なぜ海外で抹茶がここまで流行っている? SNS・健康志向・カフェ文化が重なった世界的ブーム

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(最終更新日:2026年9月30日)

「働き始めたころは、1日に1、2杯作るくらいだった。それが今では、どの注文にも抹茶が入っている」

2025年夏、スターバックスの従業員が集まるRedditコミュニティ「r/starbucksbaristas」に、そんな投稿がありました。

I hate making matchas
by u/BlindExperiment in starbucksbaristas

もちろん一人のバリスタの体験ですが、海外需要の強まりは公的資料からも確認できます。農林水産省によると、2025年の日本の緑茶輸出額は721億円で、前年から98.2%増加しました。これは抹茶だけではなく緑茶全体の輸出額ですが、農水省も増加の背景として「抹茶を含む粉末状茶」の需要拡大を挙げています。

では、なぜ数ある飲み物の中で、抹茶がここまで世界的なブームになったのでしょうか。

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抹茶人気はTikTokから突然始まったわけではない

まず押さえておきたいのは、抹茶をカフェの飲み物やお菓子として楽しむ流れ自体は、ここ1、2年で突然生まれたものではないという点です。

農林中金総合研究所によると、日本では1996年にハーゲンダッツが抹茶を使った「グリーンティー」を発売し、2006年にはスターバックス コーヒー ジャパンが「抹茶 ティー ラテ」を発売しました。茶道で飲むものだけでなく、お菓子やカフェのドリンクとして抹茶に触れる機会は、長い時間をかけて増えてきました。

抹茶愛好家が集まるRedditコミュニティ「r/Matcha」でも、「最近突然現れた飲み物ではない」という声がありました。

2006年ごろから人気だったよ。私はそのころからスターバックスで飲んでいた。

— u/Solid_Mixture9855

つまり近年起きたのは、「抹茶の発見」というより、それまで少しずつ広がってきたものが一気に加速した現象と見るほうが近そうです。

TikTokやInstagramと相性がよかった

その加速に大きく関わったと考えられているのが、SNSです。

農林中金総合研究所も、国外では健康志向に加えて「SNS映え」が抹茶ラテ人気の背景になっていると指摘しています。鮮やかな緑色は写真や短い動画で目立ちやすく、牛乳を注ぐ場面や抹茶を点てる様子も映像にしやすい飲み物です。

「なぜ抹茶がこんなに人気になったの?」というr/Matchaのスレッドでは、ある参加者が、米国の食品スーパー「Trader Joe’s」の商品や旅行先が突然バズる現象と重ねていました。

今どき何でも人気になる理由と同じだよ。SNS。

アルゴリズムで流れてくる短い動画がバズることで、まったく新しいレベルの注目が集まる。抹茶でも旅行先でも、コストコやTrader Joe’sのちょっとした商品でも、一本の動画がバズればいい。するとみんながその動画を真似して、数日で全体の露出が数億規模になることだってある。

需要が一夜にしてそこまで急増すれば、供給が追いつかなくなるのも当然だと思う。

それに、おいしいのも大きい。新しく試した人がハマりやすいから。

— u/SpaceLion12

これは投稿者自身の見方であり、「SNSだけが原因」と確認されたわけではありません。

ただ、すでにカフェなどで飲める状態まで普及していた抹茶を、短期間に大勢の人の目に触れさせる役割をSNSが果たした、という見方はほかの資料とも重なります。

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「コーヒーの代わり」として飲み始めた人も

スレッドで何度も出てきたのが、「コーヒーから抹茶へ」という話でした。

ある参加者は、味以上に飲んだときの感覚がきっかけだったといいます。

自分の場合、理由のほぼ80%はこれ。コーヒーは大好きで、産地や焙煎、精製方法まで異常なくらい掘り下げていた時期があった。

でも年齢とともに、コーヒーがエネルギー源というより、そわそわした感じや不安を起こす飲み物になってきた。仕事などほかのストレスもあって、飲みすぎると胃酸の逆流も出るようになった。

抹茶では、そういう問題がほとんどない。胃にも穏やかに感じるし、エネルギーの上がり方が長く続く。それに産地や風味の違いについて「こだわる」楽しみもある。

— u/ConnectionOk3348

これはあくまで本人の体験です。

抹茶にはカフェインのほか、茶に含まれるアミノ酸の一種「L-テアニン」が含まれています。2025年に発表された研究レビューでは、参加者を無作為にグループ分けして効果を比べる「ランダム化比較試験」50件を分析。テアニンとカフェインの組み合わせが、一部の注意力や気分に小~中程度の影響を示す可能性が報告されました。

ただし結果には不確実性があり、実際のお茶を飲む条件での研究もまだ少ないとされています。したがって、「抹茶なら必ずコーヒーより穏やかで、カフェインの急上昇や反動がない」とまでは確認されていません。

それでも、「コーヒーとは違うカフェイン飲料」というイメージが、新しい入口の一つになっていることはRedditのコメントからよく伝わってきます。

健康系にも、甘党にも、流行好きにも入り口がある

もう一つ大きいのが、抹茶の使い道の広さです。

茶筅(ちゃせん、抹茶を点てる竹製の道具)で点ててそのまま飲むこともできれば、牛乳を加えてラテにしたり、イチゴやバニラ、ブラウンシュガーを合わせたり、アイスクリームや菓子にしたりもできます。

r/Matchaでは、この幅広さそのものが人気の理由ではないかというコメントがありました。

どんな食べ物の流行にも似ていると思う。それに抹茶はものすごく応用が利く。

健康を気にする人にはその健康面で、流行を追う人にはTikTokで人気だから、美しいものが好きな人には見た目で、カフェインを求める人にはエネルギー源として、甘党にはラテとして刺さる。

さらに、エナジードリンクや炭酸飲料、コーヒーより少し健康的に感じられる代わりの飲み物を探している一般の人にも合う。

しかも、今の人気爆発より前から飲んでいた人たちと、その人たちなりの理由までいるんだからね。

— u/clio44

実際、冒頭のスターバックス店員が嘆いていたのも、単純な抹茶ではなく、バニラやブラウンシュガー、ストロベリー系のコールドフォーム(冷たい泡状のミルクトッピング)などを加えた複雑な注文でした。

苦みや青々しい風味が苦手な人でも、ミルクや甘味、果物と組み合わせれば入りやすい。その一方で、気に入った人はストレートの抹茶や産地・銘柄の違いへ進むこともできます。

この入口の多さは、現在の抹茶人気を支える強みの一つと言えそうです。

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「抹茶ラテ」から、産地や銘柄を楽しむ趣味へ

今回確認したRedditスレッドでは、最初はカフェの甘い抹茶ラテを飲んでいた人が、自宅で茶筅を使い始め、銘柄や産地を調べ、より高価な抹茶にも興味を広げる様子が見られました。

その中で繰り返し登場するのが、「ceremonial grade(セレモニアルグレード)」という言葉です。

ただし、この言葉には少し注意が必要です。一保堂茶舗は「ceremonial grade」について、日本では使われておらず、海外で抹茶を販売するために作られた曖昧な用語だと説明しています。つまり、日本に統一された「セレモニアルグレード」という公的な等級制度があるわけではありません。

ラテから入った人が、産地や銘柄を調べ、薄茶(一般的な濃さで点てる抹茶)などの飲み方や、より高品質な抹茶そのものへ関心を広げる様子も、今回のスレッドでは確認できます。

一方、日本茶全体の輸出額や商談の動きを見ると、海外で抹茶を含む粉末状茶への需要が強まっていることも別の事実として確認できます。

海外の抹茶ブームは一つの理由では説明できない

抹茶はTikTokによってゼロから流行した飲み物ではありません。

長年かけてカフェや菓子を通じて知られてきたところへ、SNSで映える鮮やかな色、健康的だというイメージ、コーヒー以外のカフェイン飲料を求める人、甘いラテへのアレンジのしやすさ、そして産地や銘柄を掘り下げられる趣味性が重なりました。

2026年1月に日本貿易振興機構(ジェトロ)が大阪で開いた輸出商談会でも、参加した輸出商社21社のうち8社が抹茶を関心商材として選び、抹茶関連で25件の商談が行われました。一方でジェトロは、もはや「抹茶なら何でも売れる」という段階ではなく、買い手の商品選びが厳しくなっているとも報告しています。

一時的な流行の部分が今後どうなるかはまだ分かりません。それでも、違う目的を持つ人たちがそれぞれ自分なりの入口を見つけられることが、現在の世界的な抹茶人気を支えているようです。

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