「おまかせ」が海外で“高級寿司”のイメージに? 日本語から変化した「OMAKASE」を追ってみた

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(最終更新日:2026年9月18日)

「おまかせ」は、日本人なら特に説明されなくても意味が分かる言葉です。

ところが海外の一部では、ローマ字の「OMAKASE」がそのまま使われる一方で、日本語とは少し違う使われ方をしています。

海外掲示板Redditでは、「アメリカのおまかせは、もう“任せる”ではなくなっている」という議論まで起きていました。

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「これは本当におまかせ? ただの12貫セットでは?」

2026年3月、寿司について語るRedditコミュニティ「r/sushi」に、「Omakase Lost Its Essence(おまかせは本質を失った)」という投稿がありました。

Omakase Lost Its Essence
by u/kohadaa in sushi

投稿者が問題視していたのは、アメリカで増えているという「omakase」を掲げた寿司店です。

アメリカでは、「おまかせ」という考え方が損なわれてしまった。「あなたに任せる」が、「会社の手順どおりにする」に変わっている。

(中略)

これは本当におまかせなのか。それとも、トッピングをのせた12貫の握りセットなのか。

— u/kohadaa

すべてのアメリカの店がそうだ、という話ではありません。実際、同じスレッドにはニューヨークやロサンゼルスなどで、日本と比べても遜色ない店があるという反論も出ています。

一方、7月に立った別のスレッド「The Booming Business of American Omakase」では、比較的手頃な店について、

握りのセットを一貫ずつ出す形に変えて、「omakase」と呼んでいるだけの店も多いと思う。それで料金は上乗せされる。メニューもほとんど変わらない。

— u/sdlroy

という声がありました。

同じスレッドでは、さらに直接的な意見も出ています。

もう本来の意味は失われていると思う。アメリカでは「omakase」を高級寿司という意味で使うけど、日本では料理人が何を出すか決めるなら、ほとんどどんな料理にも使える。東京でとんかつのおまかせを食べたこともある。

— u/sdlroy

では、日本語の「おまかせ」と、海外で使われる「OMAKASE」は、実際どれくらい違うのでしょうか。

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日本語の「おまかせ」は、そもそも寿司の名前ではない

小学館の『デジタル大辞泉』では、「お任せ」は「物事の判断や処理などを他人に任せること」とされています。

料理についても、「料理屋で料理の内容を店に一任すること」という意味がありますが、寿司に限定されているわけではありません。

「今日のお昼どうする?」

「おまかせで」

でも普通に成立します。

つまり、日本語では料理以前に「自分では決めず、相手の判断に委ねる」というかなり広い言葉です。

最初のRedditスレッドにも、日本での感覚についてこんなコメントがありました。

日本で寿司屋に入って「お任せします」と言うことはあるけど、料理人が決まった「本日のおまかせメニュー」を取り出してくるような感じではないと思う。

「今日はこれがいいですよ」「何が食べたいですか」という、客と料理人とのやり取りに近い。

— u/gabrielleduvent

もちろん、これは一人の利用者の感覚です。

ただ、「おまかせ」が本来は特定の料理名ではなく、誰に選択を委ねるかを表す言葉だという辞書の説明とはよく合います。

英語の「omakase」は、すでに一つの料理用語になっていた

一方、英語の辞書を見ると少し様子が違います。

Dictionary.comの「omakase」は、日本語一般の「任せる」ではなく、

「料理人が客のために選んだ一連の料理。固定価格の場合もある」

という飲食用語として掲載されています。

同辞書では、英語での使用記録を1965~1970年までさかのぼらせています。つまり「omakase」は、ここ数年突然海外へ出ていった言葉でもありません。

ただし、ここにも「寿司」や「高級料理」とは書かれていません。

それなのに、なぜアメリカでは「OMAKASE」と聞くと、高級な寿司カウンターを思い浮かべる人が増えたのでしょうか。

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「OMAKASE=特別な寿司体験」を強めたもの

アメリカの食文化メディアEaterは2022年、この変化を2011年のドキュメンタリー『Jiro Dreams of Sushi(邦題:二郎は鮨の夢を見る)』と結びつけて振り返っています。

小野二郎氏と「すきやばし次郎」を追った作品で、配給元の公式紹介でも、わずか10席の寿司店に世界中から客が訪れ、予約を取るために何か月も待つ店として描かれています。

Eaterによると、もちろんアメリカにもそれ以前から高級寿司店はありました。

ただ映画を通して、多くの人が、

職人の目の前に座る。

メニューから一品ずつ注文しない。

一貫ずつ出てくる寿司を食べる。

予約は取りにくく、値段も高い。

という「江戸前寿司のおまかせ体験」を具体的に知ることになりました。

その後、ニューヨークやロサンゼルスなどで、少人数のカウンターを中心としたおまかせ店が次々に登場したとEaterは伝えています。

2025年には、アメリカ版ミシュランガイドまで、

「寿司カウンターがあまりに普及したため、どこかの時点で『omakase』という言葉が寿司と同義のようになった」

と説明しています。

Redditで出ていた、

アメリカでは「omakase」が高級寿司という意味で使われている

という感覚にも、こうした背景がありそうです。

ただし、英語の辞書的な意味そのものが「高級寿司」へ変わったわけではありません。

料理人に選択を委ねる料理という意味を残しながら、アメリカでは寿司、とくに高価格帯のカウンター寿司との結びつきが非常に強くなった、と考える方が正確です。

ところが今度は、寿司から離れ始めた

ここまでなら、

「日本語の『おまかせ』がアメリカへ渡り、高級寿司のイメージを強くまとった」

で話は終わります。

ところが、もう一度広がり始めています。

先ほどの米ミシュランガイドの記事は、そもそも「寿司ではないアメリカのおまかせ」を紹介するものでした。

焼き鳥、天ぷら、懐石、和牛などです。

つまり一度「特別な寿司体験」と強く結びついた「omakase」が、今度は「料理人に内容を委ねる特別なコース」という形で、ほかの料理へ広がっています。

Redditにも、こんなコメントがありました。

韓国で「omakase」がどうなっているか見たらもっと驚くと思う。カフェや韓国焼肉にもある。

— u/irishfro

調べると、これは冗談ではありませんでした。

Korea JoongAng Dailyに掲載された、ソウル大学で農業経済・農村開発を研究するMoon Jung-hoon教授の寄稿では、「韓牛(ハヌ)オマカセ」と呼ばれる料理について紹介されています。

韓牛のさまざまな部位を、料理人が組み立てたコースとして提供するスタイルです。

さらにソウルでは、コーヒー、紅茶、デザートの「omakase」まで登場しました。客が一杯ずつ選ぶのではなく、作り手が組み立てた流れそのものを楽しむ形です。

ここまで来ると「寿司」という料理名よりも、

「自分では選ばず、作り手が組み立てた特別な体験を楽しむ」

というブランドに近づいているようにも見えます。

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では、「海外のOMAKASE」は間違いなのか

Redditでは「本来の意味を失った」「ただの高級寿司をomakaseと呼んでいる」と批判する人がいる一方、

言葉の意味は変わるものだ。寿司自体だって長い間に何度も変化してきた。

という反論もありました。

この議論に「正しい・間違い」と答えを出すのは難しそうです。

確認できた範囲では、日本語と海外の用法には確かにずれがあります。

日本語の「おまかせ」はもっと広い。

英語の「omakase」は料理用語として独立し、とくにアメリカでは寿司との結びつきが非常に強くなった。

韓国ではそこからさらに、牛肉やコーヒーまで含む「作り手に委ねるコース」のような使われ方へ広がった。

同じ「OMAKASE」でも、場所によって頭に浮かぶものが違います。

そのイメージは、日本から海外へ伝える場にも現れている

2本目のRedditスレッドには、もう一つ気になるコメントがありました。

今度は日本の寿司店まで、観光客にアピールするため「omakase=高級」という意味を取り入れ始めている。

これは個人の観察なので、そのまま事実とはできません。

ただ、日本政府観光局(JNTO)の外国人向け寿司ガイドを見ると、おまかせは「より高級な選択肢」として紹介され、その後に高価格になりやすい寿司のスタイルとして説明されています。

また、日本版ミシュランガイドも2025年の記事で、「今やOMAKASEは世界の共通語」と表現しています。そこで紹介されているのは寿司だけではなく、割烹などの日本料理店です。

これだけで「海外で変化した意味が日本へ逆輸入された」とまでは言えません。

ただ、日本の観光・飲食情報を外国人に伝える場でも、「OMAKASE」という国際的な料理用語が使われています。

日本語の「おまかせ」をそのままローマ字にしたはずの「OMAKASE」。

海を渡ってみると、アメリカでは高級寿司のイメージをまとい、韓国では牛肉やコーヒーにまで広がっていました。

同じ綴りでも、もう少しだけ別の言葉として歩き始めているのかもしれませんね。

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