海外「新鮮な空気は別物」ドイツで真冬でも窓を全開にする「Stoßlüften」とは?

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「エアコンがあるのに、どうして窓を開けるんだろう?」

ドイツのオフィスで働いていた人が、海外掲示板Redditにこんな疑問を投稿しました。

Why do my german colleagues keep opening the windows in the office when we have air conditioning and it’s winter?
by in AskAGerman

季節は冬。それなのにドイツ人の同僚たちは、ときどき窓を開けて外の冷たい空気を入れてくるそうです。

しかもオフィスにはエアコンがあります。

投稿者には少し理解しにくい行動だったようですが、コメント欄を見ると、この行為にはちゃんと名前がありました。

Stoßlüften(シュトースリュフテン)。

窓を少しだけ開けっぱなしにするのではなく、短時間だけ大きく開けて、一気に室内の空気を入れ替える換気方法です。

そして、さっそく換気をめぐる冗談も始まります。

「Lüften(換気)はドイツ人にとって不可欠なんだ。生まれたときから身についてる。」
— u/Important-Tie-1055

その返信には、

「そして一生かけて、その習慣を磨いていく。」
— u/GuKoBoat

さらに別の人は、ただ一言。

「STOẞLÜFTEN!」
— u/smon696

少なくともこのスレッドでは、「ドイツと換気」は定番のネタとして共有されているようです。

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窓を少し開けるのではなく、数分だけ全開にする

Stoßlüftenは、ドイツ語のStoßとlüftenを組み合わせた言葉です。

日本語にそのまま対応する決まった呼び方はありませんが、窓を全開にして短時間で空気を入れ替える「一気換気」と考えると分かりやすいでしょう。

そしてこれは、Redditだけで語られている生活習慣ではありません。

ドイツ環境庁は、寒い時期の換気について、窓を傾けた状態で長時間開けておくのではなく、窓を大きく開けて短時間で換気するStoßlüftenを勧めています。

冬場なら、外気温や風の状態にもよりますが、一回あたり約5分ほどが目安とされています。短時間で室内の空気を交換し、壁などの室内表面を必要以上に冷やさないことが狙いです。

さらに、ドイツの連邦労働安全衛生研究所(BAuA)が案内する職場の換気の目安を見ると、かなり具体的です。

窓による自然換気を行う場合、執務室ではおよそ60分ごと、人数が多い会議室では20分ごとの換気が推奨されています。冬のStoßlüftenは約3分が目安とされており、室内のCO₂濃度を1000ppm(0.1%)以下に保つことが一つの目安になっています。

真冬のオフィスで誰かが突然立ち上がって窓を全開にする。

一見すると個人的な習慣にも見えますが、ドイツでは公的な職場の換気の目安とも重なる行動だったわけです。

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でも、エアコンがあるなら換気はいらないのでは?

ここで最初の投稿者の疑問に戻ります。

オフィスにはエアコンがあります。

それなら、わざわざ外の冷たい空気を入れる必要はないのでしょうか。

コメント欄では、

「エアコンは新鮮な空気じゃない!」
— u/pleasant-emerald-906

という声がありました。

別の人も、

「エアコンは同じ空気を循環させているだけ。でも欲しいのは、もっと酸素の多い新鮮な空気なんだ。」
— u/Kirmes1(ヴュルテンベルク)

と答えています。

ただし、この説明はそのまま正しいわけではありません。

「エアコン」と呼ばれる機械のすべてが、単に室内の空気を循環させているわけではなく、外気を取り込む機能を持つ設備もあります。

反対に、室温を調整していても、外の空気をほとんど取り込まない設備もあります。

アメリカ環境保護庁(EPA)も、外気を取り入れる機能を持たないエアコンが存在する一方、外気取入口を備えた設備もあると説明しています。室内の温度を整えることと、外気によって換気することは必ずしも同じではありません。

そのため、このReddit投稿のオフィスについても、「エアコンがあるから窓を開ける必要はない」とまでは判断できません。

きちんと外気を取り込む機械換気設備が稼働しているなら、窓を開けなくても必要な換気量を確保できる場合があります。一方、そうした設備がなければ、窓による換気が必要になることがあります。

ドイツ連邦労働社会省も、室内の換気が機械式の換気設備によって行われていない場合には、窓を大きく開ける短時間のStoßlüftenを勧めています。

「エアコンがあるのに窓を開ける」という行動そのものが、必ずしも矛盾しているわけではないのです。

「酸素がなくなってきた」は本当?

スレッドでは、「人が何人もいると酸素が足りなくなる」「新鮮な空気の方が頭が働く」という話も出ています。

たしかに、長時間閉め切った部屋にいると「空気が悪い」と感じることがあります。

ただ、「酸素を使い果たした」という説明は正確ではありません。

ドイツ環境庁のサイトに掲載された2024年の研究発表では、人が多い室内で感じる空気の悪化について、20~21%程度の範囲で変化する酸素濃度を人が感覚的に区別しているわけではなく、CO₂や呼気による湿気などの蓄積が関係すると説明されています。

この発表はドイツ環境庁の専門会議で紹介されたもので、内容そのものは発表者による研究報告です。

一方、CO₂についてはドイツ環境庁自身の衛生上の指針があり、1000ppm未満は「衛生上問題なし」、1000~2000ppmは「衛生上注意」、2000ppmを超えると「衛生上許容できない」とされています。

Redditの、

「新鮮な空気が必要なんだ。そうしないと臭くなるし、暖かくなりすぎるし、CO₂も増える。」
— u/MulberryDeep(シュレースヴィヒ=ホルシュタイン)

というコメントの方が、「酸素不足」だけで説明するより実際の状況に近そうです。

気密性の高い家ほど、意識して換気が必要?

もう一つ、コメント欄で何度も出てきたのが住宅の構造です。

「ドイツ人は換気しなきゃぁぁぁぁぁ。窓の性能が良すぎて、しかも空気が湿っているからそうなるんだ。気密性が高すぎて、空気がまったく入れ替わらない。」
— u/arderoma

最後の「まったく入れ替わらない」はさすがに言いすぎですが、「建物の気密性が高くなるほど自然な空気交換が減る」という部分には根拠があります。

ドイツ環境庁によると、省エネルギー性能を高めた現代の建物では、古い隙間の多い建物と比べて、窓や扉を閉めた状態での自然な空気交換が少なくなっています。

そのため、エネルギー効率の高い気密性の高い建物では、窓を使った積極的な換気か、機械式の換気設備が必要になります。

これも少し皮肉な話です。

暖房した空気を逃がさないために、住宅の断熱性や気密性を高める。すると今度は、以前のように隙間から自然に空気が入れ替わりにくくなるため、意識して換気する必要が出てきます。

そこで「窓を少しだけ長時間開ける」のではなく、「短時間だけ一気に入れ替える」というStoßlüftenが合理的になります。

Redditでも、暖房エネルギーを節約するため住宅の断熱性が高くなった結果、新鮮な空気を取り入れるだけでなく、カビを防ぐためにも意識的な換気が必要になる、という意見が出ていました。

そのコメントではアメリカの住宅との比較もされていましたが、住宅事情を国全体で単純に比べることはできないため、ここではドイツの住宅について確認できる部分だけを見ておきます。

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なぜ換気しないとカビにつながるのか

換気でもう一つ重要なのが、CO₂ではなく湿気です。

人が呼吸するだけでも室内には水分が放出されますし、住宅なら料理、シャワー、洗濯物などでも湿度が上がります。

冬は壁や窓などの表面温度が低いため、湿度が高い状態が続くと冷たい場所で結露し、カビが発生しやすくなります。

ドイツ環境庁は、冬場に窓を大きく開けるStoßlüftenによって余分な湿気を外へ出すことを勧めています。逆に、窓を少しだけ傾けて長時間開け続ける方法は、周囲の壁などを冷やし、熱の損失も増えるため推奨していません。

冬なのに窓を開けるというより、冬だからこそ短時間で換気する、という考え方です。

コロナ禍で「Stoßlüften」はさらに存在感を増した

スレッドでは、Stoßlüftenと新型コロナについても話が出ています。

「4. 彼らの考えでは、換気の方がエアコンより良いか、エアコンだけでは足りないから換気する。

  1. コロナで、Stoßlüftenは実際に感染リスクを下げるのに有効だと学んだ。」
    — u/annieselkie

新型コロナの流行時、ドイツでは学校や職場での換気が改めて強く意識されました。

ドイツ環境庁は、窓を大きく開けるStoßlüftenや、向かい合った窓を開けるQuerlüften(通風による換気)が、室内のエアロゾル濃度を下げる手段になると案内しています。ドイツ連邦労働社会省も、職場での感染対策として定期的な換気を推奨しています。

もちろん、ドイツで新型コロナの流行をきっかけに窓を開け始めたわけではありません。

それ以前からあった換気方法が、感染症対策によって改めて注目された、と見る方が近そうです。

「ドイツと換気」は、現地でも定番ネタになっている

ここまで見ると、Stoßlüftenには実用的な理由があります。

それでも、なぜ「ドイツらしい習慣」としてこれほど語られるのでしょうか。

ドイツ文化を海外へ紹介しているゲーテ・インスティトゥートも、2024年の記事でStoßlüftenを冗談交じりに「最もドイツ的なオリンピック競技」と紹介しています。

しかも「マイナス10度の冬でも」とまで書かれています。

Redditの反応も似ています。

「Luft(空気)は生き方そのもの。」
— u/1moretime2cry

実際には、窓を開けて換気するのはもちろんドイツだけの習慣ではありません。

機械換気が中心の建物もありますし、ドイツ国内でも全員が同じように換気するわけではありません。スレッドにも「みんなではない」という反応があります。

それでもドイツでは、住宅の気密性やカビ対策、室内のCO₂、職場の換気の目安などが重なり、「窓を大きく開けて短時間で空気を入れ替える」という方法が日常生活の中でもよく知られています。

最初の投稿者からすれば、「エアコンがあるのに真冬に窓を開ける」という不可解な光景でした。

しかし調べてみると、重要なのは「寒いかどうか」よりも、「室温を調整すること」と「室内の空気を入れ替えること」は別だという点でした。

とはいえ、冬のオフィスで突然「Stoßlüften!」と言われて窓を全開にされたら、理屈が分かっていても寒いものは寒そうです。

(最終更新日:2026年9月10日)

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