(最終更新日:2026年9月26日)
海外へ行ったとき、何も言っていないのに「日本人?」「アメリカ人?」と別の国の人に間違われた経験はあるでしょうか。
世界各国の人に質問する海外掲示板Redditのコミュニティ「r/AskTheWorld」で、韓国の投稿者が「海外へ行くと、普段どこの国の人に間違われる?」と質問したところ、各地からさまざまな体験談が寄せられていました。
What nationality are people usually mistaken for when you go abroad
by u/DeleteLaterToday in AskTheWorld
回答を追ってみると、単純に「顔が似ている国」に間違われるとは限りません。同じ人でも旅行先によって推測される国が変わったり、話し始めた瞬間に印象が変わったりと、見た目だけでは説明しきれない例がかなりありました。
なお、元の質問は「国籍」について尋ねていますが、コメントでは国籍だけでなく、出身地、民族的背景、祖先、外見、アクセントなどが入り混じっています。今回は、その混ざり方も含めて見ていきます。
フランス人同士なのに「スペイン人?」「ドイツ人?」
まずは、かなりきれいにお互い外してしまった例から。
アイルランドで元恋人と出会った。
英語で話し始めて、彼は私をスペイン人だと思い、私は彼をドイツ人だと思ってた。
二人ともフランス人だった🤷♀️😅
— u/Yuna-2128(フランス)
これに対する返信は、
フランスの二面性。
— u/tris123pis(オランダ)
同じフランス人でも、相手から受ける印象はかなり違うようです。
こんな取り違えは、ほかの国同士でも見られました。
アメリカで、私がニュージーランド人じゃなくて、実はオーストラリア人なんだと言い張ってくる人がいた(笑)
— u/Oceanside_9(ニュージーランド)
ニュージーランド人の別の参加者も「オーストラリア人」と回答しており、カナダ人からも「アメリカ人に間違われる」という声がいくつも出ていました。
今回のスレッドでは、オーストラリアとニュージーランド、カナダとアメリカのような取り違えも複数見られました。
同じ人でも、旅行先によって「どこの国の人に見えるか」が変わる
特に面白かったのが、行く場所によってまったく違う国の人に見られるという体験談です。
キルギスの参加者は、地域ごとにこう書いています。
西ヨーロッパでは、トルコ人。
東ヨーロッパでは、チェチェン人かタジク人。
東南アジアでは、フランス人。
これが自分の経験だね。ちなみに民族的にはタジク系で、自分でも見た目はかなりタジク系だと思う。
— u/abu_doubleu(キルギス)
西ヨーロッパではトルコ人、東ヨーロッパではチェチェン人やタジク人、そして東南アジアではフランス人。
本人は何も変わっていないのに、旅行先が変わるだけで「どこの国の人に見えるか」まで大きく変わっています。
似た例はほかにもありました。
自分は、いわゆる「どこにでもいそうなヨーロッパ人の顔」なんだと思う。
南米ではドイツ人だと思われることが多かったし、当時スペイン語をかなり話せたから、スペイン人だと思った人もいた。自分ではネイティブ並みだったとは思わないけどね。
一度、オーストラリアの空港で「おかえりなさい」と言われたこともある。
— u/leela_martell(フィンランド)
するとニュージーランドの人から、こんな返信が。
すごい。私もフランスで、入国審査官から一度「おかえりなさい」って言われたことがある……。
その人、私のニュージーランドのパスポートを手に持ってたのに。
そのあと英語で「ごめん、あまりにもフランス人っぽく見えたから」って。
— u/NotEnoughNoodle(ニュージーランド)
パスポートを見ていても間違われるとなると、第一印象というのはなかなか強力です。
話した瞬間に、別の国の人になる
一方、見た目より「声」が大きな手がかりになっている例も少なくありません。
ポーランド出身で、イングランド北西部を経てニュージーランドへ移った人は、こう書いています。
ああ、どこから話せばいいんだろう?
普段はドイツ人、オランダ人、スウェーデン人だと思われる。ニュージーランドでは南アフリカ人だと思われることも多い。
背景を説明すると……私はポーランド人で、ポーランド南部などのシレジア地方で話されるシレジア語を話していて、20代前半でイングランド北西部へ移住した。今はニュージーランドにいる……見た目はスラブ系の女性。
これまでの経歴や住んできた場所のせいで、アクセントが混ざったのかもしれない。たぶん、みんな私のアクセントを聞いて「どこだろう?」となるんだと思う。
— u/4stings(ポーランド→イングランド→ニュージーランド)
中国系アメリカ人の参加者も、場所によって扱われ方が変わると話しています。
ヨーロッパでは、だいたい日本人だと思われる。
アジアでは、たいてい中国人だと分かってもらえる。ただ、誰かと話すときは、その国の言葉で「こんにちは」とか「すみません」と言うことが多いから、アメリカ出身だと説明するまで、そのまま現地語で話しかけられることもよくある(笑)
— u/Multicultural_Potato(アメリカ・中国系)
インドネシア人からは、こんな回答も。
カナダに住んでいたころは、ほとんどの人に中国人だと思われてた。日本に住んでいる今は、日本人に間違われる。
なぜか、一目で自分がインドネシア人だと分かるのはケバブ屋の店員だけ。
— u/indonerd(インドネシア)
最後の一文が妙に気になります。
アクセントは本当に「出身当て」の手がかりになる?
こうした体験談を見ていると、実際にどんなアクセントへ触れてきたかによって、聞き分け方にも違いが出るのか気になります。
これに近いことを調べた研究があります。
2004年にシンシア・クロッパーとデイビッド・ピソーニが発表した研究では、最終的に分析対象となったインディアナ大学の学生61人に、アメリカ英語の6地域の方言を聞かせ、話者がどの地域の出身なのかを選択肢から分類してもらいました。
分析対象となった61人はいずれも17~22歳のアメリカ英語母語話者で、31人はインディアナ州だけで暮らしてきた人、残る30人は少なくとも3州で暮らした経験がある人でした。
その結果、少なくとも3州で暮らした経験のある参加者は、インディアナ州だけで暮らしてきた参加者より、全体として地域方言を正しく分類できました。また、自分が暮らした経験のある地域の話者について、より正確に分類できる傾向も確認されています。
ただし、これは若いアメリカ人を対象に、アメリカ国内の地域方言を聞き分けてもらった実験です。「声から人の国籍を当てられるか」を調べたものではありません。
この研究から、ニュージーランドとオーストラリア、カナダとアメリカの取り違えまで同じ仕組みだとは言えません。ただ、どんな話し方に触れてきたかという経験が、地域の話し方を聞き分ける精度と関係することは示されています。
そもそも、見た目と国籍は同じではない
スレッドを読んでいると、もう一つ分かりやすいことがあります。
「どこの国の人に見えるか」という質問そのものが、なかなか難しいのです。
たとえば、ブラジルの参加者はこう書いています。
自分はブラジル人で、父は日本人、母はチェコ人。
誰も自分の国籍を正しく当てられない。
— u/movebo357(ブラジル)
カナダの参加者からも、
話しているところを聞かれると、たいていアメリカ人だと思われる。
もちろん、地域によってはかなり違うけどね……カナダ東部ニューファンドランド島のボナビスタ半島出身の人をアメリカ人だと思う人はいないだろうし。
でも見た目となると何でもあり。カナダは移民の国だからね。
自分の場合、カリブ系黒人と白人のミックスのカナダ人なんだけど、スペイン語や、フィリピンで広く使われるタガログ語で話しかけられることがある。
— u/soft2bestrong(カナダ)
という回答がありました。
同じ国の人でも、祖先、家庭で使う言語、育った地域、外見は一様ではありません。
今回のスレッドで「国籍」を尋ねているのに、回答が自然と「どんな顔に見られるか」「どんな民族だと思われるか」「アクセントがどこの国に聞こえるか」へ広がっていったのも、そのためなのでしょう。
日本人は「中国人」「韓国人」に間違われるという声も
プロフィール上で日本と表示されている参加者の回答もありました。
うん、ほとんど中国人。
— u/BeniCG(日本)
別の日本の参加者は、
韓国人。
— u/Imaginary-Group1414(日本)
さらに「中国人」と答えた日本の参加者も複数いました。
とはいえ、これは今回のRedditスレッドに書き込んだ数人の体験談にすぎません。「日本人は海外で中国人に間違われやすい」といった割合を示すデータではない点には注意が必要です。
逆方向の例もあります。
韓国の投稿者自身は、からかい目的の挨拶を除けば、海外では主に日本人に間違われると書いていました。
中国系アメリカ人がヨーロッパで日本人と思われたり、インドネシア人が日本で日本人と思われたりする例もあり、今回のスレッドでは、東アジア・東南アジアの出身や背景を別の国と推測された例も複数ありました。
「どこの国の人?」は、思った以上に当たらない
今回のスレッドで印象的だったのは、「似た国同士で間違われる」という話だけではありませんでした。
フランス人同士がお互いをスペイン人とドイツ人だと思い、キルギスの参加者が地域によってトルコ人、タジク人、フランス人に見られ、フィンランド人がオーストラリアで「おかえりなさい」と言われる。
今回の体験談を見る限り、国籍を推測するときの手がかりは見た目だけではなく、アクセントや話す言語、そして旅行先によっても変わっていました。
海外旅行で別の国の人に間違われたとしても、案外それは自分が「その国っぽい」というより、相手側の世界地図が少し見えた瞬間なのかもしれません。
この記事に関連するおすすめ書籍
『ことばと国家』
田中克彦 著/岩波書店
私たちは「日本人なら日本語」「フランス人ならフランス語」のように、国とことばを自然に結びつけて考えがちです。
『ことばと国家』は、母語や国家語がどのように形作られてきたのかをたどりながら、「一つの国に一つのことば」という見方そのものを考えていく一冊です。イディシュ語やピジン語・クレオール語など、国境だけでは整理しきれないことばについても扱われています。
今回の記事では、見た目だけでなく、アクセントや話す言語、旅行先によっても「どこの国の人に見えるか」が変わる体験談を紹介しました。国籍とことばはどこまで結びついているのか、その関係をもう少し掘り下げてみたい方におすすめです。
参考情報と翻訳元
- Reddit「What nationality are people usually mistaken for when you go abroad」:各国の参加者による、海外で別の国の人に間違われた体験談。
- Cynthia G. Clopper & David B. Pisoni「Homebodies and army brats: Some effects of early linguistic experience and residential history on dialect categorization」:居住経験と言語経験が、アメリカ英語の地域方言の分類にどう関係するかを調べた2004年の研究。


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