(最終更新日:2026年9月15日)
選手ごとの応援歌に合わせて声を出す外野席。
鳴り物の音。
客席を歩くビールの売り子。
日本でプロ野球を見たことがあれば、それほど珍しくない光景です。
ところが今回確認した複数の海外掲示板のスレッドでは、日本で初めて野球を見た人たちが、試合内容だけでなく観客席の雰囲気について何度も語っていました。
2026年8月、Redditの東京旅行コミュニティでは、ニューヨークから日本を訪れる米大リーグ(MLB)ファンが、東京ドームで巨人対中日戦を見るか迷っていました。
「東京にいる間、東京ドームで巨人対中日戦を見られそうなんだけど、日本で野球を見に行ったことがある人、どんな感じか教えてもらえない? MLBの大ファンだから、日本の野球観戦を体験できたらかなり面白そうだと思ってる。」
— u/gamerdudeNYC
すると、実際に東京ドームへ行った人から、
「ちょうど東京ドームで2試合見てきた。今まで見たスポーツの中で最高の雰囲気だったよ。」
— u/nimsu
という返信がありました。
私たちには見慣れた日本の野球場は、海外の野球ファンにはどう見えているのでしょうか。
やはり一番目立つのは「応援」
日本の野球観戦について尋ねた別のスレッドには、こんな体験談がありました。
「ものすごく楽しいよ。選手一人ひとりに歌があるし、球場の食べ物もすごいし、球場全体の雰囲気がとにかくすごい。
みんな本当に熱心で、チャントや応援歌を仕切っているファングループもかなり本気だよ。仕事帰りにそのまま球場へ来て、シャツを着て、ビールをぐいっと飲んでる人もいる。
ほとんどのアメリカの野球ファンでは考えられないくらい、みんな自分のチームを全力で応援してる。きっと楽しめるよ。本当に特別な体験だと思う。」
— u/HothouseEarth
ここでいうチャントは、観客が繰り返し声を合わせる応援のことです。
このコメントを書いた人にとっては、選手ごとの応援歌や、ファンがまとまって応援する光景が、普段見ているアメリカの野球とはかなり違って感じられたようです。
同じような違いは、今回確認したほかのスレッドでも繰り返し挙げられていました。
別の人は、その印象をかなり端的に表現しています。
「野球の試合なんだけど、観客はサッカーみたいな感じ。3分おきくらいにビールの売り子が来る。また行きたい。」
— u/jzimm79
実際に3分間隔だったという意味ではないでしょう。
それでも「野球なのにサッカーの観客みたい」という表現には、応援席から受けた印象がよく表れています。
初めて見た日本のプロ野球が巨人―阪神戦だった
2026年5月には、シカゴ・カブスのファンが初めて日本のプロ野球(NPB)を観戦し、東京ドームの巨人―阪神戦を訪れています。
投稿者は、投手を含めて選手一人ひとりに応援歌があり、観客がきれいにそろっていたことに驚いていました。
すると、
「初めての試合で、NPB最大のライバル対決に当たったんだね。ヤンキース対レッドソックスを100倍にしたようなものだよ。どのNPBの試合でもアメリカ人にはカルチャーショックだと思うけど、初回からいきなり一番深いところに飛び込んだようなものだね。」
— u/oogieball
という返信がありました。
ヤンキース対レッドソックスは、MLBを代表する伝統的なライバル関係です。
もちろん「100倍」はこの人なりの誇張ですが、「よりによって初観戦が巨人―阪神だったのか」という感覚は伝わってきます。
投稿者自身も、ファンの盛り上がりについては、MLBの試合よりずっとよかったと感じたそうです。
負けていても応援が止まらない
別のメッツファンは、巨人戦で少し違うところに驚いていました。
「巨人は完封されて、ほとんど攻撃らしい攻撃もできていなかったのに、ファンは試合中ずっと応援してたんだ。メッツファンの自分には衝撃だったよ。こっちなら2回くらいからブーイングしてたと思う。」
— u/dmakproductions
一試合の体験ですから、日本のファンがいつでもこうだという話ではありません。
日本の球場でもブーイングはあります。
ただ、今回確認した複数のスレッドでは、勝敗とは別に「攻撃中の応援がずっと続く」「ビジターファンもまとまって歌っている」といった点を印象に挙げる人が何人もいました。
海外の野球ファンの一部には、応援そのものが試合とは別の見どころとして映っているようです。
売り子や球場グルメも「日本の野球」の一部
応援以外でも、繰り返し話題に出てきたものがあります。
ビールの売り子です。
今回確認した複数のスレッドでは、背中にタンクを背負った売り子が客席を歩き、その場で飲み物を注ぐ光景が何度も言及されていました。
東京旅行のスレッドには、球場の食事についてこんなコメントもあります。
「食べ物の選択肢もかなりいいよ。アメリカではまず見ないようなものもある。予算に余裕があって、本当に野球が好きなら、かなり特別な体験になると思う。
電車も球場のすぐ近くまで行くし、駅から球場へ向かう途中には食事や買い物ができる場所もある。球場の外にも中にも売店があったし、ビジターチームのグッズを売っている店もあったよ。」
— u/rezdaddy22
日本人なら、電車で球場へ行き、食事をしながら試合を見ることに、あまり特別さを感じないかもしれません。
旅行者にとっては、その周辺まで含めて「日本で野球を見る」という体験になるようです。
プロだけでなく、甲子園にも驚く
海外野球ファンの関心は、日本のプロ野球だけではありません。
2024年の春の甲子園で、青森山田高校の選手がカメラ席へ飛び込みながら打球を捕った場面がRedditに投稿されると、
「これ高校なの? マイナーリーグの球場より大きいじゃん……。」
— u/lekniz
という反応がありました。
そこで、試合が阪神タイガースの本拠地・甲子園球場で行われている高校野球の全国大会だと説明されると、
「これを1週間前に知りたかった。今ちょうど日本から帰る便に乗るところなんだ……。またいつか来ないと。」
— u/l3opard
と返しています。
日本人には「甲子園だから甲子園球場でやる」という当たり前の話でも、このやり取りを見ると、少なくとも一部の海外ファンには、高校生がプロ球団の本拠地で全国大会をすること自体が珍しく映るようです。
すべての人に合うわけでもない
今回確認したコメントは、全体としてかなり好意的なものが目立ちました。
ただし、同じ特徴を違うように受け取った人もいます。
東京ドームの外野応援席に座った人は、最初は応援の迫力を楽しんでいたものの、何イニングかすると印象が変わったと書いています。
「応援はすごかったよ。しばらくの間はね。自分は外野の応援席に座ってた。でも何イニングかすると、ちょっと単調に感じてきた。
自分のチームが攻撃するときは毎回これをやって、勝ちそうな試合の最後のアウトでもまたやるんだ、と気づいてからね。
少なくともここでは外野席が応援席になっていて、レフト側にはビジターファンのための小さな区画がある。表の攻撃ではビジター側が練習してきたチャントをやって、残りの外野席にいるホーム側は裏の攻撃で応援する。
全部かなりきっちり決まっていて、あえて言えば繰り返しが多い。自分は何が始まるのか知らなかったし、もちろん歌詞も分からなかった。それに、すべてのファンがこうした応援に参加したいわけでもない。内野席の人たちは参加していなかったよ。」
— u/OWSpaceClown
このコメントは、日本の応援文化を否定しているというより、同じ特徴でも見る人によって印象が変わることをよく表しています。
熱気と感じる人もいれば、繰り返しが多いと感じる人もいる。
それはそれほど不思議なことではありません。
東京旅行のスレッドにも、こんな感想がありました。
「友達何人かと見に行ったよ。雰囲気やファンのチャントなんか、よかったところもあった。でも試合そのものは正直かなり退屈だった。
自分は最後までいたけど、友達は途中で帰った。周りにいたほかの外国人も、かなり早く帰ってたよ。
野球は自分にとって2番目に好きなスポーツで、一番はサッカー。日本ではJリーグも見たけど、そっちのほうがずっと好きだったし、また見に行きたいと思った。」
— u/Valuable_Pass_1221
「外国人は日本の野球に感動する」と一つにまとめることはできなさそうです。
パ・リーグでは訪日客向けチケット販売も伸びている
こうした体験談とは別に、訪日旅行者を意識した動きも出ています。
パ・リーグ6球団は、訪日外国人旅行者向けのチケット販売サービス「Tickets in Japan」で主催試合のチケットを販売しています。
公式情報によると、海外からのクレジットカード決済のほか、Apple Pay、Google Payに対応し、英語、繁体字中国語、韓国語によるサポートや、会場へのアクセス、観戦時の注意事項を載せた電子チケットも用意しています。
さらに2026年7月、パ・リーグ公式メディアは、この訪日客向けサービスでのパ・リーグ6球団のチケット販売数が、前年の年間実績をすでに上回ったと伝えています。
ただし、これはNPB全体の外国人観客数を集計した統計ではありません。
あくまで、パ・リーグ6球団の訪日客向け販売サービスで確認できた動きです。
オリックスでは欧米やオーストラリアからの観客増も
その中でも、オリックス・バファローズでは少し具体的な傾向が報告されています。
パ・リーグ公式メディアが2026年8月5日に掲載した、オリックスのチケット担当者らへの取材記事では、ここ1~2年でアメリカ、カナダ、オーストラリアなどから来場する観客が数字として明らかに増えていると説明されています。
外国人向け販売サービスを通してバファローズ戦を購入した人の内訳は、
アメリカ44.6%。
台湾20.4%。
オーストラリア18%。
となっていました。
ただし、この44.6%は球場全体の割合ではありません。
あくまで対象となった外国人向けチケット購入者の中で、アメリカからの購入者が占める割合です。
Redditでも、その点を読み違えかけた人がいました。
「見出しを読み間違えて、観客の44%がアメリカ人なのかと思ってびっくりした。外国人観客の中で44%がアメリカ人って意味なんだね。
じゃあ実際の観客全体では、外国人はどれくらいいるんだろう? 仮に外国人が10人しかいなかったら、そのうち4人がアメリカ人ということになるわけだし。」
— u/cooljammer00
この指摘はその通りです。
今回の資料だけでは、球場全体に占める外国人観客の割合までは分かりません。
一方、同じ取材記事では、大阪や京都を観光したあとに京セラドーム大阪のナイターを旅程に組み込む旅行者がいることや、山本由伸、吉田正尚がかつて所属した球団として調べて訪れる北米のファンがいることも紹介されています。
「外国人観客がNPB全体で急増している」とまでは言えませんが、少なくとも一部の球団では、日本旅行の中にプロ野球観戦を組み込む需要が見えるようになってきています。
同じ野球なのに、目につくところが違う
日本でプロ野球を観戦した海外ファンの一人は、こんな感想を残していました。
「全体的に雰囲気はかなり違うよ。そろったチャントがあるし、楽器もある。でも試合そのものは似てる。」
— u/TheRedMiko
グラウンドで行われているのは、よく知っている野球。
ところが客席を見ると、応援歌があり、鳴り物があり、ビジター応援席があり、売り子が歩いている。
甲子園まで目を向ければ、高校生の全国大会を何万人もの観客が見る文化もあります。
私たちにとっては背景になっているものほど、初めて日本の球場へ来た人にはよく見えるのかもしれません。
そして、その違いを「最高の雰囲気」と感じる人もいれば、「少し単調」と感じる人もいる。
海外の反応を追ってみると、日本の野球観戦が優れているかどうかというより、同じ野球でも「どう見るか」「どう応援するか」には思った以上に違いがあることが見えてきますね。
この記事に関連するおすすめ書籍
『文化系のための野球入門 「野球部はクソ」を解剖する』
中野慧 著
日本の野球文化は、なぜ現在のような形になったのでしょうか。
甲子園や学生野球、武士道と結びつけられてきた野球観、野球部文化などをたどりながら、日本社会と野球の関係を考える一冊です。
2025年刊の光文社新書で、今回の記事で触れた「なぜ日本では野球がこれほど大きな存在になったのか」を、少し違った角度から読んでみたい人にも向いています。
参考情報と翻訳元
北海道日本ハムファイターズ「訪日外国人旅行者向け『Tickets in Japan』でパ・リーグ6球団主催試合の観戦チケットを販売中!」
訪日外国人向けチケット販売、海外からの決済、多言語サポートなどのサービス内容確認に使用。
パ・リーグ公式メディア「パ・リーグ6球団主催試合の訪日外国人旅行者向け観戦チケット販売が、『Tickets in Japan』で好調」
パ・リーグ6球団の訪日客向けチケット販売状況の確認に使用。
パ・リーグ公式メディア「平日ナイターに商機あり。インバウンド向けチケット好調のバファローズの戦略とは」
オリックスを訪れる米国・カナダ・オーストラリアなどからの観客の変化、外国人向けチケット購入者の国・地域別内訳、大阪・京都観光後のナイター需要、山本由伸・吉田正尚の元所属球団として訪れる北米客について確認。
Reddit r/TokyoTravel「Catch a baseball game in Japan?」
東京ドームや神宮球場などで日本の野球を観戦した外国人旅行者の体験談を翻訳、参照。
Reddit r/baseball「What are baseball games in Japan like?」
応援歌、鳴り物、球場グルメ、ビールの売り子など、日本の野球観戦文化に対する海外ファンの反応を翻訳、参照。
Reddit r/baseball「I went to my first NPB game (Hanshin at Yomiuri), and all I can say is: holy. shit. These fans were incredible.」
初めて巨人―阪神戦を観戦した海外ファンと、日本の応援文化に対するコメントを翻訳、参照。
Reddit r/baseball「At a high school baseball game in Japan, a player from Aomori Yamada High School jumped into the camera box to catch the ball.」
甲子園球場や高校野球の規模に驚く海外ユーザーの反応を翻訳、参照。
Reddit r/baseball「Foreign visitors are increasingly attending games of the six teams in NPB Pacific League. The Orix have launched a ticket sales website specifically for international fans. Among the foreign spectators attending Orix games, 44.6% are USA, 20.4% Taiwanese, and 18.0% Australians.」
オリックス戦を観戦した外国人の体験談、チケット購入、外国人向け観戦サービス、44.6%などの数字に対するコメントを翻訳、参照。


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