日本人はAIアートに寛容? 渋谷の巨大広告から日本の反応を調べてみた

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(最終更新日:2026年9月19日)

「今朝、渋谷で巨大なAIアートの広告を見かけた」。

2026年9月、海外掲示板Redditの「r/AskAJapanese(日本人に質問するコミュニティ)」に、一枚の写真とともにこんな質問が投稿されました。

How do Japanese people feel about AI art?
by u/linDleveL in AskAJapanese

日本ではAIアートは議論になりますか?
日本では一般的に、AIアートはどう受け止められているのでしょうか?

ここでいうAIアートとは、生成AIで作られた画像やイラストのことです。

投稿写真に写っていたのは、AIによるアニメ風画像などを生成できるサービス「PixAI」の広告でした。PixAIは9月14日から27日まで、渋谷スクランブル交差点の大型広告枠に4周年記念ポスターを掲出しています。

スレッドには「アジアは欧米よりAIアートに寛容なのでは」という見方も出ていました。

では、日本では本当にAIアートへの抵抗が少ないのでしょうか。

日本の調査と、実際に生成AIの利用が話題になった最近の事例を追ってみました。

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Redditでは「一般層は気にしない」という見方が何度も出ていた

スレッドで繰り返し登場したのが、「一般の人」とクリエイティブ分野では温度差がある、という見方です。

「オランダ/日本」と表示されたユーザーは、一般の人はほとんど気にしていない一方、最近はAI生成広告への嫌悪感が増えており、音声・声の仕事、アニメーション、イラストなどの分野では好まれていない、と答えています。

なお、こうした国や地域などの表示は、Redditでユーザー自身が設定する「フレア」です。本人確認された国籍表示ではありません。

別のJapanフレアのユーザーも、一般の人にとっては「ただの新しいおもちゃ」という程度だが、クリエイティブ業界では意見が強くなる、と書いていました。

一方で、AIか人間かではなく、出来上がったものが良ければ評価する、というJapanフレアの反応もあります。

もちろん、Redditの数人のコメントから日本社会全体を推測することはできません。

今回のスレッドでは、「一般層はそれほど気にしていない」という見方が複数出ていた、というところまでにとどめておいた方がよさそうです。

では、実際の調査ではどうなのでしょうか。

「日本はAIに積極的な国」とも言いにくかった

まず、日本社会全体のAIへの態度を見てみます。

ここで注意したいのは、以下の調査がAIアート単独ではなく、AI・生成AI全般について尋ねたものだという点です。

調査・コンサルティング会社の野村総合研究所(NRI)は2025年9月、日本・アメリカ・中国・ドイツでAIの利用状況などを調査しました。

生成AIを「月に数回以上」利用すると答えた割合は、

中国86.3%、アメリカ58.8%、ドイツ57.9%、日本34.9%。

4か国では日本が最も低い結果でした。

ただし、中国側の回答者は中国全土ではなく、北京、上海、広州、大連、南京、ハルビン、西安、成都の8都市の居住者です。都市部に偏った調査である点には注意が必要です。

別の国際調査でも、日本のAIへの期待はそれほど高くありませんでした。

国際的な世論・市場調査会社イプソスが2025年3~4月、30か国の75歳未満のインターネット利用者2万3216人を対象に行った「Ipsos AI Monitor 2025」では、「AIとは何かをよく理解している」とした日本の回答者は41%でした。

また、仕事を持つ回答者に「今後3~5年でAIによって自分の仕事が良くなるか」を尋ねたところ、日本で「良くなる」と答えた人は20%でした。

これらはAIアートへの賛否を直接測った数字ではありません。

それでも少なくとも、日本をAIの利用や理解、仕事への期待が特に高い国と見るのは難しそうです。

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AI広告では「条件付きなら使ってよい」が半数を超えた

では、今回のReddit投稿のきっかけでもある「AI広告」ではどうでしょうか。

スレッドには、AIアート自体には中立だが、AI生成広告は詐欺的な広告で見かけることが多いため信頼しにくい、というJapanフレアのコメントがありました。

インターネット広告の業界団体・日本インタラクティブ広告協会(JIAA)は2026年2月、全国の15~69歳で、パソコン・タブレット・スマートフォンからインターネットを「ほぼ毎日」利用する男女3591人を対象にWeb調査を行っています。

集計では住民基本台帳の構成比をもとに補正も行われました。

生成AIを活用した広告については、52.0%が「条件が整えば活用してよい」と回答しました。

「積極的に活用すべき」は4.3%。一方、「活用すべきではない」とする回答を合わせると43.7%でした。

面白いのは、条件付きで受け入れる人が半数を超えている一方、現在のAI広告への印象には否定的なものも多いことです。

「本物らしさがない/不自然」「情報の正確性が心配/信頼できない」「著作権が不安」など、ネガティブなイメージを一つ以上挙げた割合は57.6%でした。

さらに、AI広告を受け入れやすくする条件では、「生成AIを活用していることが明記される」が37.6%で最多でした。

つまり、

過半数は「条件が整えば活用してよい」と考える一方、現在のAI広告には否定的・懸念を伴う印象も多い。

使ったかどうかだけではなく、AI利用の表示や権利処理、出来上がったものの品質まで見られているようです。

クリエイターでも、職種によってかなり違った

では、スレッドで繰り返し出てきた「クリエイターはAIを嫌っている」という話はどうでしょうか。

クリエイターの協同組合・日本イラストレーション協会(JILLA)が2025年12月に行った調査では、画像生成AIについて、

否定的46.4%、肯定的32.4%、「どちらともいえない」21.2%でした。

ただし、この調査は日本のクリエイターを無作為に選んだものではありません。

JILLAが会員向けメールマガジンで回答を募り、386人から回答を得た調査です。そのため、日本のクリエイター全体を代表する数字ではありません。

そのうえで回答者を見ると、職種による違いはかなり大きく出ています。

漫画家では約76%、イラストレーターでは約59%が否定的。

その一方、Webデザイナーでは約61%、グラフィックデザイナーでも半数以上が肯定的でした。

年代別でも、30代では約66%が否定的だったのに対し、50代では約53%が肯定的です。

「若い人ほど新技術を歓迎する」「クリエイターは全員反対している」といった単純な構図にはなっていません。

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「ゲーム開発者の85.8%が使っている」は本当。ただし意味が違った

スレッドには、日本のゲーム業界で働いているとするユーザーから、

日本のゲーム開発者の85.8%が生成AIを積極的に使っている。

というコメントがありました。

85.8%という数字自体は確認できました。

東京ゲームショウなどを主催するゲーム業界団体・コンピュータエンターテインメント協会(CESA)は、2026年に実施したゲーム開発者向け調査で、回答者の85.8%が生成AIを業務で利用していると発表しています。

ただし、Redditコメントにある「積極的に」という説明は、CESAの調査内容とは一致しません。

内訳は、

「日常的に利用」63.0%+「時々利用」22.8%=85.8%

です。

また、この調査は商業ゲーム開発者を主な対象としていますが、教育関係者や学生も回答者に含まれています。

さらに、調査ではChatGPTやGitHub Copilot、画像生成・アセット生成サービスなど、幅広い生成AIが対象となっています。

つまり、

「日本のゲーム開発者の85.8%がAIイラストを積極的に作品へ使っている」

という意味ではありません。

ここは、Redditのコメントだけを読むとかなり印象が変わる部分でした。

少なくとも今回のCESA調査では、回答者の間で生成AIの業務利用がかなり広がっていました。

一方で、ユーザーの目に直接触れる形でAIが使われると、強い反応が起こることがあります。

レベルファイブでは、AIそのもの以外も問題になった

2026年9月、『妖怪ウォッチ』や『レイトン教授』などで知られるゲーム会社レベルファイブが、オンライン発表会「LEVEL5 VISION 2026 II」の映像演出に生成AIを使用しました。

公開後、X(旧Twitter)では「発表内容よりAIが気になる」「不自然な部分は修正してほしかった」といった反応があり、ゲーム本編にも生成AIが使われるのではないか、作品の絵柄や雰囲気が損なわれるのではないか、という不安も出ました。

9月12日、同社の日野晃博社長はXで、発表会を派手に見せるため、最新AIによる実験的な処理を映像に組み込んだことを説明しました。

今回、その投稿に寄せられた日本語の返信も一部確認しました。

そこには、AIを人間のアイデアを形にするための「ツール」と捉える意見がある一方、作品のシナリオやデザインなどの核を人間が担うなら安心できるという反応もありました。

また、「どこにAIを使い、どこに使わないのかを先に示した方がユーザーが判断しやすい」という意見や、逆に、単に指示を出して生成したものをそのまま出すようになれば失望する、という品質面の懸念も見られました。

生成AIの権利関係を理由に、仕事では使うことに慎重だというクリエイター側の声もあります。

もちろん、多数ある返信のごく一部を確認したものであり、返信欄全体の賛否を集計したものではありません。

それでも、少なくとも今回確認した返信には、「AIだから賛成」「AIだから反対」だけではなく、どこに使うのか、品質を保てるのか、利用範囲を説明するのか、といった部分で判断する意見もありました。

その後、レベルファイブは9月17日に公式声明を発表しました。

会社側は、AIによって生じた間違いや、人の作業ミスによってAIの間違いに見えてしまった箇所があったと説明。「AIの使い方の未熟さ、単純な人的作業のミス」によって不信感を招いたとして謝罪しました。

また、ゲーム内容にはAIを直接使用していないと明言し、今後はユーザーに直接届ける映像ではAIの直接使用を避ける方針を示しています。

ここではAI利用そのものだけでなく、品質、作品らしさ、利用範囲をどう説明するかまで問題になっていました。

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「AIを使って活動休止」も、調べると別の問題が重なっていた

Redditでは、イベントロゴにAIを使った配信者が炎上し、活動休止したという例も挙げられていました。

これは配信者のLEON代表をめぐる出来事です。

LEON代表は、漫画家・しろまんたさんから以前贈られたイラストを生成AIに使用し、イベントのロゴを制作したことを認めました。

さらに、しろまんたさんから確認された際、当初は事実と異なる説明をしていたことも認め、謝罪して活動休止を発表しています。

重要なのは、しろまんたさん自身がAI生成そのものの是非について意見するつもりはないとしたうえで、友人として事実と異なる説明をされたことを問題視している点です。

この件を、

「日本ではAIを使うと活動休止に追い込まれる」

と整理すると、実態から離れてしまいます。

AIを使ったことだけではなく、

誰の作品を使ったのか。

本人との関係はどうだったのか。

その後の説明は誠実だったのか。

という問題が重なったケースでした。

投稿のPixAIは、東京藝大の学園祭にも協賛していた

最初のReddit投稿に戻ると、渋谷に広告を出していたPixAIは、同じ2026年9月、東京藝術大学の学園祭「藝祭2026」にも協賛していました。

PixAI運営会社Metanomalyによると、9月4日の上野恩賜公園野外ステージで、PixAIオリジナルデザインの水3000本とうちわ3000枚を配布しています。

今回確認したXの関連検索では、協賛に批判的な投稿と、それに異論を唱える投稿の双方が見つかりました。

ただし、X検索は無作為抽出した世論調査ではありません。

東京藝大の学生や日本のクリエイター全体の意見が、賛否に分かれたとまでは言えません。

少なくとも、日本でAIアートがまったく議論になっていないわけではないことを示す一例として見るのがよさそうです。

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「AIに寛容か」だけでは、うまく説明できなかった

ここまで調べると、冒頭の、

「日本は欧米よりAIアートに寛容なのか」

という質問自体が、少し大きすぎるように思えてきます。

AI全般では、日本は国際比較で利用や仕事への期待が特に高いわけではありません。

AI広告では、条件付きの活用を認める人が半数を超える一方、不自然さや情報の正確性、著作権などへの懸念も見られます。

画像生成AIに対するクリエイターの調査では、漫画家やイラストレーターには警戒感が強い一方、Webデザイナーなどでは肯定的な回答も多くありました。

CESAの調査では、生成AIを業務で使っている回答者が多くいました。

そしてレベルファイブやLEON代表の例では、「AIを使った」という一点だけではなく、品質や作品らしさ、他人の作品の扱い、利用範囲、説明の誠実さまで問題になっていました。

Redditにも、

AIは道具。

というJapanフレアのコメントがあります。

これは日本社会全体を代表する答えではありません。

ただ、今回の調査や事例を並べてみると、「日本人はAIが好きか嫌いか」という二択よりも、何に使ったのか、誰の作品と関係しているのか、利用をきちんと説明しているのか、そして出来上がったものに納得できるのか

そうした使い方の部分まで含めて評価されている、と見る方が実態に近そうです。

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今回の記事では、日本でAIが単純に「好きか嫌いか」だけではなく、何に使うのか、どこまで人間が担うのか、出来上がったものをどう評価するのかによって受け止め方が変わる様子を追いました。

AIが日常の中へさらに入り込んだとき、人間はそれをどんな存在として受け止めるのでしょうか。AIを「道具」の先にある存在として、少し違った角度から考えてみたい方におすすめの一冊です。

参考情報と翻訳元

  1. Reddit「How do Japanese people feel about AI art?」
    r/AskAJapanese、2026年9月18日投稿。今回の記事の翻訳元。
  2. 野村総合研究所「日・米・中・独4カ国調査に見るAI利用の受容性と日本におけるAI浸透の未来像」
    2025年9月の4か国調査。生成AIの利用状況や受容性、日本34.9%・中国86.3%などを確認。
  3. Ipsos「Ipsos AI Monitor 2025」
    30か国2万3216人を対象とした国際調査。日本のAI理解41%、仕事への好影響を期待する就業者20%などを確認。
  4. 日本インタラクティブ広告協会「2026年インターネット広告に関するユーザー意識調査(定量)」
    15~69歳・インターネットをほぼ毎日利用する3591人を対象としたWeb調査。生成AI広告への条件付き受容52.0%、ネガティブなイメージ57.6%、AI利用明示37.6%などを確認。
  5. 日本イラストレーション協会「画像生成AIとクリエイターの現在地」
    JILLA会員386人を対象とした調査。画像生成AIへの評価や、職種・年代別の違いを確認。
  6. コンピュータエンターテインメント協会「CESAゲーム産業レポート2026 プレビュー版」発刊のお知らせ
    ゲーム開発者向け調査における生成AIの業務活用85.8%などを確認。
  7. 日野晃博氏「AIの使用について・LEVEL5 VISION 2026 II」
    X、2026年9月12日。発表会映像で生成AIを使用した理由や制作方針を確認。投稿への返信についても、ごく一部を記事作成時に確認。
  8. レベルファイブ「『LEVEL5 VISION 2026 II』で発表された一部PVの修正と今後の生成AIに関する対応について」
    AI利用、ゲーム本編への直接使用の有無、今後の方針を確認。
  9. ITmedia NEWS「レベルファイブ発表会のAI演出が物議」
    発表会後にXで出た反応や、日野氏の説明を確認。
  10. GameBusiness.jp「AI生成イラストを使用した配信者・LEON代表、活動休止へ」
    しろまんたさんのイラストを生成AIに使用した経緯、その後の説明、活動休止までを確認。
  11. Metanomaly「AI創作プラットフォーム『PixAI』、東京藝術大学の学園祭『藝祭2026』に協賛」
    藝祭2026への協賛、水3000本・うちわ3000枚の配布などを確認。
  12. PixAI「渋谷スクランブル交差点に、4周年記念ポスターを掲出します」
    2026年9月14~27日の渋谷スクランブル交差点での広告掲出を確認。

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