢』を日本語の原語版で見ようとしたこともあるけど、フランス語の吹き替えが好きすぎてね。

— u/RandomBlackMetalFan(フランス)

こうした吹き替えや主題歌も、現地ファンにとっては子ども時代の記憶と結びついた大切な要素なのでしょう。

その人気は、近年のイベントにも表れています。

2026年春には、パリなどヨーロッパ3都市で『聖闘士星矢』の音楽を演奏するオーケストラ公演が企画され、パリでは4月4日に公演が行われました。

テレビ放送から何十年も経った作品が、こうして音楽イベントにもなっているのです。

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星座と黄金聖闘士が生んだ、もう一つの楽しみ

もちろん、放送時期やテレビ事情だけで作品が支持されたわけではありません。

ファンのコメントを読むと、ギリシャ神話を取り入れた物語、仲間との友情、戦いに何度敗れても立ち上がる主人公たち、そして音楽や聖衣のデザインなど、作品そのものの魅力も繰り返し語られています。

なかでも『聖闘士星矢』ならではなのが、星座とキャラクターの結びつきです。

2026年9月、r/SaintSeiyaには「自分の星座の黄金聖闘士が、一番好きな黄金聖闘士だった?」という質問が投稿されました。

黄金聖闘士とは、牡羊座から魚座までの黄道十二星座に対応する、最高位の聖闘士たちです。

コメント欄では、好きなキャラクターと自分の星座を重ね合わせる人もいれば、星座は同じでもキャラクターが好きになれないという人もいて、なかなか盛り上がっていました。

デスマスクのせいで、自分の星座が嫌いだったんだ。

でも、マニゴルドのおかげで、また好きになれたよ。

— u/Unlikely-Comb5516

デスマスクは蟹座の黄金聖闘士で、マニゴルドは外伝作品『聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話』に登場する同じ蟹座の黄金聖闘士です。

お気に入りのキャラクターだけでなく、自分自身の星座まで話題になる。こうした楽しみ方ができるのも、『聖闘士星矢』の面白いところですね。

なぜアメリカでは同じようにヒットしなかったのか?

一方、アメリカでは『聖闘士星矢』がブラジルやフランスほど広く定着したとは言いにくい状況でした。

その背景として、海外ファンが何度も挙げているのが、放送の遅さと現地向けの大幅な変更です。

アメリカで本格的なテレビ展開が始まったのは2003年8月30日。日本での放送開始から約17年後でした。

米国の映像制作会社DIC Entertainmentなどが「Knights of the Zodiac」のタイトルで米国向けに制作した作品が、アニメ専門番組も放送するCartoon Network(カートゥーン ネットワーク)で放送されました。

しかし、その内容には大きな変更が加えられていました。

2004年に米国の映像作品レビュー誌「Video Librarian」が掲載した批評によると、暴力描写が削られ、血の色は赤から青に変更され、セリフや音楽にも手が加えられていたといいます。

米国のアニメ業界誌「ICv2」も、放送版が全年齢向けに編集されている一方、別に発売された日本版を基にしたDVDは15歳以上向けだったと説明しています。

つまり、アメリカの視聴者がテレビで見た『聖闘士星矢』は、日本のオリジナル版から大きく変更されたものだったのです。

当時の編集については、今でも否定的な意見が少なくありません。ただ、米国で人気が広がらなかった理由を、編集だけに求めることはできません。

2003年には、アメリカでもすでに『ドラゴンボールZ』などの日本アニメが知られていました。1980年代の作品である『聖闘士星矢』が、本来の放送時期から大きく遅れて紹介された点も、現地ファンが指摘する問題です。

放送時期の違い、視聴環境、現地向けの改変。これらは、それぞれの地域での広まり方を考えるうえで、無視できない違いです。

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それでも今のブラジルで愛されている?

2026年5月、ブラジルのアニメコミュニティ「r/AnimesBrasil」では、「昔の『聖闘士星矢』は今でも見る価値がある?」という質問が投稿されました。

コメント欄では、今でも最高の作品だという声がある一方、昔は好きだったけれど今見るとテンポが遅い、戦闘が単調に感じる、といった意見も寄せられています。

基本的には懐かしさのために見る価値があるって感じかな。

いい作品だけど、新しい形に生まれ変われなかったから、過去のものとして残っていくだろうね。

— u/montana-go

一方で、こんなコメントもありました。

子どもの頃から『聖闘士星矢』を見て育って、数年前には妻と一緒に見直したんだ。

そのあと、妻もアニメを見るようになったよ。

自分にとっては、欠点も含めて完璧な作品なんだ。考え方や教訓がたくさん詰まっていて、このアニメは自分の人格形成にも影響を与えてくれたよ😅

— u/Prudent-Chart7898

冒頭で紹介した2025年のスレッドでは、ペルーのファンからこんな声もありました。

ペルーでは、今でも『聖闘士星矢』を愛している人がいるよ。でも子どもたちは知らないんだ。

— u/lazygett12(ペルー)

すると、その返信には、

生まれたばかりの娘に、必ず小宇宙(コスモ)のことを教えてやるよ。

— u/CaptainPeru

という頼もしいコメントも。

小宇宙とは、作中で聖闘士たちが発揮する、体の内に秘められた力のことです。

新しい世代にどこまで広がるのかは分かりませんが、『聖闘士星矢』は今も、かつて夢中になったファン同士をつなぐ作品であり続けているようです。

日本で生まれた一つのアニメが、海を越えて子ども時代の大切な思い出になり、何十年後にも熱く語られる。

ブラジルやフランスでの人気の大きさを知ると、同じ作品でも、どこで、いつ出会ったかによって、ずいぶん違った存在になるのだと感じますね。

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