海外「中国では夏でもお湯を飲むの?」温かい水を飲む習慣、その意外な理由

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真夏でも、お湯。

中国・北京で、暑い時期でも冷たい水ではなく、温かい水を飲んでいる人が多いことに気づいた人がいました。

海外掲示板Redditの中国人に質問するコミュニティr/AskAChineseで、「中国では、どうしてお湯を飲む習慣がこんなに一般的なの?」と尋ねたところ、コメント欄には「胃にいいから」「昔からの習慣」「水を安全に飲むためだった」など、いくつもの説明が集まりました。

Why drink hot water?
by u/Otherwise-Shock4458 in AskAChinese

ただ、読み進めていくと少し気になることがあります。

みんなが話している「お湯」は、本当に同じものなのでしょうか。

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「胃にいい」と教わってきた

最初に多かったのは、健康についての話でした。

昔からの習慣で、上の世代は胃にいいと信じてるんだと思う。自分はよく分からないけど。

私が飲む「お湯」といえば、紅茶かコーヒーくらいかな。
ーu/ScandinaviaSquirrel

これに対して、「中国人ではない母親も、胃の調子が悪いときに温かい水を飲んでいる」という返信がつきました。

さらに別の人からは、

香港だけど、上の世代に限った話じゃないよ。もともと胃が弱い人もいて、温かい水が楽になることがある。
ーu/stefamiec89

という声も。

もちろん、これはそれぞれの体験です。

それでも「お腹の調子が悪いときには温かいもの」という感覚は、このスレッドでは何度も登場します。

若い人が利用するSNSでも、似た光景を見たという人がいました。

中国のSNS「小紅書(RedNote)」を見てたけど、若い人にもかなり一般的みたい。アメリカ人があんなに冷たい水を飲むことに驚いていて、ほとんどどんな体調不良にもお湯を勧めてた。

私が中国に行ったら、普段飲んでる氷水の量だけで騒ぎになりそう。
ーu/Lysmerry

病気になったら、とりあえずお湯。

少し日本の「風邪なら温かくして寝なさい」に近いような、生活の中に組み込まれた助言なのかもしれません。

ただ、ここで別の説明が出てきます。

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もともとは「温かいから」ではなく、「沸かしたから」?

これは中華民国期から中華人民共和国の初期ごろまでさかのぼれる「伝統」だと思う。衛生上の理由から始まって、今ではみんなの習慣になった。
ーu/paladindanno

このコメントをきっかけに、スレッドでは「もっと昔からあったはず」「いや、一般家庭が飲み水を全部沸かせるようになったのはもっと後では」と議論が始まりました。

そこで少し調べてみると、少なくとも20世紀の中国で「水を沸かして飲む」ことが公衆衛生の一環として強く勧められたことは確認できます。

1934年に当時の中国の国民政府が始めた「新生活運動」は、服装や食事、衛生、公共の場での振る舞いなど、日常生活そのものを改めようとした運動でした。その生活規範には「沸かした水だけを飲む」ことも含まれていたとする研究があります。

さらに中華人民共和国成立後の1950年代には、「愛国衛生運動」と呼ばれる大規模な衛生運動が行われています。

当時の資料を見ると、かなり直接的です。

image by chineseposters.net / Landsberger Collection(1954年「Drink boiled water / 喝开水」)

1952年ごろの衛生ポスターには、

「喝开水(沸かした水を飲もう)」

という呼びかけがあり、1954年には中央人民政府衛生部宣伝処による、そのものずばり「喝开水」という啓発ポスターも作られていました。

ここで大事なのが、中国語の「开水」です。

日本語で「お湯」と訳すと、どうしても「熱いまま飲む水」という印象になります。

しかし、中国語辞典では「开水」は煮沸した水という意味で説明されています。

つまり、公衆衛生の目的から見れば重要だったのは、「熱い水を飲むこと」よりも「水をいったん沸かすこと」だったわけです。

そう考えると、話が少し変わってきます。

「安全のために沸かす」が、そのまま生活習慣になった

実際、現代の調査でも、中国では水道水を一度沸かしてから飲む習慣が根強く残っている例が確認できます。

上海の家庭を対象に64人へ聞き取りを行った研究では、水道水を沸かすことだけを飲み水の準備方法としていた人が約45%、ほかの方法との併用まで含めると62.5%でした。

さらに、

「沸かした水を飲むよう教えられ、それをずっと続けている」

といった回答も記録されています。

スレッドにも、それに近い経験が出ています。

中国で育ってカナダに移住した中国系カナダ人だけど、少なくとも一部は水質が理由だと思う。

中国の公立学校に通っていた頃、小学1年生のときから、先生に「水道の水には細菌やウイルスがいる可能性があるから、そのまま飲むのは安全じゃない。沸かさないといけない」と教えられていた。

広州の水道関係の仕事をしているいとことその妻から聞いた話もあって、中国では水を沸かさずに飲む気にはならない。

水質とは別に、人によっては冷たい水を飲むと消化器の調子が悪くなることもある。体温に近い温度の水だと、それが起きない人もいる。

今はカナダにいるから温かい水は飲まない。水道を一番冷たくして、そのまま飲んでるけど、それで体調を崩したこともない。

でも中国へ戻ると、今でも昔の先生に言われたとおりにしている。北米でいう「水道水を煮沸してください」という注意報みたいな感覚かな。
ーu/random20190826

もちろん、この人の学校での経験や水質についての話を、中国全体にそのまま当てはめることはできません。

それでも上海の研究を見ると、家庭や周囲の人から教わった煮沸習慣が、その後も日常の行動として続いている例は確認できます。

最初は衛生上の理由から始まった行動でも、繰り返されるうちに「いつもの水の飲み方」として残っていくことはありそうです。

ここまで来ると、「なぜ熱い水が好きなのか」だけでは説明しきれないことが見えてきます。

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そこへ「冷」と「熱」という昔からの考え方も重なる

さらに、中国の伝統的な健康観もあります。

スレッドでは、こんな説明がありました。

中国では、物事はバランスが取れていないといけない、という考え方があるんだと思う。

子どもの頃、母から食べ物や口に入れるものには「熱いもの」と「冷たいもの」があると教わった。「陰」と「陽」みたいな考え方で、健康でいるには両方のバランスを取らないといけない。

かなり複雑な考え方で、自分でも細かく説明できないけど、そういうものが昔からの習慣にも入り込んでる。

だから暑い日でも体のバランスは必要で、氷みたいに冷たい水は、あまりバランスがいいものとは考えられていない。

伝統中国医学には、薬物の性質を「寒・涼・温・熱」に分ける「四気(四性)」と呼ばれる考え方があります。

現在の研究でも、この「寒・涼・温・熱」という四つの性質は伝統中国医学の基本的な概念の一つとして扱われています。

ただし、ここは少し分けて考えたほうがよさそうです。

伝統医学でいう「寒」「熱」は、単純に「冷蔵庫から出した水は冷だから悪い」「何度のお湯なら健康によい」という現代的な飲料温度の話と、そのまま同じではありません。

そして「温かい水は誰にとっても冷たい水より健康によい」というところまで、現代医学で確認されているわけでもありません。

では、本当に温かい水のほうが体にいい?

この点でも、スレッドでは意見が割れていました。

これは伝統中国医学の影響だと思う。

科学的には、衛生面を除けば温かい水そのものに特別な利点があるわけではない。水を沸かしてから冷ませば、それでも同じはず。
ーu/Callmewhatever4286

一方で、「冷たい水を飲むと胃がつらい」「温かい水だと落ち着く」と、自分の体感を話す人もいます。

温かい水を飲むようになってから、お腹がつることが減った。

単純にこっちのほうが好きなのもある。温かい感じが落ち着くんだよね。

慣れてからは常温の水ですら冷たく感じる。胃に入っていくのが分かる感じがして、あまり好きじゃない(笑)。
ーu/Responsible_Divide86

医学的にはどうなのでしょうか。

米国の非営利学術医療センター、Cleveland Clinicは、温水と冷水の健康効果について研究そのものが多くなく、日常的な水分補給では「温かい水のほうが広く健康に優れている」といえるだけの根拠は乏しいとしています。

基本的には、温度よりも十分に水分を取ることのほうが重要だという説明です。

一方、水温が体にまったく影響しないわけでもありません。

健康な若い男性11人を対象に、2℃、37℃、60℃の水を飲んだあとの胃の動きなどを比較した小規模な研究では、水温によって胃の運動やその後の食事量に違いが見られました。

ただ、対象は11人だけです。これだけで「冷たい水は胃に悪い」「温かい水なら胃にいい」と一般化できるものではありません。

また、暑い環境で運動する場合の飲料温度について調べた複数の研究を一定の基準でまとめて検討した系統的レビューでは、冷たい飲み物が深部体温(体の内部の温度)の上昇を抑えたり、運動パフォーマンスに有利に働いた研究がある一方、研究結果にはばらつきもあるとされています。

少なくとも、「暑い日でも熱い水のほうが体温調節に優れている」と一律に言えるわけではなさそうです。

ここは、Redditの体験談と医学的な話を分けて読んだほうがよさそうです。

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中国人なら全員がお湯派、というわけでもない

ここまで調べると、中国では昔からみんな熱い水を愛してきたようにも見えてきます。

でも、スレッドを読むと、そんなにきれいにはまとまりません。

最初に「昔からの習慣」と説明していた人自身が、こう書いています。

大丈夫。お湯の話になると、自分はもう中国人じゃない気がする。

日本とスウェーデンに移ってからは、冷たい水道水しか飲んでない。中国に住んでいた頃はペットボトルの水を飲んでた。
ーu/ScandinaviaSquirrel

さらに、もっと簡潔な人もいました。

中国人だけど、お湯は嫌い。冷たい水のほうが好き。
ーu/TrainerRedpkmn

当然といえば当然ですが、好みは人によって違います。

「中国では温かい水を飲む習慣が広く見られる」ことと、「中国人は全員、冷たい水を嫌う」は同じ話ではありません。

朝鮮戦争が始まりだった、という説明は?

今回のスレッドには、「朝鮮戦争中に米軍が生物兵器を使用したため、中国政府が水を沸かすよう勧めた」というコメントも複数ありました。

ただ、この部分はそのまま記事の歴史説明には使えません。

中国や北朝鮮などが朝鮮戦争中に米軍による生物兵器使用を主張したこと自体は確認されていますが、その主張をめぐっては長く論争が続いてきました。

2021年に発表された研究では、当時共産圏側が提示した「証拠」について捏造された可能性が高いものがあったと分析されています。ただし、その研究も論争全体を単純に「すべて捏造だった」と結論づけているわけではありません。

一方、「水を沸かして飲む」という衛生啓発については、朝鮮戦争の生物兵器説を前提にしなくても、1934年の新生活運動や1950年代の公式ポスターから確認できます。

そのため今回は、朝鮮戦争を「中国のお湯文化の起源」とする説明は採用しませんでした。

「お湯好き」だけではなかった

最初は、「なぜ中国では夏でも熱い水を飲むのか」という単純な疑問でした。

ところが調べていくと、そこには少なくともいくつかのものが重なっています。

水を安全にするために沸かすという衛生習慣。

一度沸かした水を日常的に飲む生活。

「冷たいもの」「温かいもの」を意識する伝統的な健康観。

胃が楽になると感じる個人の経験。

そして、親や学校などで教わり、そのまま当たり前になった習慣。

考えてみれば、「一度沸かした水」と「温かい水」は同じではありません。

それでも、「水はまず沸かして飲む」という行動が日常になれば、その水を温かいまま飲むことも、ごく自然な選択として残っていくのかもしれません。

北京で夏に見かけた一杯のお湯も、単なる「熱い飲み物好き」というより、そうした歴史や健康観、日々の習慣が少しずつ重なったもののようですね。

(最終更新日:2026年9月11日)

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今回の記事では、中国で温かい水を飲む習慣について調べていくと、公衆衛生のために水を沸かす習慣や、伝統的な健康観、家庭や学校で受け継がれてきた生活習慣など、いくつもの背景が重なっていることが見えてきました。

この本は「お湯を飲む習慣」そのものを解説した本ではありませんが、中国の食にまつわる習慣が、時代や異文化との関わりの中でどのように変化してきたのかを、もう少し広い視点から知りたい方におすすめです。

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