海外掲示板の日本について質問できるコミュニティにて、「なぜ日本の昔の絵は写実的に描かれていないのか?」という疑問が投稿され、海外からさまざまな意見が寄せられていました。
きっかけとなったのは、漫画『バガボンド』の主人公のモデルとして知られる宮本武蔵。
投稿主さんが武蔵について調べる中で、現在残っている肖像画がそれぞれ少しずつ異なっていることに気づき、「当時の日本では、歴史上の人物の姿を正確に残すことは重視されていなかったのか?」と疑問を抱いたようです。
今回は、この話題に対する反応をいくつかご紹介します。
いつもより、ちょっと長めです。
海外の反応
投稿主(アメリカ)
日本の美術や歴史について混乱してる
最近「バガボンド」っていう漫画を読んで、主人公が宮本武蔵っていう人物をモデルにしてるらしいことを知ったんだ。
それで宮本武蔵について調べてみたんだけど、リアルな感じの肖像画が見つからなかった。
どれもだいたい似たような人物だけど、髪型やヒゲに微妙な違いがあるみたいだ。
ほかの歴史上の人物の絵も見てみたんだけど、やっぱりリアルな感じじゃなかった。
アメリカには初期の大統領の写実的な肖像画があって、彼らがどんな見た目だったか分かるし、ヨーロッパの一部でも同じようにあって、カメラが登場するにつれて徐々に廃れていったのは知ってる。
でも、日本の歴史上の人物の見た目って、時間の経過とともに分からなくなってしまったものなのかな?
初投稿だから、くだらない質問だったらごめんなさい!
でも本当に気になってる。
Confused about Japanese art/history
by u/wow_6343 in AskAJapanese
日本
宮本武蔵を初期のアメリカ大統領と比較するのは、時代と社会的な立場の両方をちょっと混同してるもね。
- 時代: 武蔵が生きていたのは1600年代初頭で、当時はアメリカ合衆国そのものがまだ存在していなかった。ジョージ・ワシントンのような初期のアメリカ大統領は1700年代後半の人物だから、ほぼ200年も後の時代になる。
- 社会的な立場: 武蔵は国家の指導者でも高位の役人でもなく、剣の達人であり、主君を持たない侍(浪人)だった。
アメリカで例えるなら、大統領というより、伝説的な19世紀の西部開拓時代のガンマン、例えばドク・ホリデイやワイルド・ビル・ヒコックに近い。
初期のアメリカ大統領と公平に比較したいなら、同じ時代、つまり1700年代後半の将軍を見るべきだね。
例えば徳川家斉とか。
武蔵の写実的な肖像画がないのは、単純に400年も前に生きていた、一介の剣豪だったからだよ!
海外の反応さん
武蔵が亡くなったのは1645年。
ワシントンが生まれたのは1732年だから、正確には武蔵が亡くなってから87年後のことだね。
海外の反応さん
西洋美術でも、かなり身分によるところが大きいよ。
いわゆる「巨匠」による写実的な肖像画なんて、超裕福な人たちのためのものだったからね。
こうした画家のパトロンになっていたのは貴族や上流階級の人たちで、そもそも座ってポーズを取る時間もあった。
それに、自分をできるだけ良く見せて描いてもらうためにお金を払っていたわけだから、そういう肖像画も別の意味では様式化されていて、本人のありのままの姿を正確に描いているわけじゃない。
歴史上の人物や出来事を描いた絵も、たいていは何十年、あるいはそれ以上経ってから描かれたものだから、現代のテレビ番組でいう「ドラマチックな再現」に近いんだよ。
投稿主(アメリカ)
ヘンリー8世やモナ・リザの絵は、宮本武蔵よりも前の時代のもの。
アメリカ大統領を自画像の例として出したのは、自分が住んでいる国ってだけなんだ。
これは参考になる情報だけど、自分が聞いた質問とはちょっと関係ないかな。
それでも、時間を取って答えてくれてありがとう!

ベトナム
投稿主さんの貼った絵もすべて、それぞれの時代や地域の様式的な慣習に従って描かれている。
実際にどんな姿をしていたのかは、誰にも分からないんだ。
本人をより理想的に見せるために、顔立ちが誇張されていることもよくあった。
西洋美術の歴史では、より技術的な完成度を追求する方向に発展していったのに対して、東アジアの美術史では、本人の容姿を忠実に再現することよりも、その人の「人柄や内面」を表現することに重きを置くのが一般的だったんだ。
アメリカ(日本在住)
ちょっと何をそんなに気にしてるのか、自分にはいまひとつ分からないなぁ。
最初のものは浮世絵の様式で描かれてる。
それだけの話だよ。
次の2つは、武蔵の人生の別々の時期を描いたものに見える。
像のほうは明らかに若い頃の姿だし。
妻に投稿主さんの質問を聞いてみたら、「違う人が描いたから違うんじゃない?」って答えてたよ。
それから、こうも言ってた(その日はバチカンに一日いたから)。
「じゃあ、どうしてイエスの姿にもこんなにたくさんのバージョンがあるの?」と。
マティスの描いたものは、かなりぶっ飛んでたけどね!
日本
余談だけど、最初の画像は、歌川国芳が1852年に描いた「東都流行三十六会席 向じま 宮本無三四」。
当時人気だった宮本武蔵の芝居の主役を描いたポスターみたいなもので、庶民が部屋に飾るためのポップアートとして作られてた。
どうやら値段は、昼食1回分くらいだったらしい。
日本
こんにちは。
宮本武蔵の晩年の肖像画はいくつか残っていますが、それらが実際に宮本武蔵本人を描いたものなのかを証明するのは難しいです。
というのも、あの時代は西洋の写実的な絵画技法が日本に伝わり、定着するにはまだ早すぎた時代だったのではないかと思うからです。
ご存じかもしれませんが、武蔵が晩年に著したさまざまな書物に見られる筆遣いも、また見事なものですよ。
海外の反応さん
侍を学ぶ学生なら必読の本。
海外の反応さん
海外の反応さん
個人的には、日本の美術様式って、物を見たまま描くことよりも、「物事の本質的な部分」を芸術的な解釈で表現することに重点を置いていたんじゃないかと思う。
もちろん、当時の人たちが実際にどんな姿をしていたのかは分からないかもしれない。
でも、「写実的」な肖像画だって、本当にその人がどんな姿だったのかは分からない。
もしタイムスリップして、当時のアメリカ建国の父たちに会ったとしても、誰が誰なのか見分けられないかもしれないね。
でも1600年代に、二本の刀を差してる男には、ちょっかいを出さないほうがいいってことは分かる。

アメリカ
異なる美術様式が生まれたのは、それぞれの文化や宗教、使われていた素材が違ったからだよ。
- 人間性を重視する表現と精神性。
- 写実と象徴。明暗法と輪郭のはっきりした線。
- ホラー・ヴァキュイ(空白恐怖)と、意図的に余白を残す表現。
- キャンバスに油彩と、和紙に水墨画。
それぞれ、まったく違うものなのだ。

海外の反応さん
で、左の猫は一体何があったのさ?
海外の反応さん
日曜なのに早起きしなきゃならなかった。
海外の反応さん
彫刻や木版画(浮世絵など)については詳しく語れるほどの知識がないから、絵画についてだけ語らせてもらうね。
東アジアの国々にはこれらの分野、特に陶芸や木版画において膨大な歴史があるけれど。
伝統的な日本画は、ビザンティン美術(東ローマ帝国の美術)を少し思い起こさせる。
ある意味似ていて、意図的に平面的なスタイルであり、哲学に強く基づいている。
自分の記憶が正しければ、ルネサンス以前の西洋美術や当時の日本美術が写実主義を用いなかった大きな理由の一つは、写実性を重視せず、象徴性やその他の側面を好んだことにある。
ヨーロッパのルネサンスにおけるヒューマニズム(人文主義)や解剖学の芸術的研究は、絵画の哲学とそれが絵画スタイルに与える影響に非常に大きな違いをもたらした。
また、道具や技術、素材の問題もある。
ルネサンスの画家たちは、孤立した国では手に入らない絵の具(顔料)を手に入れることができた。
当時はすべてがカトリックと非常に強く結びついていたため、極上の顔料が宗教画に使われることになった。記憶が正しければ、聖母マリアのドレスや重要な人物に使われた鮮やかな青は、一般的にラピスラズリから作られていたけれど、これを顔料にするのは本当に大変だ。
宝石を粉砕するのは非常に骨の折れる作業だし、そのプロセスは興味深い。
それに、何万もの(1グラムあたり10万匹だったかな?)フランスの海貝から採れる特別な紫色は、昔も今も異常なほど高価で時間がかかり、あいにく貝の生息数に深刻な被害を与えてしまった。
日本は毛筆スタイルの筆や墨を多用していた。
油彩やテンペラといった画用液(ミディアム)を全く使っていたかどうかは分からない。
彼らのスタイルの筆は、油絵の写実表現で使われるような柔らかく繊細なぼかしにはあまり好まれないけれど、細い描線を描くのには非常に適している。
キャンバス対紙については、どう比較されるのかよく分からない。
哲学的に写実主義を芸術スタイルとして重視せず、同じ素材や道具も手に入らないとなれば、写実性に焦点を当てなくなるのは当然のことだ。
補足として、ヨーロッパの印象派への影響についてはよく分からないけれど、ゴッホは重度の日本オタクで、日本を連想させると言われていたというだけの理由でフランスのある地域に旅したほどだ。
海外の反応さん
キャンバスは和紙とは違って、絵の具を何層も塗り重ねることに耐えられたから、失敗の修正や、より複雑なグラデーション技法を使うことが可能だったって違いもあるね。
アメリカ
写真のようにリアルな描き方(写実主義)も、使われる画材やアートの流行と同じで、時代によって流行ったり廃れたりするよ。
ヘンリー8世のホルバインによる肖像画もモナ・リザも、どちらも「ルネサンス期」の肖像画。
特にホルバインは非常に写実的なことで有名で、チューダー朝の宮廷に写実的なルネサンス様式を持ち込んだ人物だ。当時のチューダー宮廷でホルバインのように描ける者は一人もいなかった。
この2作品は、混色が容易で乾きの遅い画材である油絵の具で描かれてる。
そしてワシントンの肖像画は「新古典主義」の時代に描かれたもの。
新古典主義もルネサンスも、ヒューマニズム、写実主義、そして肉体におけるプラトン的理想像の研究をテーマとしていた。
油絵の具が日本に伝わったのは18世紀の江戸時代で、ちょうどワシントンの肖像画が描かれた頃にあたる。
当時の日本の人々は水墨画などの墨をベースとした形式を用いており、特に写実性に焦点を当ててはいなかった。
投稿主さんの言う武蔵が生きていた室町時代(正しくは、安土桃山時代から江戸時代初期)、芸術のトレンドは禅宗の普及や中国からの潮流によるもので、そこでは「執着は瞬間の美しさや簡素さを損ないかねないため、できる限り少ない筆数でその瞬間の美を描写すること」に重きが置かれていた。
だから絵師は、写真のような写実性よりも「空気感」に集中していたんだ。
逆にヨーロッパの他の時代の美術の空気感の例として、ヘンリーの祖母であるエリザベス・ウッドヴィル、それと大人のキリストと幼い時のキリスト(とマリア)の両方と共に描かれたリチャード2世の絵だよ。

※簡単な補足
「ヒューマニズム(人文主義)」とは、宗教的な価値観だけでなく、人間の感情・知性・肉体にも目を向けようとした考え方で、こうした人間への関心の高まりは、人体研究や自然な人物表現にも繋がったとされているそうです。
「ルネサンス期」とは、古代ギリシャやローマの芸術や文化を手本にして、ヨーロッパで起きた文化・芸術運動。「人間をより自然に、立体的に描く」ために、遠近法や解剖学(筋肉や骨格の研究)が飛躍的に発達した時代です。
「新古典主義」とは、18世紀後半から19世紀初頭にヨーロッパで流行した芸術様式のことで、ゴテゴテした派手な装飾スタイル(バロック様式やロココ様式)に反発し、「もう一度、古代ギリシャ・ローマのような整った美しさに戻ろう」とした芸術の流行です。個人の特徴をそのまま再現することだけでなく、古代ギリシャ・ローマのような理想的で整然とした美しさを重視しました。
「プラトン的理想像」とは、哲学者プラトンの「現実に存在するものは不完全で、その背後には完全な理想の形がある」という考え方です。絵画においては、現実の人物のシミやシワをそのまま写すのではなく、現実をより理想的な姿へと整えて描くことを指するとのこと。
投稿主(アメリカ)
これは今までで一番分かりやすいコメントだ…。
同じアメリカ人からこんなコメントが来るとは正直驚いたよ。
時間をかけて丁寧に説明してくれてありがとう!
素敵な一日、あるいは良い夜を過ごしてね!
日本
日本
要するに、写実的な表現は西洋で特に発達したもの。
だからこそ、印象派の画家たちは日本の浮世絵に見られる抽象的な表現に強く惹かれ、そこから大きな影響を受けたんだよ。
それに、武蔵と西洋の人物を比べるなら、宮本武蔵はシェイクスピアと同じ時代を生きた人物。
シェイクスピアの有名な肖像画を見ても、ファースト・フォリオ(シェイクスピア作品集)に載っているものなんかは、武蔵の肖像画とそれほど大きな違いはないと思うよ。

投稿主(アメリカ)
なるほど、おかげでよく理解できたよ。
ここにいる人たちの中でも、あなたの説明が腑に落ちたしすごく助かった!
ありがとう!
以上、海外「日本の昔の絵がリアルな感じじゃないのはなんで?」への反応でした。
江戸時代の浮世絵などは木版画が主流ですから、そもそも西洋の油絵とは表現方法が大きく違いそう。
また、日本の絵画は中国から伝わった美術や思想の影響も大きかったようなので、写実性よりも別のものを表現することが重視されていたことも、リアルな絵が少ないことに関係しているのかもしれませんね。
翻訳元:Reddit / Confused about Japanese art/history



コメント
そういやーそうだな
自分が有名になったんだから後世に残るように
もっとうまく描けよとは思うけど
当時は中国から渡ってきた水墨画が主流だからかな?
中国の皇帝の自画像を見てもあんま日本と変わんねー出来だし
龍とか花鳥風月を描かせたら水墨画が味があって好きだけどな
バガボンドの漫画家の井上さんも水墨画を多用してるし
味があるの一言だなw