日本はゴミ箱が少ないのに、なぜこんなにきれい? 海外掲示板の疑問を調べると“地下鉄サリン事件だけ”では説明できなかった

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(最終更新日:2026年9月17日)

植え込みの縁に、空き缶やカップ、袋がずらり。

海外掲示板Redditに「日本(ここではゴミ箱を見つけるのがとても難しい)」というタイトルで、そんな写真が投稿されました。

「日本は街がきれい」というイメージとはかなり違います。

ところが700件以上ついたコメントを追っていくと、話題は写真のゴミよりも、「そもそも日本にはなぜゴミ箱が少ないのか」という疑問へ移っていきました。そこで何度も登場したのが、1995年の地下鉄サリン事件です。

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「日本だって、夜は普通に汚れる」

最初から意見はかなり割れていました。

2012~2015年に日本にいたというユーザーは、当時見かけたゴミ箱はローソン前のリサイクルボックスくらいだったと振り返ったうえで、

日本だって汚れるよ。たいていかなり夜遅くで、清掃の人たちが来るまでだけど。

— u/ScuffedA7IVphotog

とコメントしています。

一方、日本在住だという別のユーザーからは、こんな声も。

ゴミを持っていること自体を忘れて、そのまま家まで持ち帰ってしまったことが何度あるか分からない。

— u/Freak_Out_Bazaar

写真の場所については、複数のユーザーが東京・新宿の歌舞伎町だと指摘していました。中には「ゴジラの建物のすぐ外」とかなり具体的に場所を挙げ、「午前4~5時ごろにはこのようになるが、通勤客が動き始める前には清掃される」とするコメントもあります。

これはあくまでRedditユーザーによる場所の特定ですが、少なくとも写真一枚をそのまま「日本の街の一般的な姿」と見るのも難しそうです。

実際、新宿区では現在も毎週水曜日、地元商店街や企業、ボランティア、区などが参加する「歌舞伎町クリーン作戦」が行われ、道路上のポイ捨てごみを回収しています。

街がきれいに見える背景には、そもそも散らからないことだけでなく、散らかったあとに片付けている人たちもいます。

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「ゴミ箱がない」は旅行者の思い込みではなかった

では、日本のゴミ箱は本当にそれほど見つけにくいのでしょうか。

少なくとも、訪日旅行者が「少ない」と感じて困っていることは、かなりはっきり数字に表れています。

観光庁が2025年11月18日から2026年1月13日にかけて、日本から出国する訪日外国人旅行者4,110人に行った調査では、旅行中に困ったことの1位が「ごみ箱の少なさ」で、17.2%でした。

前年の21.9%からは下がったものの、今回も困りごとの最多です。

前年の調査では、ゴミ箱の少なさで困った旅行者にその後どうしたかを尋ねたところ、都市部・地方部とも70%以上が「ごみを捨てることを諦め、持ち帰った」と答えていました。

Redditで「ゴミをバックパックに入れて持ち歩いた」といった体験談が出てくるのも不思議ではありません。

ただし、この調査が測っているのは、日本のゴミ箱の物理的な設置数を海外と比較したものではなく、訪日旅行者が旅行中に「少ない」と感じて困ったかどうかです。

それでも、「一部の旅行者がそう感じているだけの珍しい不満」というわけではなさそうです。

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「地下鉄サリン事件でゴミ箱が消えた」はどこまで本当?

そこで出てくるのが、今回のRedditでも複数のユーザーが挙げていた説明です。

「1995年の地下鉄サリン事件のあと、テロ対策でゴミ箱が減った」

これは、まったく根拠のない話ではありません。

地下鉄サリン事件後、公共交通機関では警戒が強化されました。その後も2001年の米同時多発テロや海外での列車爆破事件などを受け、日本でもさまざまな場所でゴミ箱の撤去や集約、中身が見える透明型への交換などがテロ対策として行われています。

国土交通省も2004年、世界各地で相次いだテロを受け、公共交通機関などの警戒を強化。バスターミナルや港湾、高速道路のサービスエリアなどでは、ゴミ箱の閉鎖・撤去・集約を対策の一つとして挙げています。

ただし、ここから話が少し変わってネット上で広まっている説明があります。

別のReddit投稿などでは、

「地下鉄サリン事件で犯人がサリンを公共のゴミ箱に隠したため、日本のゴミ箱が撤去された」

という説明まで見られます。

しかし、事件そのものではサリンはゴミ箱に仕掛けられていません。

公安調査庁や警察庁の記録によると、実行犯はサリンの入った袋を新聞紙で包んで地下鉄車内へ持ち込み、先端を尖らせた傘で袋を突き刺して漏出させています。

つまり、

「地下鉄サリン事件をきっかけに公共交通の警戒が強まった」

ことと、

「犯人がサリンをゴミ箱に仕掛けたので、日本中からゴミ箱が消えた」

という説明は別です。

前者には実際の安全対策とのつながりがありますが、後者は事件の犯行方法そのものが違っています。

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しかも、その後に駅へゴミ箱は設置されている

もう一つ、「1995年にゴミ箱が撤去され、そのまま現在まで戻らなかった」というイメージでは説明しにくい事実があります。

少なくともその後、駅にはゴミ箱が設置されています。

JR東日本は2004年、テロ対策として中身を確認しやすい透明ゴミ箱を導入すると発表しました。新幹線50駅に約800台、在来線約250駅に約1,500台を順次設置し、同時にゴミ箱の集約・再配置も行う計画でした。

東京メトロでも、防犯上の観点から中身の見えるゴミ箱の設置が進められ、2005年に設置を完了したと公式資料に記されています。

そして東京メトロが駅構内に設置していた一般のゴミ箱を全駅で撤去したのは、地下鉄サリン事件から27年後の2022年です。

東京メトロは理由を「駅構内におけるセキュリティ強化」と説明しています。

同じ2022年には、東京都交通局も「利用時の安全性向上」を理由に、都営地下鉄各駅などの改札口付近に設置していたゴミ箱を撤去しました。

ここまで見ると、日本のゴミ箱の少なさを「1995年の地下鉄サリン事件だけ」で説明するのは難しそうです。

事件を含むテロへの警戒は確かに背景の一つです。

ただ、その後に透明型のゴミ箱が設置され、さらに時代が進んで再び撤去された場所もあります。

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公園では、また別の理由でゴミ箱が消えている

さらにややこしいのが、駅と公園では事情が同じではないことです。

千葉県浦安市は2026年6月、市内の小規模公園や緑道にあるゴミ箱を順次撤去すると発表しました。

市が挙げているのは、ゴミ箱の老朽化と利用マナーです。撤去後に新たなゴミ箱を置かない理由についても、「家庭ごみなどの持ち込みを防止するため」と明記されています。

三重県鈴鹿市でも、公園のゴミ箱に家庭ごみなどが捨てられるという声を受け、自治会との協議で撤去した場所があると説明しています。

つまり、「国が一斉に公共ゴミ箱をなくした」という一つの政策で現在の状態になったわけではありません。

駅では安全対策。

公園では、家庭ごみの持ち込みや設備の老朽化、利用マナー。

そして場所によっては、さらに別の事情があります。

その分かりやすい例が奈良公園です。

奈良県によると、奈良公園では国の天然記念物「奈良のシカ」との共生を考え、昭和60年代、つまり1980年代後半に県が公的なゴミ箱を撤去しました。ポイ捨てごみをシカが誤って食べることへの対策も課題となっています。

ところが近年は、観光客の増加に伴うポイ捨てが新たな問題になりました。

そこで奈良県は2025年、約40年ぶりにスマートゴミ箱を使った実証実験を開始。設置前後で周辺のポイ捨て状況を調べたところ、ゴミが約10%減ったと県が報告しています。

「ゴミ箱を置かないほうがよい」のか、「置いたほうがポイ捨てが減る」のかも、場所の事情によって答えが変わるようです。

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では、なぜゴミ箱が少なくても街がきれいに見えるのか

ここまで調べても、「日本人は清潔好きだから」という一言で説明できる資料は見つかりませんでした。

今回確認した資料から見えてくるのは、もう少し地味な仕組みです。

観光庁の調査では、捨てる場所が見つからなかった訪日旅行者自身も、多くの場合はゴミを持ち歩いています。Redditでも、日本在住者から「いつの間にか家まで持って帰っていた」という声が出ていました。

一方で、今回の写真のようにポイ捨てが発生する場所もあり、歌舞伎町では現在も継続的な清掃活動が行われています。

さらに新宿区では2026年10月から、従来の飲料容器や吸い殻などに加え、弁当・菓子・カップ麺などの容器、ストロー、割り箸なども条例上のポイ捨て禁止対象に追加される予定です。

日本の街が比較的きれいに見える場面が多いとしても、それを「誰も捨てないから」と考えると、今回の写真とはうまく両立しません。

持ち帰る人がいる。

散らかった場所を清掃する人もいる。

今回確認した資料からは、少なくともこうした複数の行動や仕組みが関わっていることが分かります。

そして「日本のゴミ箱が少ないのは地下鉄サリン事件のせい」という有名な説明も、完全な間違いではありませんでした。

ただ、それだけでは説明できません。

1995年の事件後にもゴミ箱は設置され、その後の安全対策で再び撤去された駅がある一方、公園では家庭ごみやシカなど、まったく別の事情から撤去された例もあります。

一枚の散らかった写真から始まりましたが、調べてみると、「なぜ日本はきれいなのか」よりも、「なぜこれほど場所によってゴミ箱を置かない理由が違うのか」のほうが、意外に複雑な話でした。

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