「駅スタンプを集めるために日本へ」なぜ旅の目的になる? 日本だけの文化なのか調べてみた

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山手線の全駅で駅スタンプを集める。そのために、5日間の日本旅行を予約した。

海外掲示板Redditで、そんな旅行計画を立てた人がいました。

別の旅行者は2週間の日本滞在で102種類を収集。「正直、こんなに集められるとは思わなかった」と振り返っています。

日本では駅の片隅に置かれていることもあるスタンプが、なぜ旅行の目的にまでなるのでしょうか。

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「これをやるために旅行を予約した」

日本旅行について質問・相談するRedditコミュニティ「r/JapanTravelTips」に、2026年1月、5日間の一人旅を計画しているユーザーが投稿しました。

宿泊先は浅草。2日目の予定には、こう書かれています。

日本でずっとやってみたかったことの一つが、山手線の全駅の駅スタンプを1日で集めること。それが、この旅行を予約した理由です。

— u/eightredapples

観光の途中でスタンプを見つけるのではありません。

スタンプを集めることが先にあり、そのために旅行が組まれています。

実際に山手線を1日で回ったというユーザーからは、

数年前にやったよ。9時に渋谷をスタートして、18時に渋谷へ戻った。

ずっと電車を乗り降りしていると精神的に疲れてくるから、途中で休憩を入れるのを強くおすすめする。

— u/ckhideki

という体験談も寄せられていました。

別の旅行者は、2週間の滞在で102種類を集めています。

正直、こんなに集められるとは思っていなかったけど、最終的に102種類になった。歩き回った甲斐があった(笑)

— u/shaeedee

この人も、

スタンプ探しは本当に楽しいよ。

— u/shaeedee

と話しています。

完成したスタンプ帳だけが目的ではないようです。

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探して迷ったことまで思い出になる

ほかのスレッドを見ていくと、その楽しさが少し見えてきます。

駅スタンプを2冊分集めたという旅行者は、こんなことを書いていました。

私にとっては、写真では再現できない最高のお土産。

渋谷駅のスタンプを見るたびに、あのスタンプを探して2時間も迷ったことまで一瞬で思い出す(笑)

— u/Tenchi_M

スタンプそのものに「2時間迷った」と記録されているわけではありません。

それでも、その印影を見ると、その場所で起きた出来事まで一緒によみがえる。

旅行ごとに専用のノートを持っていくという人も、

訪れた場所全部の記録になるのがすごくいい。

— u/Also-cute-and-fluffy

と話していました。

スタンプの横に旅行中のメモを書いたり、写真や切符、シールと一緒にスクラップブックにしたりする人もいます。

駅を探す行為そのものにも、小さな発見があります。

ある旅行者が気に入っていたのは、有名な大駅ではなく地方の小さな駅でした。

小さな駅でスタンプがあるか聞くと、駅員さんがすごくうれしそうにしてくれることがあった。

ある駅員さんは、その小さな町を表した自分の駅のスタンプがどれだけきれいか、とても誇らしそうだった。

— u/LighthouseonSaturn

本来なら乗り降りするだけだった駅が、スタンプを探したことで「立ち寄った場所」に変わっています。

1931年の福井駅をきっかけに、駅スタンプが全国へ広がった

日本の駅スタンプの歴史を調べると、よく登場するのが1931年の福井駅です。

当時の福井駅には、駅名だけではなく地域の名所などを図柄に取り入れたスタンプが設置され、旅行雑誌『旅』でも紹介されました。その後、同じようなスタンプが各地の駅へ広がっていきます。駅スタンプ研究家の田中比呂之氏も、福井駅を現在につながる駅スタンプ普及の重要な起点として紹介しています。

ただし、「福井駅が日本で最初の駅スタンプだった」と単純に言い切ることはできません。

読売新聞編集委員の丸山淳一氏は、田中氏の調査協力を得て、それ以前にも別の駅にスタンプが置かれていた例が確認されていると説明しています。

そのため、1931年の福井駅は「駅で押されたあらゆる記念印の日本初」というより、地域を表す図柄を入れた駅スタンプが全国へ普及していく大きなきっかけの一つと見る方がよさそうです。

そして、この文化は早い時期に台湾にも渡っています。

国立台湾歴史博物館によると、日本統治時代の台湾では1932年に日本から駅の記念スタンプが導入され、その後、各地の駅や観光地、神社などに設置されるようになりました。

博物館には、1934年ごろの旅行者が台湾各地の駅、神社、観光地などで集めた実物の収集帖も残されています。ページに並ぶスタンプから、当時の旅行経路まで読み取れる資料です。

日本国内では、1970年の大阪万博で各パビリオンのスタンプを専用帳に集める「スタンプコレクション」が人気になりました。印章メーカーのシヤチハタも、これを現在のスタンプラリー文化が広がる大きな契機の一つとして紹介しています。

同じ1970年には、国鉄(現在のJR各社の前身)が「DISCOVER JAPAN」キャンペーンを開始しました。JR東日本の資料では、1970年から14年間行われたキャンペーンとされています。

さらに1980年から始まった国鉄の「わたしの旅」では、その駅や町の特徴を描いたスタンプが全国約740駅に設置されました。

駅へ行き、その土地を表した印を押して次へ向かう。

現在の旅行者が楽しんでいる遊び方には、かなり長い歴史がありました。

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スタンプラリーは、人を別の場所へ向かわせる仕組みにもなる

旅行記念として常設されている駅スタンプとは別に、日本では複数の場所を巡る「スタンプラリー」もよく行われています。

2021年に発表された研究では、2018年までに日本で開催されたアニメ・漫画・ゲームなどに関連するスタンプラリー47件を調べ、開催地やスタンプ設置場所などから5種類に分類しています。

そこには「交通利用促進型」「広域聖地めぐり型」「市街地聖地巡り型」「観光商業調和型」「経済活性化促進型」といったタイプがありました。

この研究は、「スタンプを置けば実際に何%人の移動が増えるのか」を測定したものではありません。

それでも、鉄道利用を促したり、街の複数地点を巡ってもらったりする目的でスタンプラリーが利用されていることは分かります。

2026年夏にも、JR東日本は首都圏などでポケモンのスタンプラリーを開催しました。

6駅、9駅、36駅のコースに加えて、新幹線駅を対象にしたコースまで用意されています。

Redditでも、ポケモンや名探偵コナンなどの期間限定スタンプラリーを楽しんだという話が出ていました。

通常の駅スタンプと、期間限定のスタンプラリーは同じものではありません。

それでも「もう一つ押すために、次の場所へ行く」という遊び方には共通するところがあります。

ある投稿者も、集め始めてから、

電車で出かける予定を考えるのが、前より面白くなった。

— u/SakuraMeeple_Ink88

と書いていました。

スタンプは訪れた場所の記録になるだけでなく、ときには次の目的地を作るきっかけにもなっているようです。

「日本の判子文化だから」は本当?

海外のスレッドでは、もう一つ面白い推測が出ていました。

日本では銀行口座を作るときにも個人の印鑑が必要だったと思う。もしかすると、それと関係があるのかな。

— u/aghowl

これに別のユーザーが、

個人用の判子と、集めるスタンプは別物だよ。

— u/frozenpandaman

と返しています。

今回調べた範囲では、日本で判子が広く使われてきたことが、駅スタンプ普及の直接的な原因だったと示す資料は確認できませんでした。

シヤチハタは、各地を巡りながら御朱印などを集める巡礼文化を、スタンプラリーにつながる歴史の一つとして紹介しています。

ただし、これは「巡って印を集める」という形式上のつながりを説明したものです。

1931年の福井駅を中心に広まった駅スタンプの歴史と合わせても、

「日本人は判子を使う文化がある」

「だから駅スタンプが普及した」

と直接結びつける証拠にはなりません。

なお、Redditでは御朱印と観光スタンプを同じ帳面に押してよいのかという質問も何度も出ていましたが、御朱印は寺社を参拝した証として授与されるもので、この記事で扱っている駅や観光施設の記念スタンプとは別物です。

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実は、日本だけではなかった

複数のスレッドには、

日本では観光案内所や博物館にもスタンプがあった。他の国でも同じならいいのに!

— u/pennilyn_lottt

というような反応もありました。

ところが調べてみると、似た仕組みは日本以外にもかなりあります。

特によく似ているのが台湾です。

台湾鉄路は2022年、「鐵道旅行・幸福美好111」という企画で、沿線111駅にそれぞれ異なる記念スタンプを設置しました。公式資料には各駅の設置場所や利用可能時間まで掲載されています。

1930年代の収集帖まで残っていることを考えると、台湾にも長い鉄道スタンプの歴史があります。

アメリカには「Passport To Your National Parks」という仕組みがあります。

1986年に始まったもので、米国立公園局が管理する400を超える国立公園や史跡などのほぼすべてで、訪問地と日付が入ったスタンプを集められます。専用帳は有料ですが、スタンプを押すこと自体に追加料金はありません。

中国でも近年、博物館や観光地、郵便局、店舗などを巡ってスタンプを集める「集章旅行」が若者を中心に人気になっていると、中国郵政が紹介しています。

2024年の記事では、数日かけて269個を集めた人や、博物館を巡って一冊を埋める人なども紹介されていました。

英国にもあります。

歴史的建造物や庭園、自然景観などを保全している団体「ナショナル・トラスト」は、公式の「Visitor’s Passport」を販売しています。

参加する数百か所の施設で専用スタンプを集められ、30種類集めると記念証明書を申し込める仕組みです。

こうして比べると、「旅先で印を集める」という発想そのものを日本特有とすることはできません。

世界のどの国が最も多く観光スタンプを設置しているのかを比較した統計も、今回確認した範囲では見つかりませんでした。

それでも、今回確認した日本の事例と海外旅行者の体験を並べると、一つの特徴は見えてきます。

日本では駅だけでなく、観光案内所、博物館、水族館、展望台、空港、期間限定イベントなど、旅行中のさまざまな場所で「押して持ち帰る」体験に出会ったという声が繰り返し出ていました。

これは国際比較で証明された「日本特有の性質」ではありません。

ただ、鉄道旅行の中に長く定着してきた駅スタンプに、観光施設やスタンプラリーまで重なっていることが、日本を訪れた旅行者に「どこへ行ってもスタンプがある」と感じさせる一因なのかもしれません。

スレッドの投稿者も、最初は駅スタンプについて話していたのに、いつの間にか、

観光地のスタンプも全部集めることになりそう。

— u/SakuraMeeple_Ink88

と書いていました。

駅から始めたはずなのに、気づけば旅行全体がスタンプ探しになる。

2週間で102個集めた旅行者の「歩き回った甲斐があった」という言葉は、その楽しみ方をよく表しているのかもしれませんね。

参考情報と翻訳元

Reddit

外部資料

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