日本の「穴場」は教えたくない? 在住者の議論を追うと、観光客を増やしたい場所と守りたい場所が見えてきた

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(最終更新日:2026年9月19日)

「日本の穴場を教えて」。

日本に住んでいると、旅行に来る友人からそんな質問をされることがあるようです。ところが海外掲示板Redditでは、「お気に入りの小さな店まで観光客でいっぱいになるのは嫌だから、教えない」という投稿をきっかけに、かなり意見が割れていました。

Had enough with tourists asking for your ‘secret spots’
by u/AiboTokyo in japanresidents

追ってみると、「観光客には有名な場所だけ行ってほしい」という単純な話ではありません。むしろ、もっと人に来てほしい地域と、これ以上人を呼び込みたくない小さな場所を分けて考えるコメントが複数ありました。

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「なぜ、大切な店をSNSで広めたいと思うの?」

投稿されたのは、日本在住者向けのRedditコミュニティ「r/japanresidents」です。

投稿者によれば、2024~2025年に日本を訪れた知人のうち18人から、「穴場」や「観光客があまり行かない場所」を何度も聞かれたといいます。

しかし、投稿者には教えたくない場所がありました。

40年ほど老夫婦が営んできた6席のウイスキーバー、8人ほどしか入れない焼肉店、長年ピザ作りを学んだ料理人の小さな店。

どこもすでに地元客で埋まっているので、SNSで広まり、大勢が押し寄せる必要はないという考えです。

正直、教えるつもりはない。すごくいい場所がSNSと観光客で完全に潰されるようなことを、どうして自分からしたいと思うんだ?
— u/AiboTokyo

かなり強い言い方だったこともあり、コメント欄では「それは少し、自分たちだけで囲い込んでいる感じでは」「地元の店にお金が入るならいいのでは」という批判も出ました。

一方で、同じようにお気に入りの店を広めたくないという人もいました。

「地域」は勧める。でも「いつもの店」は教えない

この議論で興味深かったのは、「穴場」という言葉が二つの違うものを指していたことです。

青森や香川のような地域そのものと、住宅街にある数席のバーやラーメン店のような特定の小さな店です。

あるユーザーは、その違いをかなりはっきり分けていました。

観光客があまり行かない「場所」なら喜んで教えるよ。青森や香川は本当に好きだし、もっと観光客が来てもいいと思っている。

でも、何年も会っていない人に東京で自分が気に入っている店を教えるつもりはない。
— u/nijitokoneko

東北、鳥取、島根、福井などを勧めるコメントもありました。

一方、小さな店については、

お気に入りの近所の店に、SNS用の写真や動画を撮らないでほしいと丁寧にお願いする小さな掲示がある。聞いてみたら、今いる地元客を大切にしたくて、TikTokなどで突然話題になって一度きりの客が押し寄せるのは望んでいないと言っていた。
— u/tiringandretiring

という体験談も出ています。

もちろん、一店舗についての利用者の証言であり、日本の小規模店が一般的に観光客を嫌っているという意味ではありません。

むしろ別のコメントでは、観光客が使うお金は店の助けになるとして、「お気に入りの店が閉店するくらいなら来てもらった方がいい」という意見もありました。

そこで出てくるのが、もう一つの問題です。

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日本には「観光客が集中する場所」と「もっと誘客したい地域」が同時にある

Redditでは、こんな短いコメントもありました。

日本には、オーバーツーリズムと観光客不足の両方の問題がある。場所に合わせて勧めればいいんじゃないかな。
— u/zerothprinciple

「観光客不足」はこのユーザーの表現ですが、観光庁の現在の政策を見ると、かなり近い問題意識があります。

観光庁は、一部の地域や時間帯では観光客の集中によって混雑や住民生活への影響が生じているとして、オーバーツーリズム対策を進めています。

その一方で、政府の観光政策の基本方針となる、2026~2030年度の第5次「観光立国推進基本計画」では、地方への観光客誘致を進めることによる需要分散そのものを、オーバーツーリズム対策の一つとして位置づけています。

つまり、単純に「日本に観光客が多すぎる」という話ではありません。

特定の都市や地域へ集中しすぎていることも問題になっています。

地方の宿泊は増えている。それでも国はさらに分散させようとしている

数字を見ると、その事情がもう少し分かります。

観光庁が2026年7月に公表した2025年の年間確定値では、外国人旅行者による地方部での宿泊は約6,056万人泊でした。

ここでいう「地方部」は、東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、京都、兵庫の8都府県を除いた地域です。

また「人泊」は、1人が1泊すると1人泊として数える単位です。1人が2泊すれば2人泊になります。

2024年の約5,086万人泊から19.1%増え、外国人の延べ宿泊者数全体に占める地方部の割合も33.7%になりました。

地方への旅行が広がっていないわけではありません。

それでも第5次「観光立国推進基本計画」は、2030年の地方部における外国人延べ宿泊者数の目標を1億3,000万人泊に設定しています。三大都市圏と地方部を、おおむね1対1にすることを目指しています。

特定の都市や地域への集中を緩和するためにも、別の地域へ旅行者を広げたいという考えです。

ただ、ここで最初のスレッドへ戻ると、少し面白いズレがあります。

国が言う「地方へ観光客を分散する」と、投稿者が心配している「8席しかない近所の店がSNSで急に有名になる」は、同じ「穴場へ行く」でも規模がまったく違います。

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「地方へ行ってほしい」と「この店は教えたくない」は両立する

第5次「観光立国推進基本計画」も、観光客を一律に増やすことだけを目的としているわけではありません。

柱の一つとして掲げられているのは、訪日客の誘致と住民生活の質の確保を両立することです。

地域ごとに事情が違うため、混雑への対応や地方への需要分散などを組み合わせる方針が示されています。

Redditの議論でも、実はこれに近い線引きがありました。

「青森へ来てほしい」という人が、その一方で「自分の近所の8席しかない店をSNSで広めたい」と思わなくても不思議ではありません。

逆に、小さな店でも新しい客を必要としている場合があります。

観光客が多いか少ないかだけでなく、その場所がどれだけ人を受け入れられるのか、店側が何を望んでいるのかでも話は変わります。

そもそも「穴場」を聞いても、実際には行かない?

もう一つ、スレッドで何度か出ていたのが、「穴場を教えて」と聞く人が、本当にそこまで行くとは限らないという話でした。

青森に住むユーザーは、友人や家族から旅行相談を受けるたびに「青森へ来れば案内する」と伝えているそうです。

ところが7年間で実際に来たのは3回ほど。

多くの人は「東京から遠い」と考えて行かなかったといいます。

別のユーザーも、

「穴場」と言いながら、本当に情報がほとんどない場所を教えると、たぶん行かない。「ネットには『すごくいいところ』と書かれていて、しかも自分が行きたいほかの場所の近くにある穴場」を求めているんだと思う。
— u/HelloYou-2024

と書いていました。

少し意地悪な見方にも聞こえますが、旅行者側からすれば、限られた日程の中でアクセスしやすく、失敗しにくい場所を選ぶのは自然でもあります。

「誰も知らない場所へ行きたい」と「短い旅行で確実に楽しみたい」は、ときどき両立しません。

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「穴場」は、必ずしも誰にも知られていない場所ではない

今回のスレッドには、「秘密の場所は秘密のままでいい」という声もあれば、「地方の店や観光地にはもっと客が必要だ」という声もありました。

一見すると正反対です。

ただ、話を「日本全体」ではなく場所の大きさで分けてみると、かなり整理できます。

観光客を受け入れる余地のある地域へ旅行を広げることと、すでに常連客で埋まっている小さな店までSNSで拡散することは別の話です。

「穴場を教えるか、隠すか」ではなく、その場所は人が増えても大丈夫なのか

スレッドを追っていくと、問題は「秘密」を守ることそのものより、そこにあるようでした。

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参考情報と翻訳元

  1. Reddit「Had enough with tourists asking for your ‘secret spots’」
    r/japanresidents(日本に住む外国人・在住者を中心としたコミュニティ)、2025年10月6日。記事で紹介した投稿とコメントの翻訳元。
  2. 観光庁「『観光立国推進基本計画』を閣議決定」
    2026年3月27日。2026~2030年度の第5次「観光立国推進基本計画」の基本方針、地方誘客による需要分散、住民生活の質の確保との両立を確認。
  3. 観光庁「観光立国推進基本計画(第5次)(概要)」
    地方部における外国人延べ宿泊者数を2030年に1億3,000万人泊とし、三大都市圏と地方部をおおむね1対1にする目標を確認。なお、資料中の2025年値5,873万人泊は作成時点の速報値。
  4. 観光庁「宿泊旅行統計調査 2025年年間値(確定値)」
    2026年7月6日公表。2025年の地方部における外国人延べ宿泊者数6,056万人泊、前年比19.1%増、構成比33.7%を確認。

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