「スタッフが美味しくいただきました」は本当? 日本のテレビであのテロップが出る理由を調べてみた

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(最終更新日:2026年9月20日)

「今日見るものの中で、一番“日本らしい”もの」。

2026年1月、海外掲示板Redditに、日本のテレビで使われる「この後スタッフが美味しくいただきました」というテロップが紹介されました。

The most ‘Japanese’ thing you’ll see today: A dedicated caption to prove no food was wasted.
by u/Expert-Day9889 in interesting

今回のスレッドでは、「食べ物を無駄にしなかったことまで視聴者に知らせるのか」と好意的に受け取る人もいましたが、日本人にはどこか見慣れた一文です。

そもそも、なぜこんなテロップが表示されるのでしょうか。そしてスタッフは、本当に食べているのでしょうか。

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「アメリカの料理番組にも欲しい」

最初のスレッドでは、こんな反応がありました。

アメリカの料理番組にも、これを付けてほしい。

それに料理対決番組で本当にひどいものを作ったときは、「これは廃棄しました。食べてくれる人が見つからず、寄付するのも失礼だったので」って表示されたら面白そう。
— Dawnzila

別のユーザーは、米国の「撮影中に動物へ危害を加えていません」という表示になぞらえていました。

アメリカの「この番組・映画の撮影で動物に危害は加えられていません」の日本版みたいなものだね。
— gnark

今回のスレッドでは、一部のユーザーに「撮影に使った食べ物をちゃんと食べたことまで説明する」という行為そのものが、日本らしく映ったようです。

ただ、同じスレッドには別の見方もありました。

これは食品ロスを避けることそのものより、食べ物を無駄にしたことへの苦情電話を避けるために使われている面が大きい。
— Bwchc55

実際、このテロップには視聴者からの批判を見越した“予防線”として使われてきた面があると説明されています。

食べ物の扱いには、実際に視聴者から批判が寄せられる

ニュースサイトORICON NEWSは2018年、「この後スタッフが美味しく頂きました」というテロップについて、食べ物を粗末にしていると受け取られた際の批判をかわしたり、和らげたりするための「予防線」として使われていると説明しています。

これはテレビ史の一次資料ではないため、「視聴者からの苦情が原因でこのテロップが誕生した」とまでは言えません。

ただ、食べ物の扱いに対して実際に批判が寄せられてきたことは確認できます。

放送番組への意見を受け付けているBPO(放送倫理・番組向上機構)は、2012年11月について、バラエティ番組では食べ物を粗末にすることや、出演者の食べ方への批判が多かったとまとめています。

2024年3月にも、牛乳や水を使ったドッキリについて、

食品・飲料を粗末に扱うことに抵抗を感じないのか

という視聴者意見が掲載されています。

ORICON NEWSは、「撮影後にスタッフが食べました」とあらかじめ伝えるこの種のテロップを、こうした批判への予防線として説明しています。

今回確認した範囲では、「食品ロス対策としてテレビ局にこの表示が義務付けられている」といった制度は確認できませんでした。

日本のテレビで見られる、視聴者からの疑問や批判を見越した注意書きの一つとして考える方が近そうです。

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いつからあるのかは、意外とはっきりしない

では、「この後スタッフが美味しくいただきました」を最初に使った番組は何だったのでしょうか。

ここは今回調べた範囲では特定できませんでした。

一方、2015年にはすでに、この種のテロップそのものをネタにしたテレビ番組が放送されています。

2015年9月13日放送のフジテレビ系バラエティ番組『オモクリ監督』で、よゐこの濱口優さんは「注釈が多すぎるテレビ番組」を題材にした映像を制作しました。

「特別に許可を得て撮影しています」といった注意書きが次々に表示される内容で、番組内ではビートたけしさんも「食べ物はスタッフで食べた」といった注釈に触れています。

つまり、少なくとも2015年には、「この後スタッフが美味しくいただきました」と言えば視聴者に意味が通じ、それ自体をパロディーにできるほど知られた表現になっていました。

追加のRedditスレッドでも、

日本に住んでいてテレビをかなり見るけど、一度もこのテロップを見たことがない。どの番組でも使われる一般的な習慣とは思わない。

という人がいる一方、

私も日本に住んでいるけど、何度も見たことがある。

という人もいました。

その間には、

どのテレビ番組でも定期的に出るわけではないけど、日本では間違いなくよく知られたフレーズだよ。真面目な注意書きというより、ユーモラスなギャグに近い。

というコメントもあります。

「日本のテレビでは、食べ物が映るたびに必ず表示される」というものではありません。

その一方で、パロディーが成立するくらいには知られたテレビの定型句になっている、というあたりが実態に近そうです。

ところで、本当にスタッフは食べている?

今回のスレッドでも、当然この疑問が出ました。

信じないぞ。スタッフが満足そうにお腹をさすっている映像も見せてほしい。
— Koltaia30

結論からいうと、本当に食べていることが確認できる例はあります。ただし、このテロップが出たすべての番組について「必ず全部食べている」とまでは確認できません。

2017年、雑誌『Tarzan』の編集部は料理撮影の舞台裏を紹介しています。

表紙や誌面用に30品以上の料理を用意し、「作る→撮る→食べる」を繰り返したうえで、「必ず皆で食べています」と明記しています。

ORICON NEWSも2018年、テレビロケ後に7人ほどのスタッフが料理を食べている写真が公開された例を紹介しています。

2024年には料理研究家のリュウジ氏も、大量のハンバーガーを使った食べ比べ企画で食べ残しを捨てているのではないかと批判された際、

「レビューが終わったらスタッフみんなで食べている」

と説明しました。

さらに、「なぜテレビが必ず『この後スタッフが美味しくいただきました』と入れるのかを痛感した」と投稿しています。

追加スレッドには、日本のテレビ番組で通訳として働いたことがあるというユーザーから、こんな体験談もありました。

一度だけ日本のテレビ番組で仕事をしたことがあるけど、そのときは実際に食べてたよ。2回目の撮影になると誰もお腹が空いてなくて、あまり嬉しそうじゃなかったけど(笑)。
— Floweradioct

もちろん、一つの現場の体験をテレビ番組全体へ一般化することはできません。

確認できるのは、テロップの言葉どおり、本当にスタッフが食べている現場は存在するというところまでです。

撮影の条件は番組ごとに異なるため、画面にこの一文が出ただけで「誰が、どれだけ、どのように食べたのか」まで外部から確認することはできません。

「全部ウソ」とも、「表示されたら必ず全部食べている」とも言わない方がよさそうです。

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では、日本は本当に食べ物を捨てない国なのか

もう一つ気になったのが、今回確認したスレッドで見られた、

「日本では食べ物を捨てることが社会的に受け入れられていないから、この表示がある」

という説明です。

テレビで食べ物を粗末に扱うことへの批判が実際にあるのは、BPOの記録からも分かります。

ただ、それを「日本では食品がほとんど捨てられていない」と読み替えることはできません。

消費者庁によると、2024年度の日本の食品ロス、つまりまだ食べられるにもかかわらず捨てられた食品は461万トンでした。

内訳は、食品関連事業者から出たものが237万トン、家庭から出たものが224万トンです。

追加のRedditスレッドでも、この点は議論になっていました。

あるユーザーが「日本は世界でも特に食品ロスが多い」と主張したところ、別のユーザーが「調べてもそのようなデータは見つからない」と反論。その後、国連の資料を挙げながら数字の比較自体の難しさを指摘するコメントも出ています。

ここで大切なのは、「日本人は食べ物を大切にする/しない」という国民性の二択にしないことだと思います。

テレビの画面上で、食べ物が粗末に扱われているように見えることへの抵抗感と、社会全体で実際にどれだけ食品ロスが出ているのかは別の話です。

「スタッフが美味しくいただきました」というテロップが存在することだけで、日本の食品ロスの実態までは説明できません。

日本人には見慣れた一文が、今回のスレッドでは「日本らしいもの」になった

「この後スタッフが美味しくいただきました」。

今回のスレッドでは、それが「食べ物を無駄にしない日本」を象徴する表示のように受け取る人もいました。

調べてみると、本当にスタッフが食べている事例はありました。

その一方で、この一文には、食べ物の扱いをめぐる視聴者からの批判に備える注意書きとしての側面もあります。

食べ物そのものより、視聴者から突っ込まれそうなことを先にテロップで説明しておくところの方が、案外“日本のテレビらしい”のかもしれません。

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