日本だけじゃない特殊詐欺 海外ではどんな手口が使われ、どう対策しているのか調査!

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(最終更新日:2026年10月17日)

「おばあちゃん、困ったことになった。お金が必要なんだ!」

2026年8月、アメリカの掲示板Redditに、孫を装った人物から電話を受けたという女性の体験談が投稿されました。日本でもおなじみの「オレオレ詐欺」に似た手口ですが、海外ではほかにも、警察や銀行を装うものから、その国独自の決済サービスを悪用するものまで、さまざまな詐欺が報告されています。

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海外でも起きている「オレオレ詐欺」

日本の警察庁によると、2025年に認知された特殊詐欺は2万7,832件、被害額は約1,423億円に達しました。中でも警察官などになりすました「ニセ警察詐欺」の被害が目立っています。

海外でもこうしたなりすましによる詐欺は深刻な問題です。シンガポール警察が2025年に認知した詐欺事件は3万7,308件。オーストラリアでも、2025年に複数の関係機関へ報告された詐欺被害額は合計約21億8,000万豪ドルに上りました。

日本の「特殊詐欺」と各国の「詐欺」は集計対象が異なるため、数字をそのまま比較することはできませんが、海外でも大きな社会問題になっていることが分かります。

まずは、日本人にもなじみのある、家族になりすます詐欺から見ていきましょう。

アメリカ:孫を装って祖父母に電話する「Grandparent Scam」

アメリカでは、孫などを装って祖父母からお金をだまし取る手口が「Grandparent Scam(祖父母を狙った詐欺)」として知られています。

米連邦取引委員会(FTC)も、「孫が逮捕された」「医療費が必要になった」などと緊急事態を装い、家族に確認する時間を与えずに送金を求める手口について注意を呼びかけています。

Redditの詐欺情報コミュニティ「r/Scams」には、こうした電話を見破った女性の体験が投稿されました。

I was NOT a victim of the Grandma scam!
by u/MissHibernia in Scams

電話をかけてきた若い男性は、自分を孫だと信じ込ませようとしましたが、女性が両親の名前を何度尋ねても答えられず、最後は悪態をついて電話を切ったそうです。

コメント欄には、家族だけが知っている呼び名が役立つという意見もありました。

うちの孫たちは、私を「Grandma(おばあちゃん)」とは呼ばないの。孫たちには私を呼ぶ特別な名前があるから、詐欺師が当てるのはかなり難しいと思う。

追記:「Narnie」を少し変えた呼び名だから、そこまで珍しくないかもしれないけど、それでも詐欺師には当てにくいはず😁

— u/LouLouEllen

こういうときのために、家族で合言葉を決めておくのは本当にいい考えだと思う。家族で飼っているペットの珍しい名前なんかも、かなり役立つね。それ以外なら、誰にも推測できないような変な言葉を考えておけばいい。「バーバラ・ブッシュのアメリカンドッグ宮殿」みたいな。

それで、怪しい電話が来て何かおかしいと思ったら、合言葉を尋ねればいい。答えられなければ電話を切って、その番号をブロックする。

— u/PooGoblin69420

ただし、合言葉そのものが相手に知られてしまう可能性もあります。FTCが勧めているのは、いったん電話を切り、以前から知っている本人の番号や別の家族を通じて事実を確認する方法です。

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スペイン:家族になりすますと「言葉遣い」でバレる?

スペインのコミュニティ「r/askspain」では、2025年12月に「こんにちは、ママ。スマホが壊れた」というWhatsAppの詐欺メッセージが話題になりました。

Hoy me han intentado estafar por WhatsApp con el clásico “hola mamá, se me rompió el móvil”
by u/OnlyTheSignal in askspain

WhatsAppは、電話番号を使ってメッセージや通話ができるアプリです。

詐欺師は子どもを装い、携帯電話が壊れて番号が変わったなどと説明したうえで、緊急の支払いを頼むという手口を使います。

ところが、この方法には意外な弱点があるようです。

以前、母がこの手口でだまされかけたんだけど、相手が私じゃないと気づいたの。理由は、その人が汚い言葉を使わなかったから。

友人2人の親も、それが本人じゃないと気づいた。家族とは絶対にスペイン語でメッセージをやり取りしないから。

要するに、個性があると詐欺を防げるってことね。

— u/Marfernandezgz

スペインには、スペイン語のほかにもカタルーニャ語など、地域によって日常的に使われる言語があります。普段から家族同士で別の言語を使っている場合、突然スペイン語で連絡してくること自体が不自然に映るわけです。

母はこれと同じ詐欺メッセージを2回受け取った。だから今は、家族で本人確認用の合言葉を決めているよ。

— u/MoonMoan

中には、まったく見当違いの相手にメッセージが届いたケースも。

一度、こういうメッセージを受け取ったことがある。

僕は男で、子どももいない。

でも、あのときだけはおばあちゃんになったような温かい気持ちを味わえたよ。

— u/No-Helicopter6363

ポーランド:知人のアカウントから届く送金依頼

家族だけでなく、友人や職場の知人を装う詐欺もあります。

ポーランドでは、知人のSNSアカウントを乗っ取り、そこから送金を求める詐欺が報告されています。

狙われるのは「BLIK」という現地の決済サービス。銀行アプリなどで発行した一時的なコードを使って、店舗での支払いや現金の引き出しができる仕組みです。

2026年1月、ポーランドのRedditコミュニティ「r/Polska」に投稿した人物は、職場の知人から「BLIKでの支払いがうまくいかないから、代わりに払ってほしい」というメッセージを受け取りました。

Scam
by u/Ralesong in Polska

過去に自分も決済がうまくいかなかった経験があったため、不審には思わなかったといいます。知人が直前に電話をかけてきて、SNSアカウントを乗っ取られたことを知らせてくれたため、被害を免れました。

同じスレッドでは、詐欺の手口を知っていても油断できないという体験も寄せられています。

普段から侵入テスト(※コンピューターの安全上の弱点を調べるテスト)に興味があって、この詐欺の手口も何年も前から知っていた。いつも原始的な手口だと思っていたんだ。

なのに2日前、いとこからまさに同じ内容のメッセージが届いたとき、まったく気づかなかった。

「もちろん、手伝えるよ」と返さずに済んだ唯一の理由は、仕事が猛烈に忙しくて、すぐに返信する気になれなかったから。

数時間後、いとこから電話があって、アカウントを乗っ取られたので助けてほしいと言われた。思わず頭を抱えたよ。

— u/Sarithis

99回は防げても、疲れているときのたった1回で引っかかってしまう。たいていはそんなものだよ。

— u/Buttres

ポーランドの警察も、知人のSNSアカウントを乗っ取ってBLIKのコードを要求する手口について警告しており、別の連絡手段で本人に確認するよう勧めています。

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警察や銀行を名乗る相手にも注意が必要

家族や知人だけでなく、警察や銀行など、本来は人々を守る立場の組織になりすます詐欺もあります。

シンガポール:Google Meetに現れた偽警察官

2026年4月、シンガポールのコミュニティ「r/singapore」に、警察の犯罪捜査部門を装ったGoogle Meetの着信について投稿がありました。

New scam alert?
by u/ScoobySharky in singapore

Google Meetは、インターネット上でビデオ通話ができるサービスです。

投稿主に届いた着信は、警察の犯罪捜査部門を思わせるメールアドレスからのものでした。

実際に応答した人の話によると、制服らしき服を着た人物が画面に現れたケースもあったそうです。

私にも1週間前、同じような電話が来たよ。相手がどういう手口を使うのか、ちょっとワクワクしてた(笑)。

最初はこっちのカメラがオンになっていて、相手がカメラをつけるまで数秒待たされた。画面には警察の制服を着た男が映っていて、背景には警察のロゴがあった。

男は「こんにちは、犯罪捜査部です」と言った。

兄弟に「見たい?」って聞いて、画面をそっちに向けたら電話を切られたよ。

相手のメールアドレスはcidsingapore513@gmail.comだった。

— u/dionnnnz

この詐欺については、シンガポール警察も公式に警告を発しています。

2026年4月19日の発表によると、同年4月1日以降、Google Meetで警察官になりすます詐欺が少なくとも13件報告され、被害額は合計3万2,000シンガポールドル以上に達しました。

警察の説明では、犯人は制服や警察のロゴを使って信用させ、銀行口座の問題を口実にログイン情報やワンタイムパスワード(一度だけ使える認証用の番号)を聞き出していたといいます。

さらにシンガポールでは、2026年8月、WhatsAppやGoogle Meetなどのサービス事業者に対し、詐欺対策を求める新たな行動規範が発表されました。

政府機関を装ったプロフィール名や画像への対策も盛り込まれ、こうしたなりすまし対策の対応期限は同年9月30日、その他のメッセージ・通話サービスに関する主な要件の期限は2027年1月31日と定められています。

オーストラリア:偽警察官が「警察署へ来てください」と案内

オーストラリアのr/australiaでも、警察のサイバー犯罪担当を名乗る人物から電話を受けたという投稿がありました。

Scam call pretending to be Australian Cybercrime Division
by u/RC0305 in australia

2026年9月の投稿によると、相手は捜査で本人の個人情報が発見されたと説明。「あなたは何も悪いことをしていないので安心してください」と話したそうです。

投稿主が折り返しの電話番号を求めると、相手は発信専用番号なので受けられないと回答しました。

その後、特定の警察署で直接話すこともできると案内してきたため、投稿主は実際に警察署へ行って確認すると伝えました。

すると、相手は電話を切ってしまったといいます。

似た電話を受けたという人からは、こんな体験談も。

私も同じような電話を受けたことがあるよ。相手はヘルシンキにあるフィンランドのサイバー犯罪捜査局だと名乗っていた。

そこでフィンランドについていろいろ質問して、オフィスの窓からフィヨルドは見えるのかと聞いたり、フィヨルドが恋しいと言ってみたりしたんだ。

相手が話を合わせてきたから詐欺だと分かった。フィヨルドといえばノルウェーで、フィンランドじゃないって誰でも知ってるからね!

— u/Competitive-Mood4980

フィヨルドとは、氷河によって削られてできた細長い入り江のことで、ノルウェーの海岸地形としてよく知られています。

オーストラリアの公的な詐欺情報サイト「Scamwatch」も、警察官や暗号資産取引所を装い、個人情報流出の調査を口実に金銭や暗号資産へのアクセス情報を要求する詐欺について警告しています。

一方、警察官を装う詐欺があることで、本物の公的機関からの電話まで疑われるという問題もあるようです。

自分は本物の公務員で、ときどき人に電話をかける仕事をしているんだけど、公務員の発信番号が非通知で表示されるのが本当に腹立たしい。

まさにこういう詐欺があるからね。

私は本物なんだよ! なんで詐欺師みたいに見えるようにするんだ!

— u/racingskater

電話が本物かどうかを確かめるには、表示された番号だけに頼らず、公的機関の公式窓口へ自分で連絡して確認することが勧められています。

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アメリカ:本物の銀行からの電話の後に現れた偽物

2026年9月、r/Scamsに投稿された銀行詐欺の体験談は、さらに手の込んだものでした。

Most Involved Bank Scam to Date
by u/DntCllMeWht in Scams

投稿主はまず、本物の銀行アプリで9.99ドルの不正利用通知を受け取りました。

銀行の不正利用対策部門から実際に電話があり、カードを停止して再発行するところまでは正規の手続きでした。

ところが、その約1時間後、再び銀行の不正利用対策部門を名乗る女性から電話がかかってきます。

相手は先ほどの不正利用を知っているように話し、銀行の正式な電話番号まで表示させていました。

そして、口座が危険にさらされているので新しい口座へ移す必要があると説明し、Apple Payというスマートフォン決済サービスの設定を求めてきたのです。

不審に思った投稿主が電話を切り、自分で銀行へ連絡したところ、2度目の電話は詐欺だったと判明しました。

電話に表示された番号を確認しろと言ってきた時点で怪しいよ。発信者番号なんて偽装できるのにね。

— u/WickedWeedle

相手から電話してきた場合は、問題の説明と、できれば問い合わせ番号だけ聞けばいい。

こちらからは何も情報を渡さず、自分で確認した本物の電話番号や公式サイトから銀行に連絡して、何が起きているのか確かめる。

— u/ThirstyWolfSpider

本物の銀行で不正利用が発生した直後だったことが、偽の電話を信じかけた理由の一つになっています。

投稿主は、犯人が最初の不正決済にも関与していたと考えていますが、その点が独立に確認されたわけではありません。それでも、詐欺電話が本物の不正利用対応と重なることで、見分けにくくなることが伝わる体験談です。

その国の送金サービスが詐欺に利用されることも

海外の特殊詐欺には、各国で普及している送金・決済サービスを利用したものもあります。

ガーナ:モバイルマネーをめぐる詐欺

西アフリカのガーナでは、携帯電話を使って送金や支払いを行えるモバイルマネーが利用されています。

その代表的なサービスの一つが、通信会社MTNの「MoMo(モバイルマネー)」です。

2026年4月、r/ghanaに700セディ(ガーナの通貨、同年10月16日の為替レートで約9,500円)をだまし取られたという投稿がありました。

I got scammed and I want make them feel the fire
by u/TheGreat_Deceiver in ghana

投稿主によると、犯人たちは異なる番号から何度も電話をかける一方、別の人物がMTNの担当者を装い、電話を止めるための手続きを案内してきたそうです。

投稿主は自分が基本的な詐欺に引っかかったことを悔やみ、「お金は戻らないだろうが、犯人に何か仕返しする方法はないか」と相談していました。

それは本当につらいよ。でも、相手を呪うか、その電話番号をブロックするくらいしかできないと、すぐに気づくと思う。

私も詐欺に遭ったことがある。できることがほとんどないと分かってからは、痛い教訓だったと受け止めることにした。

規制が強化され、もっと啓発が進むまでは、だまされたことを受け入れて、二度と引っかからないと心に決めるしかない。

— u/ShutterStack

ところが、コメント欄には投稿主をからかう声もありました。

実は投稿主のユーザー名は、u/TheGreat_Deceiver。「偉大なる人だまし」といった意味の名前なのです。

つまり、偉大なる人だましがだまされたってこと? いやあ、立場が逆転したね。

— u/RealLifeh3ro

こうした反応に、苦言を呈する人もいました。

このコミュニティは、いつからこんなに思いやりがなくなったんだ?

助けられないなら、そのまま立ち去って、実際に助けようとしている人たちに任せたらどう?

— u/fearless_tripedal

実際には、MTNには不正利用を報告する窓口が設けられており、モバイルマネーの詐欺を申告する手続きが用意されています。

また、MTNは暗証番号を他人に教えないことや、不審な番号からの電話でMoMoの操作をしないよう呼びかけています。

被害の回復が難しい場合でも、報告する手段まで存在しないわけではありません。

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ブラジル:「間違えて送金したので返して」が詐欺に

ブラジルでは、中央銀行が運営する即時送金システム「Pix(ピックス)」を利用した詐欺が問題になっています。

2026年9月、詐欺情報を交換するコミュニティ「r/golpe」には、知らない人物から送金があり、その後何度も電話がかかってきたという相談が投稿されました。

Golpe do pix errado
by u/icantberyou in golpe

相手は誤送金したとして返金を求めているようでしたが、投稿主は応答せず、どう対処すべきかを尋ねています。

コメント欄では、銀行アプリの返金機能を使うよう勧める声が相次ぎました。

そう。まず、本当に自分の口座にPixの入金があったか確認して。外部からのメッセージじゃなくて、銀行アプリでね。

その後、Pixの返金機能を使って返金する。取引の証明書が発行されるから、それを保存しておく。

それから、しつこく連絡してくる相手に、Pixの返金機能ですでに返したと伝えて、その後はブロックすればいい。

大事なことだけど、その相手が送ってきたリンクや添付ファイルなどは絶対に開かないこと。

— u/makumbaria

なぜ、普通に振り込み直してはいけないのでしょうか。

ブラジル中央銀行によると、Pixで間違って受け取ったお金を返す場合は、元の取引に紐づいた返金機能を使うのが正しい方法です。

相手の指定した口座へ新しいPix送金を行うと、最初の送金とは別の取引になります。悪用されれば、相手が元の送金について銀行へ返金を申請し、受け取った側が二重にお金を失うおそれがあります。

この問題には、もう一つ関係する制度があります。

ブラジル中央銀行が設けている「MED(特別返金制度)」です。これは、単純な誤送金を取り消すための機能ではなく、詐欺や不正取引の被害者が金融機関を通じて資金の回収を求める仕組みです。

詐欺の疑いがある取引について金融機関が調査し、被害が確認されれば、犯人側の口座などに残っている資金から返金が行われます。ただし、必ず全額を取り戻せるわけではありません。

誤送金を装う詐欺では、犯人が別の取引として返金を受け取った後、さらに元の送金についてMEDを悪用して二重にお金を回収しようとするケースもあります。

だからこそ、ブラジル中央銀行は、知らない人からの入金について返金を求められても、新しい送金を行わず、銀行アプリの正規の返金機能を使うよう注意を呼びかけています。

詐欺対策のためなら、送金が不便になっても仕方ない?

こうした被害を防ぐ方法として、送金をあえて遅らせるという案も出ています。

インド:送金を1時間待たせる案に賛否

インドでは、銀行口座間の即時送金を可能にする「UPI」という決済システムが広く使われています。

2026年4月、インド準備銀行(中央銀行)は、デジタル決済の詐欺防止策について意見を募る検討文書を公表しました。

その中で提示されたのが、一定額以上の送金に待機時間を設ける案です。

具体的には、個人間などの対象取引で1万ルピー以上(同年10月16日の為替レートで約1万7,000円)を送金する場合、原則として1時間の待機時間を設け、その間に送金を取り消せるようにする仕組みが検討されました。指定した送金先や対象取引には例外を設けることも想定されています。

同じ文書には、70歳以上の人や障害のある人が5万ルピーを超える高額な送金を行う際、あらかじめ指定した信頼できる人物に追加確認してもらう案も含まれています。

これらは2026年4月に示された検討案であり、すべてが正式に導入された制度というわけではありません。

インド準備銀行は、詐欺対策として送金を遅らせることの利点と問題点を、公式文書の中で説明しています。

犯人が被害者を急がせている状況から、いったん距離を置き、冷静に判断する時間を作れることが利点です。

一方、送金のたびに待ち時間が生じれば、即時決済の便利さが失われます。さらに、待機時間を回避する仕組みが用意されれば、詐欺師がその操作を被害者に指示するおそれもあります。

送金の速さをどこまで制限するべきなのか。詐欺を防ぐための対策そのものが、日常生活の利便性とぶつかる問題になっています。

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だまされて送金したお金は、銀行が返すべきなのか

詐欺に遭った後、被害者が最も切実に知りたいのは、失ったお金を取り戻せるかどうかでしょう。

ここでは、本人がだまされて送金したのか、犯人が本人に代わって送金したのかによって、銀行の返金義務が異なるケースがあります。

オランダ:自分で送金した約5万9,000ユーロは返金されず

2026年6月、オランダの金融紛争を扱う機関「Kifid」は、銀行員を装った詐欺によって5万9,000ユーロ(同年10月16日の為替レートで約1,050万円)を失った2人の消費者に対し、銀行が補償する義務はないと判断しました。

この事件では、被害者たちは犯人の指示に従って自分で送金を行っていました。

銀行は最初の送金を止めていましたが、被害者たちは詐欺師に指示され、銀行へ「キャンピングカーの購入に必要なお金だ」と説明して送金制限を解除してもらったのです。

Kifidは、被害者自身が通常の認証手続きを経て送金したことや、銀行が不正を疑う十分な事情を把握できなかったことなどから、銀行に補償義務はないと判断しました。

Zelf geld overgemaakt naar een fraudeur? Dan krijg je niks terug
by u/DetachedRedditor in thenetherlands

この件がRedditのオランダのコミュニティ「r/thenetherlands」で紹介されると、被害者の自己責任を問う声と、それに反発する声が上がりました。

私が気になるのは、誰かが被害に遭った後になって「自業自得だ!」と言うことなんだ。

詐欺だろうが窃盗だろうが、本人が被害を受けたことに変わりはない。たとえ被害を防ぐために万全の努力をしていなかったとしても、そんなことを言う必要はないよ。

— u/JonnyKnal

もっとも、オランダですべての詐欺被害が自己負担になるわけではありません。

同年4月、Kifidは別の事件で、偽の銀行員にだまされた顧客が6桁のセキュリティコードを教え、犯人が本人に代わって5万ユーロ以上(約890万円以上)を送金したケースについて、銀行側の返金義務を認めています。

この事件では、犯人が顧客の口座に自分の端末を登録し、送金を実行していました。

Kifidは、これを本人が承認していない支払いと判断しました。

つまり、同じ銀行員なりすまし詐欺でも、被害者が犯人に誘導されて自ら送金した場合と、犯人が口座を操作して送金した場合では、補償に関する判断が異なっていたのです。

フランス:偽銀行員にだまされた被害者への返金を認める

フランスでも、銀行員を装った詐欺をめぐる裁判が起きています。

2024年10月、フランスの破毀院(最高裁判所に相当する裁判所)は、偽の銀行員にだまされた顧客への返金を認める判断を示しました。

事件では、詐欺師が本物の銀行担当者と同じ電話番号を表示させ、口座で不正な取引が起きていると説明しました。

顧客は安全な手続きだと信じ、相手の指示に従って送金先の登録情報を操作しましたが、その後、不正な送金を実行したのは犯人側でした。

銀行側は顧客の重大な過失を主張しましたが、裁判所は、電話番号の偽装や巧妙な説明によって顧客の警戒心が弱められた事情を考慮しました。

ただし、これはその事件の状況に基づく判断であり、フランスのあらゆる詐欺被害で必ず返金されるという意味ではありません。

オランダとフランスの事例で共通しているのは、銀行員を装った詐欺師の指示に被害者が従っていたことです。しかし、本人が送金を承認したのか、犯人が送金したのか、顧客に重大な過失があったといえるのかによって、銀行の返金義務に関する結論が変わっています。

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家族への一本の電話が被害を防いだ例も

制度や決済サービスの安全対策が進められる一方、身近な人との連絡によって詐欺を防げた事例もあります。

2026年8月、r/Scamsには、母親の誕生日に電話をかけたことで、詐欺を防げたという投稿がありました。

Stopped my mum getting scammed yesterday.
by u/More_Try4757 in Scams

投稿主が母親と話していると、母親は前夜に「スマホがハッキングされた」と何気なく話し始めました。

事情を尋ねると、母親は前夜にAmazonを名乗る人物から電話を受け、個人情報が盗まれ、8,000ポンド(同年10月16日の為替レートで約169万円)が危険にさらされていると告げられたそうです。

母親はその説明を信じていましたが、投稿主が不審に思って確認したところ、まだお金は送っていませんでした。

投稿主は母親に、相手との通話をやめ、信用情報を保護する手続きを取るよう伝えました。幸い母親もその助言を聞き入れ、金銭的な被害は出なかったといいます。

親に電話するべき理由がまたひとつ増えたね。よくやった。お母さんがお金を送らずに済んで本当によかった。

— u/MsSamm

日本でも海外でも、詐欺師が利用するのは、家族への心配や金融機関・警察への信頼といった、ごく身近な感情や関係ですね。

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