(最終更新日:2026年9月18日)
英国の週刊誌『The Economist』が、ちいかわを取り上げました。
A tiny, weeping, hamster-like creature has conquered East Asia https://t.co/43EDOAjUYO
— The Economist (@TheEconomist) September 10, 2026
記事の副見出しは、
「小さくて泣き虫な、ハムスターのような生き物が東アジアを制覇した」
というもの。Economist公式Xも、この副見出しと同じ一文で記事を紹介していました。
これを見たファンからは、さっそく「そこから説明するの?」と言いたくなるような反応が集まっていました。
「名前はちいかわだ!」
特に反応されていたのが、「hamster-like(ハムスターのような)」という紹介です。
名前はちいかわだ! ちゃんと敬意を払ってくれ。
— @AnimatorDanny
さらに、
「ちいかわ」について話すときは、口の利き方に気をつけろ。
— @Mango_Boyo
かなり大げさな言い方ですが、もちろんファンらしい冗談です。
日本語の投稿では、「泣き虫」の部分にも反応がありました。
しかし彼は泣き虫だけど弱虫では無いのだ
— @tailxtail
泣き虫だけど、逃げない、脅しに屈しない、立ち向かってゆく、泣きながらでも食べるという強い心の持ち主れす。
— @ritatti2
アニメ公式サイトでも、ちいかわは「ちょっぴり泣き虫だけど優しい性格」と紹介されています。草むしりや討伐などをして生活しているキャラクターです。種族をハムスターとは説明していません。
もっとも、The Economistも「ハムスターである」と断定しているわけではなく、「hamster-like」、つまり見た目をたとえています。
そして、この説明はEconomistだけのものでもありません。
中国の英字メディアSixth Toneはちいかわを「かわいくてふわふわしたハムスター」と紹介し、東アジアのポピュラーカルチャーを研究するジェイソン・チュン教授も、一般向けの論考で「小さな白いハムスター」「ハムスターのような生き物」と表現しています。
少なくとも、複数の英語記事で似た説明が使われています。
元記事を読むと、「泣き虫だから人気」という話ではなかった
副見出しだけを見ると、「日本で人気の謎の泣き虫ハムスター」を面白おかしく紹介した記事にも見えます。
ところが、The Economistの本文まで読むと少し印象が変わります。
記事の入口になっているのは、2026年7月24日に公開された『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』です。
かわいらしい見た目とは反対に、物語では人魚を食べて不老不死になった島民や、復讐するセイレーンが登場します。Economistはまず、この「子ども向けにも見えるのに、話はかなり暗い」という落差から紹介していました。
同誌の記事では、公開から約1か月で興行収入100億円を超えたことが紹介されています。
その後も数字は伸び、9月13日までの公開52日間では観客動員1000万人、興行収入146.6億円を突破しました。
しかし、Economistが見ているのは映画のヒットだけではありません。
記事では、ちいかわたちが単発の仕事などで稼ぐ「ギグ・エコノミー」のような世界で暮らしていると説明しています。仕事の一つである草むしりには資格が必要で、ちいかわは勉強したにもかかわらず試験に落ちます。
友達が恐ろしい怪物のような姿へ変わることもあり、背景には顔のない灰色のキャラクターたちがいる。
「かわいい」の反対側に、仕事、試験、失敗、孤独、危険が普通に存在しています。
Xには、こんな反応もありました。
不安定な時代に人々が求めるのは、成長戦略でも金融緩和でもない。草むしり検定と、たまに湧く報酬である。
— @piyoneko41nyan
冗談ですが、Economistの記事が拾っていた部分と妙に重なっています。
泣いてしまっても、ハチワレがいる
Economistがもう一つ大きく取り上げていたのが、ちいかわたちの友情でした。
例として出てくるのが、ラーメン店へ行く話です。
ちいかわとハチワレは事前にネットカフェで注文方法を勉強します。
ところが実際の店でニンニクを入れるか聞かれると、ちいかわは答えられず泣いてしまう。そこでハチワレが代わりに対応します。
Economistの記事に登場するジェイソン・チュン氏は、ハワイ大学ウェストオアフ校の歴史学教授で、東アジアのポピュラーカルチャーや、アジア太平洋地域をまたぐエンターテインメントの歴史を研究しています。ちいかわについても2026年に一般向けの論考を書いています。
その論考でチュン教授が注目しているのは、不安で答えられなくなったちいかわを作品が笑いものにせず、ハチワレがただ助けるところです。
Economistも記事の最後で、ちいかわの世界は「この世界はとても不安に満ちている」ことを認め、そのうえで「不安でいてもいい」と伝えている、というチュン教授の見方を紹介していました。
そう考えると、
しかし彼は泣き虫だけど弱虫では無いのだ
という最初の反応と、Economistの記事は、それほど違うことを言っていません。
ハチワレに自分を重ねる人も
返信欄には、ハチワレについてこんなコメントもありました。
ハチワレって、最近の僕らの多くみたい。一日中働いても家を買えない。結局、お金や貯金は趣味と食べ物に使う🤣
— @apidfortwitt
もちろん、一人のユーザーによる冗談交じりの感想です。
ただ、ちいかわたちの生活を自分たちの日常に重ねる見方は、中国のファンを取材した記事でも見られます。
中国の英字メディアSixth Toneは2024年、中国のSNSでちいかわたちが「デジタル・イブプロフェン」と呼ばれていると紹介しました。
イブプロフェンは痛みや熱を抑える薬の成分です。
かわいい姿や物語が、若者たちを現実のストレスから一時的に離れさせてくれる。その感覚を「痛み止め」にたとえた表現です。
同記事によると、中国の雑貨小売チェーンMINISOの上海店舗で開かれたちいかわのポップアップストアでは、オープンから3日間で800万元(当時の為替で約1億7000万円)を売り上げました。
Economistが「東アジアを制覇した」と書いた背景には、こうした日本国外での広がりがあります。
香港でも2025年、鉄道を運営するMTRが大型展覧会「CHIIKAWA DAYS」に合わせて「CHIIKAWA DAYS in MTR」という企画を実施。7月12日から8月31日まで、ちいかわたちをデザインしたライトレールが実際に運行されました。
「東アジアを制覇」はもちろん、地域全体の人気を統計で示した表現ではなく、見出しらしい大きな言い方です。
それでも、日本だけで完結したブームではないことは分かります。
「泣き虫なハムスター」から始まったけれど
Xでは、
命がけでちいかわを擁護してる😭😭
— @IstarothTWT
と、ファンたちの反応そのものを楽しむ人まで現れていました。
「ハムスターのような生き物」と呼ばれれば、「名前はちいかわだ」と言いたくなる。
「泣き虫」とだけ言われれば、「でも弱虫じゃない」と付け加えたくなる。
ところが元の記事まで読むと、The Economistも最後に見ていたのは、その先でした。
怖がる。失敗する。泣く。
それでも仕事をして、ご飯を食べ、友達に助けてもらいながら暮らしていく。
「小さくて泣き虫な、ハムスターのような生き物」という副見出しだけではだいぶ雑に見えますが、本文を読むと、ちいかわの少し面倒なところまでちゃんと見ていたようです。
参考情報と翻訳元
- The Economist「Chiikawa, star of a Japanese blockbuster, appeals in anxious times」 — 今回のX投稿の元記事。2026年9月10日公開。映画のヒットと、不安の多い時代にちいかわが支持される理由を取り上げています。
- The Economist公式X投稿 — 今回紹介した反応の起点となった投稿。
- アニメ「ちいかわ」公式サイト「キャラクター」 — ちいかわの公式プロフィールを確認。
- ハワイ大学ウェストオアフ校「Jayson Chun Faculty Profile」 — ジェイソン・チュン氏の肩書きと専門分野を確認。
- Jayson M. Chun「Always Crying, Never Quitting: What Chiikawa Says About Being Young in Japan」 — ちいかわの仕事、不安、友情やラーメン店の場面について論じた一般向け論考。
- Sixth Tone「For Stressed Young Chinese, Chiikawa Toys Are Digital Ibuprofen」 — 中国での「デジタル・イブプロフェン」という表現や、上海のポップアップストアについて確認。
- MTR Corporation「CHIIKAWA DAYS in MTR」 — 香港での企画と、ちいかわ仕様ライトレールについて確認。
- ORICON NEWS「映画『ちいかわ』観客動員数1000万人突破」 — 2026年9月13日までの観客動員数と興行収入を確認。


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