サックスはベルギー生まれ? 各国の「もっと知られていい発明・功績」を調べてみた

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(最終更新日:2026年9月26日)

電球、サックス、ボールペン。普段使ったり目にしたりしていても、「どこの国で生まれたのか」までは意外と知らないものがあります。

世界各国の人に質問するRedditコミュニティ「r/AskTheWorld」で、「あなたの国はあまり知られていないけれど、もっと知られるべきだと思うものは?」という質問が投稿されました。投稿主が挙げたのは、イングランドと電球の関係です。そこからコメント欄には、トイレから楽器、映画、医学まで、さまざまな答えが集まっていました。

ただし、「世界初」「○○が発明した」という話は、調べてみると一人だけの功績とは言い切れないものもあります。今回は、特に気になったものを資料と照らし合わせながら見ていきます。

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電球はエジソンより先にイングランドで発明されていた?

まずは、このスレッドのきっかけになった投稿です。

イングランドなら、電球の発明かな。実はトーマス・エジソンより前に、イングランドの物理学者サー・ジョゼフ・スワンが発明していた。

— u/The-Mad-Hist0rian(イギリス)

これに対して、デンマークの参加者からはこんなコメントもありました。

でもエジソンって、ある意味では「技術ツリーがある地点まで進むと、特定の発明が必然的に生まれる」ということを示す、とても良い歴史上の例だと思う。

電球の発明者として、少なくとも部分的な功績を認められる人は十数人いるからね。

— u/as13477(デンマーク)

ここでいう「技術ツリー」は、ゲームなどで使われる、技術が段階的に発展していく流れを木の枝のように表したものです。

この後者の見方は、実際の発明史にもかなり近そうです。

英国のサイエンス・ミュージアム・グループは、実用的な白熱電球について、ジョゼフ・スワンと米国のトーマス・エジソンが1870年代後半にそれぞれ独立して開発したと説明しています。スワンは1878年に白熱電球を実演し、エジソンも1879年に初期の実用的な電球を製作しました。

つまり、「エジソンがゼロから一人で電球を発明した」という理解も、「スワン一人こそ本当の発明者」という理解も、少し単純化しすぎています。

その後、両者の会社は1883年に合併し、通称「エジスワン社」となりました。

身近な電球ひとつでも、「最初の一人」を決めようとすると、思った以上に長い話になるようです。

スコットランド人が生んだ、今のトイレにも残る「S字」

スコットランドからは、少し意外なものが挙がりました。

うちの国とトイレとの、かなり馬鹿げた歴史かな。

排水設備のある最古級の屋内トイレは、紀元前3000年ごろに人が暮らしていたとされるオークニー諸島の新石器時代の村、スカラ・ブレイで見つかっている。

それだけじゃなく、スコットランド人のアレクサンダー・カミングは、下水がトイレへ逆流するのを防ぐS字型の曲がりを備えた近代的な水洗トイレを発明し、初めて特許を取得した。トーマス・クラッパーが近代的な水洗トイレを発明したとよく間違って言われるけど、クラッパーがやったのはカミングの設計に複数の改良や追加を施すことだった。

— u/ghostofkilgore(スコットランド)

このコメントは、後半の「S字型」の部分はかなりしっかり裏付けがあります。

英国国立公文書館によると、時計職人アレクサンダー・カミングは1775年、水洗式便器について英国で最初の特許を取得しました。その重要な工夫が、排水管の途中に水を残して下水からの悪臭を遮る「S字型トラップ」です。形を変えながら、同じ原理は現在のトイレや排水設備にも使われています。

一方で、スコットランド北部のオークニー諸島にある約5000年前の集落スカラ・ブレイについては、少し注意が必要です。

遺跡に排水設備が存在したこと自体は確認されていますが、一部の区画を「トイレ」とみなす解釈については考古学上の議論があります。スコットランドの考古学研究資料でも、かつて「便所」と解釈された場所について、後の研究者がその説を退けたことが紹介されています。

そのため、「世界最古の屋内トイレがスコットランドにあった」とまで断定するより、「新石器時代のスカラ・ブレイには高度な排水設備があった」としておくのが安全でしょう。

それでも、毎日目にする排水管の曲がりに18世紀のスコットランド人の工夫が残っている、という話だけでも十分に面白いところです。

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サックスはベルギー人アドルフ・サックスの発明

ベルギーからは、実に分かりやすい答えがありました。

アドルフ・サックスのサクソフォン。

— u/stoinkb(ベルギー)

これは名前そのままです。

サクソフォン、つまりサックスを考案したアドルフ・サックスは、現在のベルギーにあるディナン出身の楽器製作者でした。

ニューヨークのメトロポリタン美術館によると、サックスは1846年にこの楽器の特許を取得しています。当初は軍楽隊やオーケストラで使う楽器として構想されました。

現在ではジャズのイメージが強いサックスですが、ジャズやポップスを通じて世界的な人気を得たのは、発明よりずっと後のことです。

「サックス」という名前を毎回口にしているのに、そのまま発明者の名字だったことは案外意識しないものですね。

世界初の人から人への心臓移植は南アフリカ

続いて南アフリカから。

世界初の成功した心臓移植。

— u/sammywammy53b(南アフリカ)

1967年12月3日、南アフリカ・ケープタウンのグルート・スキュール病院で、外科医クリスチャン・バーナードが率いるチームが、世界初の人から人への心臓移植を行いました。南アフリカ政府も「世界初の成功した人間の心臓移植」として記録しています。

移植を受けたルイス・ワシュカンスキーは手術後18日間生存しましたが、移植した心臓への拒絶反応を抑えるための免疫抑制治療を受ける中で肺炎を発症し、亡くなっています。当時の医療チームは肺の異常を拒絶反応によるものと考えて免疫抑制治療を強めましたが、実際には肺炎で、結果として感染症を悪化させることになりました。

現在から見ると18日という期間は短く感じられますが、当時は「人間の心臓を別の人へ移植し、機能させる」ということ自体が医学史上の大きな一歩でした。

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世界初とされる長編アニメ映画はアルゼンチンにあった

アルゼンチンの参加者からは、一度にかなりの数の話が挙がっていました。

その中でも特に意外なのが、アニメーション映画です。

世界初の長編アニメーション映画『El Apóstol』は、実は1917年にキリーノ・クリスティアーニによってアルゼンチンで制作・公開された。ディズニーのミッキーマウスや、ワーナー・ブラザースのバッグス・バニーよりも前だよ。

近代的なボールペンも、ハンガリーから移住してきたラースロー・ビーローによってアルゼンチンで発明され、特許が取得された。だからアルゼンチンでは、ほかのスペイン語圏とは違ってボールペンを「birome」と呼ぶ。

— u/Lissandra_Freljord

まず『El Apóstol』については、アルゼンチン政府が1917年11月9日に公開された「史上初の長編アニメーション映画」としています。英国映画協会(BFI)も、1917年の『El Apóstol』を最初の長編アニメーション映画として紹介しています。

作品は政治風刺を題材にしていましたが、現在はフィルムが残っていません。そのため、ここでは「世界初とされる」としておくのがよさそうです。

ディズニーの『白雪姫』が公開された1937年より20年も前の話です。

一方、ボールペンについては、コメントより少し複雑です。

ハンガリー出身のラースロー・ビーローは、アルゼンチンへ移住する前の1938年、すでにハンガリーでボールペンの特許を取得していました。その後アルゼンチンへ渡り、開発を続けています。

アルゼンチン国立図書館によると、1943年6月10日にはブエノスアイレスで「birome(ビロメ)」が特許登録され、生産が始まりました。この名称は、ビーローと共同事業者メイネの姓を組み合わせたものです。

米国機械学会(ASME)の資料でも、ビーローのアイデアは1943年ごろに実用的な形へ到達し、1944年にはアルゼンチンで販売が始まったとされています。一方、その後ボールペンを世界的に普及させた企業としては、フランスのBICの役割が大きかったとしています。

ですから「ボールペンそのものがアルゼンチンでゼロから発明された」というより、「ビーローが欧州で始めた開発をアルゼンチンでさらに改良し、実用化・製品化へつなげた」と考えるほうが実態に近そうです。

「世界初の成功したワクチン」とされるジェンナーの天然痘ワクチン

イングランドからは、もう一つ医学史に残るものが挙がっています。

イングランド人がワクチンを発明したことを、知らない人が多いのにはいつも驚く。

エドワード・ジェンナーが1796年に天然痘ワクチンを作った。非常に重要な仕事をしたルイ・パスツールは、それより数十年後だ。

— u/WorcsBloke(イングランド)

ただし、天然痘を予防しようとする試みそのものは、ジェンナーよりもはるかに古くからありました。

世界保健機関(WHO)によると、天然痘の病変から採った物質を健康な人へ接種する「人痘接種」は、少なくとも15世紀には世界のさまざまな地域で行われていました。また英国でも、ジェンナーより前の1774年にベンジャミン・ジェスティが牛痘を使った予防を試しています。

そのうえでWHOは、イングランドの医師エドワード・ジェンナーが1796年に行った方法を「世界初の成功したワクチン」と位置づけています。

ジェンナーは、牛痘にかかった乳搾り女性サラ・ネルメスから採取した材料を8歳の少年ジェームズ・フィップスに接種し、その後、天然痘への抵抗性を確認しました。研究結果は1798年に発表されています。

フランスの細菌学者ルイ・パスツールによるワクチン研究は、それより後の19世紀後半のことです。

人痘接種などの長い前史があったうえで、より危険性の低い牛痘を利用したジェンナーの方法が、現在のワクチンへとつながる大きな転換点になりました。

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「誰の発明?」をたどると、国境をまたぐ話も多かった

今回のスレッドでは、自国の知られざる功績として数多くの発明や技術が挙げられていました。

調べてみると、サックスやカミングのS字型トラップのように比較的すっきり確認できるものがある一方、電球やボールペンのように、複数の国や発明家による改良の積み重ねだったものもあります。

「どこの国が発明したのか」を一つに決めるより、その道具が今の形になるまでをたどってみると、普段何気なく使っているものの見え方も少し変わってきますね。

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