(最終更新:2026年9月15日)
「映画の海賊版は、君たちの国ではどのように受け止められているの?」
そんな質問を、ロシアのRedditユーザーが、世界各国の人に質問するコミュニティ「r/AskTheWorld」に投稿しました。
How film piracy is seen in your country?
by u/Dangerous-Fix7974 in AskTheWorld
最初に目についたのは、かなり温度差のある回答です。
スウェーデンからは、
「誰も気にしない。」
— u/riisen(スウェーデン)
という声。
ところがドイツからは、ファイル共有をすると権利者側の弁護士から通知が届くことがある、という経験談が出ています。
同じ映画の海賊版でも、受け止め方はずいぶん違うようです。
ただ、コメントをさらに読んでいくと、国ごとの違いとは別に、何度も出てくる話がありました。
「昔はもっと海賊版を使っていた」と。
※以下のコメントは、Reddit上の個人の意見です。その国の人々や社会全体の考えを代表するものではありません。
「誰も気にしない」と言う人もいれば、通知を恐れる人もいる
先ほどのスウェーデン人ユーザーとは別に、学校では海賊版を利用する人をよく見かけるという声もありました。
ポルトガルやブラジル、メキシコ、スペイン、インドネシアなどからも、海賊版は珍しいものではないという反応が出ています。
ところが、ドイツになると少し雰囲気が変わります。
あるユーザーは、以前は気軽に海賊版を使っていたものの、現在はファイル共有をすると追跡され、弁護士から通知が届くことがあると話しています。
別のドイツ人も、利用者同士でファイルをやり取りするBitTorrentなどのファイル共有を使うと、弁護士事務所から800ユーロを求めるような手紙が届くことがあるとコメントしていました。
これはドイツの法律そのものを説明したものではなく、あくまで利用者側の経験談です。
ただ、「誰も気にしない」という短いコメントを読んだ直後なので、この差はかなり大きく見えます。
とはいえ、さらにコメントを追っていると、別の傾向も出てきました。
国が違うのに、何人も同じようなことを言っているのです。
「昔はもっと海賊版を使っていた」と。
昔は使っていた。でも、いつの間にか使わなくなった
アルゼンチンのユーザーは、かなりはっきり振り返っています。
「昔はそれが普通だった。特にハリウッド映画なんか、正規版にお金を払う人はほとんどいなかった。」
「でも、ストリーミングサービスのほうが、映画をダウンロードして字幕を探したりするより、ずっと便利で手頃になって、それも終わった。」
— u/FaithlessnessOne2032(アルゼンチン)
スウェーデンからも似た話が出ています。
「SpotifyやNetflix、Steamなんかが大きくなってから、かなり減ったと思う。」
— u/Chaize(スウェーデン)
ノルウェーのユーザーはさらに直接的でした。
「20年前のほうがずっと大きかった。Netflixなんかが、ある意味では海賊版を終わらせた。」
— u/Klingh0ffer(ノルウェー)
もちろん、この3人のコメントだけで世界的な海賊版利用の推移を語ることはできません。
それでも、別々の国から「ストリーミングが便利になったら海賊版を使わなくなった」という話が続くと、少し気になります。
海賊版を使うかどうかは、価格だけで決まるのでしょうか。
昔なら、映画を探して、ファイルを落として、必要なら字幕も探す。その横に、月額料金を払えば作品を選んですぐ再生できるサービスが現れた。
多少お金がかかっても、後者のほうが楽だと感じる人がいても不思議ではありません。
では、本当に「正規版へのアクセスのしやすさ」と海賊版には関係があるのでしょうか。
調べてみると、ちょうどそれに近い状況を扱った研究がありました。
Netflixで見られなくなった映画を、人はどこへ探しに行くのか
2023年、経済学系の学術誌『Journal of Economic Behavior & Organization』に、この問題に近い状況を調べた研究が掲載されています。
研究が利用したのは、2015年にアメリカで起きた配信契約の変更でした。
当時、アメリカの有料映画チャンネル「Epix」が提供していた映画141本がNetflixから外れ、Huluへ移ります。
ここで少し重要なのは、その映画が完全に合法視聴できなくなったわけではないことです。
Huluでは引き続き見られました。
ただ、それまでNetflixで見られた人にとっては、同じ作品を見るために別のサービスが必要になります。
研究者がその前後のGoogle検索を調べたところ、Netflixから外れた映画では、引き続きNetflixに残った1170本の映画と比べ、「無料で見る」といった海賊版視聴につながる検索が20~22%増えていました。
とはいえ、実際に違法サイトで映画を見た人が20~22%増えた、という研究ではありません。
Google検索を使い、「海賊版で見られないか探そうとした動き」を代理的に調べたものです。また、2015年のアメリカで起きた特定のケースなので、そのまま現在の世界全体へ当てはめることもできません。
それでも、Netflixで見られなくなったことで検索行動が変わった。
先ほどの「便利になったから海賊版を使わなくなった」というRedditの話を見たあとだと、少しつながって見えます。
ところが、ここで最初のスウェーデン人に戻ると、話がもう一度変わります。
Netflixだけで済んでいたころとは違う
最初に、
「誰も気にしない。」
— u/riisen(スウェーデン)
と答えていた人物です。
この人は別のコメントで、現在のストリーミングサービスについて、こんな不満も書いていました。
「最初はNetflixだけだった。でも今はNetflix、Disney+、HBO、Prime……と、どんどん必要になる。」
「さらに高くなっているのに、何も所有できない。」
— u/riisen(スウェーデン)
同じような変化を感じている人は、ほかにもいます。
カナダのユーザーは、
「2000年代後半から2010年代初めには、ストリーミングサービスが始まって海賊版は減った。でも、その後また戻ってきた。」
— u/TazManiac7(カナダ)
と書いています。
アメリカと日本の両方を示すフレアを付けたユーザーも、
「大手ストリーミングが始まったころ、アメリカでは映画の海賊版は減った。安いNetflixやAmazonで見きれないほど作品があるのに、わざわざ手間をかける必要がなかったから。」
「でも値上げ、広告、使いにくさなどで、少し戻ってきているように見える。」
— u/Pocho_Azul(日本・アメリカ)
と振り返っています。
ここで言われている「海賊版が戻った」が、実際にどの程度の規模なのかは、このスレッドだけでは分かりません。
ただ、コメントの中では妙に同じ話が繰り返されます。
最初はNetflixなどが便利だったので海賊版から離れた。
ところが作品が複数のサービスへ分かれ、値段が上がり、広告まで入るようになると、また面倒になってきた。
このあたりまで来ると、「無料で見たいから海賊版を使う」という説明だけでは少し足りない気がしてきます。
そして、それを一番はっきり言っていたのが、ウクライナのユーザーでした。
「いいサービスなら月20ドル払う」
「お金は、たぶん一番小さな問題だと思う。」
— u/dundai(ウクライナ)
海賊版の話なのに、お金が一番の問題ではない。
では何が不満なのか。
この人が挙げているのは、正規サービスでは作品がいくつものサービスに分かれていること、吹き替えを自由に選べないこと、再生速度などの機能が足りないこと、さらに月額料金を払っていても一部の映画は別料金になることでした。
逆に、海賊版のサービスには、多くの作品や複数の吹き替えがまとまっていたといいます。
そのうえで最後に、
「いいサービスをくれれば、月20ドル払うよ。」
— u/dundai(ウクライナ)
と書いていました。
無料でなければ嫌だ、ではない。
むしろ「ちゃんと便利なら払う」と言っています。
アイスランドからも、
「20個のストリーミングサービスに払って、それでも見たい映画やドラマが全部見られないなんて、誰もやりたくない。」
— u/Lizzy_Of_Galtar(アイスランド)
という声がありました。
もちろん、サービスが不便だから海賊版を利用してよい、という話にはなりません。
ただ、ここまでコメントを追ってくると、「値段」だけを見ていても海賊版を使う理由の一部しか見えないのかもしれません。
作品がどこにあるのか、自分の国で配信されているのか、別のサービスへ移動しなければならないのか。字幕や吹き替え、広告、使い勝手まで含めると、小さな面倒がいくつも重なっています。
では、海賊版そのものを「悪い」と思っているのか
ここまで利便性の話が続きましたが、当然ながら倫理についての議論もあります。
ポーランドのユーザーは、
「多くの人は道徳的には悪いことだと思っていると思う。でも、そういう人の中にも何らかの形で使っている人は多くて、そこまで深く考えていない。」
— u/AnxiousMumblecore(ポーランド)
と話しています。
「悪いとは思う。でも使う人はいる」。
この曖昧さとは逆に、ブラジルからはかなり断言するコメントもありました。
「買っても所有できないなら、海賊版は盗みじゃない。」
— u/ArturVinicius(ブラジル)
デジタル作品では、料金を払っても物理的な商品を所有するのとは違い、サービス終了や契約変更で利用できなくなる場合があります。
そこへの不満を表した言葉として、ネット上でも見かけるフレーズです。
しかし、このコメントには反論も付きました。
アメリカのユーザーは、自分自身も海賊版を利用すると前置きしたうえで、作品を作った側には「どのような条件で提供するか」を決める権利があり、その条件が気に入らないことと、権利を侵害してよいことは別だと指摘しています。
さらに、作品を作った人への対価が支払われないことも問題だとしました。
海賊版を使う側の中でも意見は割れています。
「盗みではない」と考える人もいれば、自分も利用しているのに「それでも正当化はできない」と考える人もいる。
スレッドを読んでいると、海賊版への距離感は「使う・使わない」の二択でもなさそうです。
そういえば、日本はどう見られている?
このスレッドには日本も登場します。
ベネズエラのユーザーは、
「海賊版を嫌っている国として思い浮かぶのは、日本くらいかもしれない。住んだことはないから確かじゃないけど、海賊版に関する法律もほかより厳しい印象がある。」
— u/Key_Comparison_2588(ベネズエラ)
と書いていました。
すると、日本に住んでいるというイギリス人ユーザーが、
「日本に住んでいるけど、ここでは一般的にかなり嫌われていると思う。法律というより、制作者への敬意を欠くことと、盗みと同じように捉えられていることが理由だと思う。」
— u/ItNeverEnds2112(イギリス)
と返しています。
もちろん、どちらも個人の印象です。
ただ、「日本は厳しい」という話が出たので、法律のほうも少し確認してみました。
日本では、違法にアップロードされた音楽や映像だと知りながらダウンロードする行為は、2010年から私的使用目的でも違法となっています。2021年には、その対象が音楽・映像だけでなく、著作物全般へ広がりました。
一方、海賊版サイトの動画を単にストリーミングで視聴することは、この「違法ダウンロード」の規制と同じ扱いではありません。文化庁も、違法に配信された音楽や映像を視聴するだけでは、この規定による違法行為にはならないと説明しています。
ここは少しややこしいところですが、少なくとも「見ること」と「違法にアップロードされたものをダウンロードすること」は、日本の著作権法上まったく同じ扱いではありません。
日本発コンテンツでは、今も大きな問題になっている
法律上の扱いとは別に、日本発コンテンツの海賊版被害についても数字が出ています。
コンテンツ海外流通促進機構(CODA)が2026年1月に公表した調査では、2025年の日本発デジタルコンテンツについて、オンライン海賊版の被害額を5.7兆円、このうち映像を2.3兆円と推計しています。
ただ、この5.7兆円は「実際に5.7兆円分の売上が消えた」と企業の帳簿から集計した数字ではありません。
日本、中国、ベトナム、フランス、アメリカ、ブラジルの消費者へのアンケートをもとに算出した「ユーザー起点推計」です。
数字の見方には注意が必要ですが、日本発コンテンツでも海賊版が現在進行形の問題として扱われていることは分かります。
そして、ここまで調べたところで、もう一度Redditのコメントに戻ってみると、最初とは少し違って見えてきます。
取り締まりの強さを語る人もいれば、制作者への対価を気にする人もいる。その一方で、「Netflixが便利だったころは海賊版を使わなくなった」と振り返る人もいて、今度は「サービスが多すぎる」「値段が上がった」「見たい作品がない」という不満も出ている。
海賊版を使う理由を一つにまとめるのは難しそうです。
それでも、今回のコメントで何度か戻ってきたのは、「正規サービスがどれだけ使いやすいか」という話でした。
なかでも、
「いいサービスをくれれば、月20ドル払うよ。」
— u/dundai(ウクライナ)
という一言は、そのあたりをよく表しています。
海賊版を選ぶ人が、必ずしも「一円も払いたくない」と考えているとは限らない。
少なくとも今回のスレッドでは、料金だけでなく、見たい作品へどれだけ簡単にたどり着けるのかも、何度も話題になっていました。
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今回の記事では、見たい作品がどのサービスにあるのか、どこまで簡単にたどり着けるのかという「正規サービスの利便性」が話題になりました。サブスク時代に映画をどう探し、どう選ぶのかをもう少し考えてみたい人には、その先としてつながりやすい本です。
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今回の記事では、見たい作品がどのサービスにあるのか、どこまで簡単にたどり着けるのかという「正規サービスの利便性」が話題になりました。サブスク時代に映画をどう探し、どう選ぶのかをもう少し考えてみたい人には、その先としてつながりやすい本です。
参考情報と翻訳元
- Reddit「How film piracy is seen in your country?」 — 世界各国の人へ質問するコミュニティ「r/AskTheWorld」に投稿されたスレッド。本記事で紹介した海外ユーザーのコメントの翻訳元。
- ScienceDirect「Pirate and chill: The effect of Netflix on illegal streaming」 — 2015年にEpix作品がNetflixからHuluへ移り、Netflix上では視聴できなくなったことで合法的なアクセスが以前より不便になった事例を用い、海賊版を探すGoogle検索との関係を分析した2023年の研究。
- 文化庁「平成21年通常国会 著作権法改正等について」 — 音楽・映像の違法ダウンロード規制について確認。
- 文化庁「侵害コンテンツのダウンロード違法化について」 — 2021年から違法ダウンロード規制の対象が著作物全般へ拡大されたことを確認。
- CODA「2025年・オンラインで流通する日本発コンテンツの海賊版被害額を調査」 — 日本発デジタルコンテンツの海賊版被害額5.7兆円、うち映像2.3兆円という推計と、その算出方法を確認。
- KADOKAWA「サブスクに観たい映画多すぎて、結局、観ない夜ありすぎ」 — おすすめ書籍の著者、出版社、発売日、内容を確認。


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