海外「外より家の中の方が寒くない?」日本の家はなぜ断熱が弱いと言われることがあるのか?

0コメント
日本の話題
このページは広告が含まれています。

夏は蒸し暑く、冬になれば雪が降る地域もある日本。

それなのに、海外掲示板Redditでこんな疑問が投稿されました。

Why are the walls of Japanese houses so poorly insulated, despite experiencing hot summers and freezing cold winters?
by u/slopeclimber in architecture

「どうして日本の家の壁は、こんなに断熱が弱いのだろう?」

コメント欄では、「日本の住宅は短期間で建て替えるからではないか」「昔から夏の暑さをしのぐことを優先してきたから」「家全体ではなく、人だけを暖める文化だから」など、さまざまな説明が出ています。

中には神道の自然観まで理由に挙げる人もいました。

ただ、実際の住宅統計や省エネ基準の歴史を追ってみると、もっと現実的な事情が見えてきます。

そして現在の日本の住宅は、ちょうど大きく変わり始めているところでもありました。

広告下に海外の反応が続いています
広告下に海外の反応が続いています

まず、日本の家が全部寒いわけではない

最初に確認しておきたいのは、「日本の住宅は断熱されていない」と一括りにはできないことです。

スレッドにも、それに気づいた人がいました。

「近所に注文住宅を建てた人がいる。

冬のある日に夕食へ招かれたんだけど、その日はずっと寒かったから、すごく暖かい服を着て行った。でも家に入ると汗をかき始めた。

暖房やエアコンすらついていなかった。床暖房を一番低い設定で使っていただけだったんだ。暑すぎて、止めてもらおうかと思ったくらい。

そのとき気づいたよ。『ああ、日本の家が全部そうなわけじゃないんだ』って。」
— u/BeardedGlass

新しい高断熱住宅と、何十年も前に建てられた住宅では、室内環境が大きく違うことがあります。

では、なぜ海外から来た人が「日本の家は寒い」と感じることがあるのでしょうか。

ここで重要になるのが、日本に今残っている住宅そのものです。

実は、現在の省エネ基準を満たす住宅はまだ少ない

国土交通省資料をもとにした2022年度時点の推計では、日本にある約5400万戸の住宅のうち、当時の現行省エネ基準を満たしていた住宅は18%でした。

一方で、1992年基準相当が22%、1980年基準相当が36%。さらに24%は1980年基準にも満たない「無断熱等」と推計されています。

現在の国の住宅省エネ事業でも、現行の省エネ基準を満たす住宅は19%程度とされています。

つまり、「最近建てられている家の性能」と「いま日本人が実際に暮らしている家全体の性能」は、同じではありません。

新築住宅が高性能になっても、古い家が一斉に入れ替わるわけではないからです。

海外から来た人が住む古い賃貸住宅や、築年数の経った一戸建てで寒さを経験すれば、それを「日本の家」の印象として持つことも十分あり得ます。

日本に断熱の基準ができたのは1980年

では、なぜ古い住宅には断熱性能の低いものが多いのでしょうか。

日本では1979年に省エネ法ができ、翌1980年に住宅の省エネ基準が設けられました。

その後、1992年、1999年と断熱性能に関する基準が強化され、2013年には建物の断熱だけでなく、設備を含めたエネルギー消費についても新しい基準が導入されています。

ただし、長い間、この基準はすべての新築住宅に一律で適合を求める最低基準ではありませんでした。

規模の大きな建築物への届出制度や、住宅事業者への制度などは段階的に導入されてきましたが、原則すべての新築住宅に省エネ基準への適合が義務づけられたのは2025年4月です。

現在では、2025年4月以降に着工する住宅などは一定以上の断熱性や設備効率を確保する必要があります。さらに国は、遅くとも2030年までに、新築住宅に求める基準を現在より高いZEH水準(より高い断熱・省エネ性能)へ引き上げる方針です。

考えてみれば、2024年に立ったこのRedditスレッドは、日本の住宅制度が大きく変わる直前に投稿されていたことになります。

戦後の日本では、まず「家を増やす」必要があった

コメント欄では、戦後に大量の住宅が必要になったことを理由に挙げる人もいました。

「簡単に言えば、第二次世界大戦後から始まった部分が大きいと思う。住宅が必要になり、住宅需要が急増したことで、質の低い建築も増えた。」
— u/Eguot

このコメント全体には確認が必要な主張も含まれていますが、「戦後に深刻な住宅不足があった」という部分は事実です。

国土交通省によると、終戦直後の日本では約420万戸の住宅が不足していたと推計されています。

戦災による焼失だけでなく、戦時中の住宅供給不足や海外からの引き揚げなども重なり、戦後の住宅政策では、まず不足している住宅を大量に供給することが大きな課題になりました。

その後、日本の住宅政策は「量を確保する」段階から、住宅の質を高める方向へ移っていきます。

断熱の最初の省エネ基準が登場したのが1980年だったことを考えると、現在残っている住宅の中に、それ以前の考え方で建てられた家や、初期の基準に相当する家が少なくないのも不思議ではありません。

ただし、「戦後に急いで建てたから、今も日本の家は断熱しない」と一つの原因だけでつなげるのは難しいでしょう。

「日本の家は20~30年で壊すから」という説は?

スレッドの上位コメントには、別の説明もありました。

「日本では、建物は欧米とは違って価値が下がっていく資産だと考えられている。家を買うとき、本当に欲しいのはその家が建っている土地で、既存の建物を壊して自分の家を建てるという考え方がある。

その結果、日本の建物の多くは20~30年ほどの短い寿命を前提に設計され、長い目で見れば経済的になる断熱のような、建築費を上げる設備へ投資する動機も弱くなるのではないかと思う。」
— u/NGTTwo

ここは、事実と推測を分ける必要があります。

日本の中古戸建て市場で、建物の状態にかかわらず築20~25年ほどで市場価値をほぼゼロと評価する慣行があったことは、国土交通省自身も問題として挙げています。

しかし、それは「日本の住宅は20~30年しか物理的に持たない」という意味ではありません。

国土交通省はむしろ、住宅の性能や維持管理、リフォームの状態が価格に反映されない従来の評価方法を改め、長く使える住宅はきちんと評価する方向へ制度を見直してきました。

「20年で価値がゼロになる市場慣行」と「20年で家そのものが寿命を迎えること」は、別の話なのです。

そのため、住宅の資産評価のされ方が断熱投資に影響してきた可能性は考えられても、「すぐ壊す家だから断熱しない」とまで単純化することはできません。

昔の日本の家が「夏」を重視していたのは本当?

スレッドでは、こんな説明も出ています。

日本では家全体を暖かくするより、人がいるところだけを暖めてきたのではないか。

その例として挙げられていたのが、こたつです。

日本の伝統的な住宅が、特に温暖で湿度の高い地域で夏の通風を重視してきたことには根拠があります。

国土交通省が紹介する「気候風土適応住宅」でも、地域の気候や風土に合わせた住宅の特徴として、大きな開口部や深い軒・庇、通風への配慮、日射の制御などが挙げられています。

奈良文化財研究所も、日本建築の暖房について、火鉢やこたつは部屋全体を暖めるというより、人の身体を暖める「採暖」の道具だったと説明しています。

ただし、ここから「日本人は自然と共存する思想だから、寒さを我慢する」といった説明まで広げるのは飛躍があります。

スレッドには神道や東西の自然観を理由にする意見もありましたが、住宅の断熱性能は、建築基準、建設時期、地域、価格、暖房方法など具体的な条件に大きく左右されます。

文化だけで説明するより、こちらを見る方が実際の住宅事情には近そうです。

「家全体」ではなく「いる場所」を暖めてきた

それでも、こたつや石油ストーブなどを使い、必要な場所を暖める暮らし方が日本で広く見られてきたことは興味深いところです。

スレッドにも、

「典型的な日本の気候への対応は、必要なところだけ何とかするというものだと、日本人の友人から聞いた。

家全体を断熱して暖めるより、暖かくする必要があるのは人間だけじゃないか、という考え方。代表的なのがこたつで、毛布の付いたテーブルの下を暖めて、そこに人が入る。」
— u/stupidostrich

というコメントがありました。

これは投稿者自身も「友人から聞いた話」と断っているため、日本人全体の考え方として扱うことはできません。

ただ、古い日本住宅で部屋全体の温度を均一に保つより、火鉢やこたつなどで身体の周辺を暖める方法が使われてきた歴史とは重なります。

こうした暖め方が使われてきた住まいでは、家全体を一定温度に保つ住宅とは、暖房の考え方そのものが違っていました。

そして、この暮らし方も現在は少しずつ変わっています。

新しい家は、もう同じ方向を向いていない

スレッドには、1990年代から日本で暮らしているという人から、

「良くなってきている。自分が90年代に日本へ来たころは、複層ガラスなんてほとんど聞かなかった。少なくとも新しい建物では、今では複層ガラスが一般的になっている。」
— u/scotchegg72

という反応もありました。

このコメントの後半には日本の住宅全体について強い表現もあるため、ここでは本人が感じた変化だけを取り上げます。

制度の動きを見ても、日本の住宅が昔と同じままでないことは確かです。

2025年4月には、原則すべての新築住宅で省エネ基準への適合が義務化されました。2030年までには、さらに高い断熱・省エネ性能を求めるZEH水準まで基準を引き上げる予定です。

それでも、住宅は数年で全部入れ替わるものではありません。

高性能な新築住宅が増えている一方で、1980年基準にも満たない住宅や、1980年・1992年基準相当の住宅も大量に残っています。

「日本の家は寒い」という印象と、「最近の日本の家は暖かくなっている」という話は、どちらか一方が間違っているわけではないのです。

「なぜ断熱しない?」より、「いつ建てられた家なのか」

最初の疑問は、「暑い夏と寒い冬があるのに、なぜ日本の住宅は断熱が弱いのか?」でした。

しかし調べてみると、日本の住宅すべてに共通する一つの理由があるわけではありません。

戦後には深刻な住宅不足があり、その後1980年になって初めて住宅の省エネ基準が設けられました。基準は何度も強化されてきましたが、原則すべての新築住宅に適合が義務づけられたのは2025年です。

その一方で、日本には古い基準で建てられた住宅が今も数多く残っています。

さらに、伝統的には風通しを重視した住まいや、家全体ではなく人の周囲を暖める暮らし方もありました。

こうしたものが重なった結果として、「日本へ来たら家の中が思った以上に寒かった」という経験が生まれているのでしょう。

ただ、これから建てられる住宅まで同じとは限りません。

スレッドの中で、暖かい注文住宅に入った人が気づいた、

「ああ、日本の家が全部そうなわけじゃないんだ。」

という一言が、現在の状況を一番よく表しているのかもしれませんね。

(最終更新日:2026年9月10日)

この記事に関連するおすすめ書籍

amazon.co.jp
「断熱」が日本を救う 健康、経済、省エネの切り札
¥1,210円 税込(2026年9月10日時点)
Amazon.co.jpで見る

『「断熱」が日本を救う 健康、経済、省エネの切り札』
高橋真樹 著

「日本の家はなぜこんなに寒いのか」という疑問から、住宅の断熱性能と健康、エネルギー、経済との関係を取り上げた一冊です。

断熱性能を高めた住宅がどのようなものなのか、既存住宅ではどんな改修ができるのかといった話まで扱われています。

今回の記事では、日本の住宅が一律に「断熱されていない」のではなく、古い住宅と新しい住宅の間に大きな違いがあることを見てきました。そこからもう少し踏み込んで、日本の断熱事情そのものを知りたい方におすすめです。

参考情報と翻訳元

コメント

タイトルとURLをコピーしました