海外「なぜ西洋では日本のトイレが普及しない?」調べると、少し事情が違っていた

0コメント
世界の話題
このページは広告が含まれています。

(最終更新日:2026年9月14日)

日本のホテルや家庭で温水洗浄便座に慣れてから、海外の国や施設でトイレに入ると、「あれ、ボタンがない」と気づくことがあります。

海外掲示板Redditの、人には聞きづらい疑問を投稿するコミュニティ「r/TooAfraidToAsk」でも、こんな質問が投稿されていました。

Why haven’t the west adopted Japanese toilets?
by u/Wide_Language4620 in TooAfraidToAsk

日本のトイレのほうが優れているという点では、みんな意見が一致しているように見える。なのに、なぜ西洋では採用されていないの?

ーu/Wide_Language4620

ところがコメントを追っていくと、「価格が高いから」だけでは説明できない話が出てきます。

そもそも、「西洋では採用されていない」という前提自体を疑う人もいました。

広告下に海外の反応が続いています
広告下に海外の反応が続いています

そもそも、使ったことがない

最初に目についたのは、こんな回答です。

両方を経験した人なら意見は一致するかもしれない。でも大多数の人は両方を経験したことがなく、自分の国で一般的なものしか知らない。

今まで使ってきたものに不満がなければ、そのまま残り続ける。

ーu/buginarugsnug

「より良いものを知っているのに変えない」のではなく、そもそも比較する機会がなかったのではないか、という見方です。

別の人は、質問の前提をもっとはっきり否定していました。

最初の「みんな」という前提が間違っている。それは単純に事実じゃない。

大多数、あるいはかなりの人が日本のトイレのほうが優れていると思っていない、もしくは今のトイレに特に問題を感じていないなら、状況はそのままだ。

問題がないと思っているなら、解決策を探したりはしない。

ーu/CoffeeHQ

実際、「使ってみたけど嫌いだった」という短い回答もあります。

使ってみたけど、嫌いだった。

ーu/throwtheamiibosaway

それに対して、「水圧や温度を何度か試せば合う設定が見つかる」と勧める人もいました。好みまで含めれば、「一度使えば誰でも戻れなくなる」とまでは言えそうにありません。

広告下に記事が続いています
広告下に海外の反応が続いています

ところで「日本のトイレ」って、何を指している?

もう一つ、このスレッドでは妙なすれ違いが何度も起きています。

「日本のトイレ」って何? ビデ付きのトイレのことじゃないの?

ーu/atunasushi

別の人は、

ビデのことなら、日本だけのものじゃないよ。

ーu/Truth_and_nothingbut

と指摘しました。

さらに、和式便器のことだと思っていた人までいます。

投稿者本人は後のやり取りで、和式便器のことではなく、「紙で拭くこと」と「ビデで洗うこと」の比較をしていると説明しています。また、ヨーロッパの独立型ビデではなく、ビデ機能を組み込んだトイレを念頭に置いていたことも分かります。

ここは少し言葉を整理しておいたほうがよさそうです。

日本では温水洗浄便座をまとめて「ウォシュレット」と呼ぶことがありますが、ウォシュレットはTOTOの商品名であり、登録商標です。製品の種類としては「温水洗浄便座」と呼ばれます。

そして、水を使って洗うトイレ文化そのものは日本だけのものではありません。

スレッドでも、

イタリアでは各家庭に独立したビデがあるし、トイレットペーパーも使うよ。

ーu/cecex88

フィンランドでは、ほとんどのトイレにビデシャワーがある。

ーu/BestFoxEver

という書き込みがありました。

もちろん、これは各国の参加者による実感ベースの書き込みであり、統計資料ではありません。

ただ、少なくとも今回のコメント欄を見るだけでも、「西洋=紙だけ、日本=水で洗う」という単純な分け方では話が合わなくなってきます。

日本では、どれくらい当たり前なのか

では、日本では温水洗浄便座はどのくらい広がっているのでしょうか。

内閣府の2025年3月末時点の消費動向調査では、二人以上の世帯における温水洗浄便座の普及率は82.5%でした。

一方、米国でTOTOがウォシュレットを売り始めたのは意外と昔で、1986年です。

さらに最近のTOTOの販売実績を見ると、米州で販売台数が伸びていることも確認できます。

TOTOによると、米州でのウォシュレット販売台数は2018年度から2023年度までの5年間で年平均約25%伸びました。2026年2月の発表では、海外向けウォシュレット出荷台数の40%以上を米州が占めています。

ここで注意したいのは、この数字が米国や米州における「普及率」ではないことです。

分かるのは、TOTOのウォシュレット販売が米州で伸びていることと、TOTOの海外向け出荷の中で米州が大きな割合を占めていることです。米国の何%の家庭に温水洗浄便座があるのか、他社製品まで含めてどこまで広がっているのかまでは、この資料からは分かりません。

少なくとも、「西洋では採用されていない」と一括りにはできなさそうです。

ここからは、西洋全体を一つにまとめるのではなく、設備や販売について比較的具体的な資料を確認できる米国を中心に見ていきます。

便器の近くに電源がない

普及を考えるうえで、Redditで設備面のハードルとして挙がっていたのが電源です。

アメリカの多くのバスルームには、ああいうトイレを使うためのコンセントや配線がない。

ーu/RoarOfTheWorlds

別の人も、

自分にとって一番大きな理由は、トイレの近くに電源がないことかな(笑)。

ーu/PM_me_rad_things

と書いています。

実際、TOTO USAの電動温水洗浄便座も120Vの電源を必要とします。

一方、米国の住宅では、浴室に必要なコンセントは以前から洗面台の近くを中心に規定されてきました。つまり、便器のすぐ横に電源があることを前提にした造りとは限りません。

既存の浴室に電動便座を後から取り付けようとすれば、製品を買うだけではなく、場合によっては電源工事も必要になります。

少し意外なのは、電気設備の規程にも変化が出ていることです。

2023年版のNEC(米国で広く使われる電気設備の標準規程)では、一定の条件のもとで、電子式トイレやビデ便座のためのコンセントを設置できる例外が盛り込まれました。NECは全米一律の法律ではなく、地域によって採用状況が異なります。

もちろん、電源設備だけで「アメリカで温水洗浄便座が広がらなかった理由」を説明することはできません。

ただ、Redditで出ていた「コンセントがない」という話を調べてみると、単に製品の価格や好みだけではなく、そもそもの住宅設備にも違いがあることが見えてきます。

広告下に記事が続いています
広告下に海外の反応が続いています

数十ドルのビデと高価な一体型トイレが同じ話に

価格についても、コメント欄では話が噛み合っていません。

価格だね。暖房や乾燥機能付きなら500ドルくらい。何も付いていないものでも200ドルくらいかな。

一体型なら2,000~5,000ドルくらいだと思う。

ーu/rh832

すると、すぐに反論がありました。

便器に付ける安いビデなら30ドルくらいで買えるよ。自分も使ってた。

ーu/fearain

どうもここでも、同じ「ビデ」「日本式トイレ」という言葉で別のものを話しているようです。

水を噴射するだけの非電動の後付け器具と、温水・暖房便座・乾燥などを備えた電動便座、さらに便器そのものと機能が一体になった製品では、価格も必要な設備も違います。

「ビデなら安い」という話と、「日本で見かけるような高機能な製品は高い」という話は、両立します。

さらに、賃貸住宅では別の問題もありました。

大家が、どうしても必要というわけでもないのに浴室を改修してくれるとは思えないし、その分家賃が上がるのも嫌だ。

トイレットペーパーと湿ったワイプを、流さず正しく捨てれば十分用は足りる。持ち家なら好きに変えればいいけど、変えたくてもできない人も多い。

ーu/CreativeAdeptness477

別の人も、

家に住んでいる人が、その家の所有者とは限らない。トイレを勝手に替えることはできない。

自分も欲しいけど、持ち家じゃないから許可を取らないといけない。

ーu/xError404xx

と書いています。

価格だけでなく、電源、工事、住宅の所有形態まで含めると、「便利なら買えばいい」というほど単純でもなさそうです。

調べていたら、話が太平洋を一周した

ここまで調べて、少し意外だったことがあります。

「日本で発達した温水洗浄便座を、なぜ米国ではあまり見かけないのか」と考えていましたが、少なくともTOTOのウォシュレットの歴史をたどると、出発点の一つは米国にありました。

TOTOはウォシュレットを発売する16年前の1964年、米国のアメリカン・ビデ社が製造していた「ウォッシュエアシート」という温水洗浄便座の輸入販売を始めています。

TOTOによると、これは痔などで紙を使いにくい人を想定した医療用途の製品で、当時は温水の温度が安定しないなどの課題もありました。

1969年には暖房便座機能を加えて国産化し、1978年に自社開発を開始。1980年に初代ウォシュレットを発売します。

そして1986年、ウォシュレットは米国で販売されることになりました。

TOTOの系譜だけを見れば、米国にあった温水洗浄便座が日本へ渡り、日本で家庭向けの商品として発展し、今度は「日本のトイレ」として知られる製品になって米国へ戻っていったことになります。

そう考えると、「なぜ西洋は日本のトイレを採用しないのか」という最初の問いも、少し違って見えてきます。

水で洗う文化は日本だけにあるものではありませんし、米国でもTOTOのウォシュレット販売は伸びています。ただ、日本では二人以上の世帯で82.5%という普及率が確認できる一方、米国について同じ条件で比較できる世帯普及率は、今回確認した資料にはありませんでした。

そして、米国では既存の浴室に導入しようとすると、製品によっては便器の近くに電源が必要になり、賃貸住宅では設備を自由に変えられないこともあります。一方で、そうした条件が米国全体でどの程度普及を妨げてきたのかまでは、今回の資料からは判断できません。

トイレそのものは小さな設備ですが、「なぜ広がるのか」を追っていくと、便座の性能だけではなく、その国で既に使われている設備や習慣まで見ていく必要がありそうです。

この記事に関連するおすすめ書籍

amazon.co.jp
マンガでカンタン!行動経済学は7日間でわかります。
¥1,650円 税込(2026年9月14日時点)
Amazon.co.jpで見る

『マンガでカンタン!行動経済学は7日間でわかります。』
相良奈美香 著/西野みや子 漫画

人はいつも「一番便利なもの」「一番得なもの」を選ぶとは限りません。

本書では、そんな人間の選択や行動を研究する「行動経済学」を、マンガを中心に身近な例から紹介しています。

今回の記事でも、温水洗浄便座の性能だけではなく、「使ったことがない」「今のトイレで困っていない」といった反応が出てきました。便利なものがあっても、なぜ人は今までの方法を選び続けるのか。その部分が気になった方には、読みやすい一冊です。

参考情報と翻訳元

コメント

タイトルとURLをコピーしました