台湾でベイブレードがなぜ再ブームに? 「子どもに勝ちたい」Threadsの投稿が火をつけた背景を調査

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(最終更新日:2026年10月4日)

2026年6月13日、台湾各地の百貨店では、開店と同時に大人たちが売り場へ向かって走り出しました。お目当ては、日本発の対戦玩具「ベイブレード」の最新シリーズ「BEYBLADE X(ベイブレードエックス)」です。

台湾メディアのTVBSによると、この日に発売された「CX-18 ランダムブースター ブラキオウィップセレクト」を求め、北部・中部・南部の百貨店で2~3時間前から列ができ、発売直後に完売。350台湾ドル(当時のレートで約1,800円)の商品が、ネット上では1200台湾ドル以上(約6,100円以上)で取引される状況まで起きていました。

いったい、なぜ台湾でベイブレードがこれほどのブームになったのでしょうか。

調べていくと、2026年の旧正月ごろにThreadsへ投稿された、ある大人の「子どもに勝ちたい」という相談が大きな転機になっていました。ただし、それだけで突然ブームが生まれたわけではありません。

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大きな転機は「親戚の子どもに勝てる最強のベイブレードを教えて」

台湾で今回のブームを大きく加速させた出来事として繰り返し名前が挙がるのが、Metaが運営するSNS「Threads」に投稿された一つの相談です。

発端になったThreadsの投稿 image by 遊戲大亂鬥

台湾のゲーム系サイト「遊戲大亂鬥」には、「子どもを泣かせられるベイブレードが欲しい! 予算は無制限!」という趣旨のタイトルで、この話題がまとめられています。

現地メディアParadailyによると、投稿者の@fabio_67871は、ベイブレードの腕前を親戚の子どもによくからかわれていたことから、「相手を打ち負かせる強い3機」をネットで相談しました。

すると、ベイブレードに詳しいYouTuberや著名人まで次々と反応。投稿そのものだけでなく、「大人が本気で子どもに勝とうとしている」という構図が話題となり、ベイブレードを知らなかった人たちの目にも触れるようになります。Paradailyは、この投稿を熱狂が本格的に広がった重要な出来事として紹介しています。

Business Insider TaiwanもGoogle Trendsの動向をもとに、旧正月の時期にこのThreads投稿をきっかけとしてベイブレード関連の検索関心が急上昇したと説明しています。

海外掲示板Redditのベイブレードコミュニティ「r/Beyblade」でも、台湾のプレイヤーが当時の様子をこう説明しています。

台湾人です。同じ台湾の人たちが世界中のベイブレードプレイヤーに大きな迷惑をかけていることについて、申し訳なく思います。

旧正月前まで、台湾のベイブレード界隈はニッチながら平和で、小規模ではありますが熱心なプレイヤーたちが遊んでいました。ところが旧正月に、Threadsのあるユーザーが「甥たちに勝つには、どのベイブレードを買えばいい?」と質問したことで、すべてが変わりました。

その投稿は瞬く間に広がり、YouTuberや普段から大会に参加しているプレイヤー、さらには台湾のG2王者本人まで、著名なプレイヤーが大勢返信しました。

結果として、その投稿が台湾におけるベイブレードブームの最初の波を起こしました。そして参加する人が増えるにつれ、クズみたいな転売屋がベイブレードを買い占め、小売価格の最大4倍という高値で売り始めました。

繰り返しになりますが、普通のプレイヤーとして、同じ台湾のクズどもが他の国で迷惑をかけていることを申し訳なく思います。

— u/North_crozz(台湾)

ここでいうG2は、ベイブレード公式大会のグレードの一つです。

興味深いのは、このプレイヤー自身が「旧正月前にも小さいながらコミュニティは存在していた」と書いていることです。

実際、タカラトミーの公式記録を見ると、2024年の「アジアチャンピオンシップ」では台北でも予選が開催されています。つまり、Threads投稿によって台湾にベイブレードが初めて持ち込まれたわけではありません。すでに存在していた競技コミュニティへ、一般層が一気に流れ込む大きな転機になった、と考えるほうが実態に近そうです。

台湾のTVBS NEWSのコメント欄にも、こんな一言がありました。

あの投稿は、諸悪の根源と言っていい。

— @遊gemalfa

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ただの懐かしい玩具ではなかった「BEYBLADE X」

では、なぜ一つの面白い投稿を見ただけで、それほど多くの大人が実際にベイブレードを買い始めたのでしょうか。

ここで重要なのが、現在売られている「BEYBLADE X」です。

2023年7月に登場したBEYBLADE Xは、スタジアム外周のレールにギアをかみ合わせて急加速する「Xダッシュ」を採用。タカラトミーは、従来の玩具にとどまらず、プレイヤーの技量やカスタマイズも勝敗を左右する、競技性を打ち出した「GEAR SPORTS」という位置づけで展開しています。

そして、大人が遊ぶことは後から偶然生まれた現象でもありません。

発売前の2023年には、タカラトミーが「かつてベイブレードで遊んでいた社会人や学生」を対象に、会社の同僚や大学の友人と遊んでもらうキャンペーンを実施していました。

さらに同年10月には、「大人が気軽に集える」ことをコンセプトの一つにした期間限定施設「BEYBLADE X TRAINING CENTER」も開設しています。

2025年に行われた初の世界大会では、21地域の予選に6歳から67歳まで計1万5000人が参加。大人も参加できるオープンクラスまで正式に設けられていました。

つまり、「昔遊んでいた子どもが、大人になって戻ってくる」ための土台は、Threadsで話題になる以前からできていたわけです。

台湾のニュース動画には、こんなコメントも寄せられていました。

もう時代遅れになったものを、ここまでまた盛り上げて大騒ぎになるなんてすごい。でも良いところもあって、スマホを置いて、デジタル機器から離れられる。

— @Jason-jg9pt

台湾の中央通信社も2026年4月、2000年代に遊んだ子どもたちが大人になり、再び本格的にベイブレードを楽しむようになったことを紹介しています。

「大人が財力で子どもを倒す」という冗談がSNSと相性抜群だった

それでも、懐かしい玩具はベイブレード以外にもいくらでもあります。

今回の台湾ブームで面白いのは、単なる「昔懐かしい」では終わらなかったことです。

親戚の子どもに腕前をからかわれた大人が、「予算はいくらでもいいから最強の構成を教えてくれ」とネットの専門家たちへ助けを求める。そして大人の財力で強力なパーツをそろえ、子どもへ再戦する。

この構図自体が、ネット上の定番ネタ(ミーム)になりました。

台湾では「資本主義社会の厳しさを子どもに教える」といった冗談まで広がり、大人が子ども相手に本気でベイブレードを回す動画が次々と投稿されるようになります。Business Insider Taiwanも、著名人が専門的な構成を真剣に提案するギャップによって、これまでベイブレードを知らなかった人が「パーツや戦術まで研究する遊びなのか」と気づいたことを紹介しています。

ただし、本当に子どもを泣かせること自体が目的だった、と受け取るのは少し違うようです。

後日、元投稿者は自分が投稿した結末について「温かいものだった」という趣旨を説明し、一部のネットユーザーが子どもを必要以上に攻撃するような流れには距離を置いています。

「大人なのに、子どもの遊びへ本気になっている」。

その自虐的な面白さも含めて、参加しやすいネット上の遊びになったのでしょう。

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買ったら終わりではなく、人と遊びたくなる

ベイブレードには、もう一つSNS時代と相性のいい特徴があります。

一人で買って飾るだけではなく、誰かと対戦して初めて面白さが増すことです。

組み合わせによって攻撃、防御、持久力などが変化し、シュートの技術も勝敗に影響します。しかも一試合は短く、激しくぶつかって弾き飛ばされるため、周囲から見ていても何が起きたか分かりやすい。

Business Insider Taiwanの取材では、プレイヤーが「勝敗の結果がすぐに返ってくる」「競技盤が一つあれば知らない人同士でも自然に対戦が始まる」と、その魅力を説明しています。オンラインで相手を探し、実際に公園などへ集まる人もいるといいます。

香港でも似た光景が生まれていました。

CNNが2026年6月に香港で取材した記事では、タトゥースタジオが一部の夜には早じまいし、ベイブレードの対戦会場になっています。公園やショッピングモールでもプレイヤーが集まり、36歳の店舗経営者は、友人や知らない人が集まって遊べる機会が少ない今、ベイブレードには「とても純粋な楽しさ」があると語っています。

香港のRedditコミュニティにも、台湾からの波及を指摘する声がありました。

台湾で人気になって、それに香港も続いたんだと聞いたよ。

じゃあ、なぜ台湾で人気になったのか? それは僕にも分からないけど。

— u/TruckerHatsAreCool

別の人は、香港・沙田のショッピングモールでベイブレードのポップアップショップに大行列ができ、その後は周辺で子どもたちが集まって遊ぶ姿を頻繁に見るようになったと書いています。

2026年8月には、香港・マカオでベイブレードを扱う代理店の責任者が、4月以降の売り上げが少なくとも10倍になったとシンガポールの英字紙The Straits Timesに説明しています。人気は子どもだけではなく、若者や大人にも同時に広がったということです。

The Straits Timesも、2023年に登場したBEYBLADE Xが台湾で大きな現象になるうえで、2026年2月のThreads投稿を重要な転機として紹介しています。

台湾のThreads投稿をきっかけに再燃した話題は、香港を含む周辺地域でも広がり、実際の対戦会や店頭での交流へつながっていきました。オンラインの話題とオフラインの遊びが互いに熱気を高めていたことがうかがえます。

人気が大きくなりすぎて、今度は「買えない」状態に

問題も起きました。

台湾では人気商品が急速に店頭から消え、2026年6月13日に発売された「CX-18」は、百貨店で開店前から2~3時間待つ人が出ました。TVBSによると、350台湾ドルの商品が1200台湾ドル以上で売られる例も確認されています。

ニュース動画のコメント欄でも、

プレイヤーでもない人たちが買い占めて転売している。そりゃ在庫がなくなるわけだ。

— @駿貓

という不満が出ていました。

Redditでは、日本やマレーシア、フィリピンなどへ商品を買い付けに来る転売業者がいるという報告も相次ぎました。ただし、個々の投稿から「台湾人が海外の品薄を引き起こした」とまで一般化することはできません。

台湾のプレイヤー自身も、こう訴えています。

私も台湾人で、こちらの転売屋について申し訳なく思っています。でも、台湾人全員が転売屋ではないということは覚えておいてください。

私たちのほとんどは普通のブレーダーです。ただ、人気が急上昇したのを利用しようとするクズが一部いるというだけです。台湾人全員を嫌いにならないでください。私たちはみんな転売屋というわけではありません。

— u/2fishlplayz(台湾)

ここでいう「ブレーダー」は、ベイブレードのプレイヤーを指します。

そして品薄は台湾だけの問題でもありません。

タカラトミーは2026年6月19日、日本国内・海外の双方でBEYBLADE Xが品薄・欠品していることを正式に認め、増産を進めていると発表しました。増産分は7月下旬から8月上旬ごろから、世界各地へ順次供給するとしています。

急激に膨らんだ需要へ供給が追いつかず、そこへ転売目的の買い占めまで重なった、と考えるほうが実態に近そうです。

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なぜ台湾でベイブレードが人気になったのか

今回の台湾ブームを調べると、「昔の玩具が懐かしかったから」だけでは説明しきれません。

台湾にはもともとベイブレードの競技コミュニティがあり、最新のBEYBLADE Xには、大人でも研究したくなるカスタマイズ性と競技性がありました。メーカー側も以前から、大人が再び参加できる遊びとして展開していました。

そこへ2026年旧正月、「親戚の子どもに勝ちたい。予算は無制限」という、誰にでも分かる少し馬鹿馬鹿しいThreads投稿が飛び込みました。

昔遊んだ大人が笑いながら参加し、実際に商品を買い、今度は公園や店舗で誰かと対戦する。その姿がまたSNSで話題になる。

一つの投稿が、すでにそろっていた条件へうまく火をつけたのでしょう。

発売日に大人たちが百貨店を走るほどの熱狂を見ると、子どものころに回していたコマが、20年以上たってこんな形で戻ってくるとは、当時のプレイヤーたちも想像していなかったかもしれません。

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